お客様の選択肢を広げるオープンなエコシステムへ

そして、「Oracle OpenWorld 2019」で新たなクラウド戦略が最も顕著に表されていたのが、さまざまなクラウド・サービス・ベンダーとの連携強化だ。

前述したように、オラクルはデータ・マネジメント基盤に強みを持っているが、他社のクラウド・サービスにもそれぞれの強みがあり、すでに各社のサービスを利用している企業も多い。このため、既存の投資を維持しながら、常に最適なクラウド・サービスを利用していきたいと考えるお客様は数多い。

こうしたマルチクラウドのニーズに対応したのが、今年6月に北米で開始しているMicrosoft Azureとの相互接続だ。「Oracle OpenWorld 2019」 では、このMicrosoft Azureと「Oracle Cloud」の連携をアジア・パシフィックでも展開することが明言された。

  • Microsoftとの連携強化のため、拡張されるリージョン

また、VMwareとの連携による、VMware環境を「OCI」上で利用できる「Oracle Cloud VMware Solution」では、ハイブリッド・クラウドのニーズに対応する。この連携の背景には、お客様の多くの基幹システムがオンプレミスのVMware上で稼働している現状がある。

これらをクラウドに移行する時、いきなりクラウド特有の機能やサービスを使うのではなく、既存のシステムをそのままクラウドに移行することができるほうがお客様にとってはクラウド移行の障壁が低い。「OCI」とVMwareの連携では、オンプレミス、「Oracle Cloud」の環境間でのVMwareワークロードの移行をシームレスに行い、VMware vCenterから一元管理も可能となる。VMwareとの連携により、お客様のVMware上のIT資産を生きかしつつ、クラウド移行の負担も軽減できる。

  • VMware on Oracle Cloud Infrastructureの概要 引用:https://www.oracle.com/cloud/vmware/

さらに、「Oracle Cloud Marketplace」では、さまざまなサービスが拡充され、利便性を向上している。「OCI」のユーザーは、「Oracle Cloud Marketplace」から自社のシステムに必要なサービスを利用する際、各社と既存ライセンス契約を持ち込む形で利用している。今後、「Oracle Cloud Marketplace」から「Oracle Cloud」のUniversal Cloud Creditsで直接購入、利用できるようになり、「Oracle Cloud」上で新規でサービスを利用するお客様にとっては、ワンステップでサービス利用が可能になる。

最適な環境提案のカギは販売パートナーとの連携

今後、Microsoft Azureとの連携や「Oracle Cloud VMware Solution」の提供、「Gen 2 Exadata at Customer」などさまざまな方法でクラウド移行が可能となると、これまで日本でクラウド移行の進まなかった基幹システムのクラウド移行が本格化するだろう。

選択肢が増える一方で、最適なクラウド移行の方法をお客様が判断することはより難しくなるかもしれない。そのベストプラクティスを熟知しているのは、パートナーの皆さんだ。われわれも知見を持った多くのパートナーの方々と連携し、一緒になってベストプラクティスを作り出し、お客様に展開することがこれまで以上に重要になってくる。

また、オラクル自体もこれまで以上にお客様との接点を増やし、パートナー各社と連携し、お客様にベストなカスタマー・エクスペリエンスを提供していきたいと考えている。

以上、「Oracle OpenWorld 2019」のハイライトを紹介した。「Oracle OpenWorld 2019」で発表した新たなサービスや取り組みにより、「Oracle Cloud」はエンタープライズ用途に最適なクラウド・サービスとしてさらに進化を遂げている。私が現地で直感的に感じた「変化」は、これまで日本のお客様と接してきて必要だと思っていたことが多く実現された形で、お客様を中心としたオープンなクラウド戦略として明確になった。

オラクルはベンダーとしてマルチクラウド、ハイブリッド・クラウド、外部データとの連携、オープンソースへの対応など、お客様が自社に最適な方法でデータの活用、その先のイノベーションをすすめる上で多くの選択肢を提供するオープンな戦略へと舵を切っている。

日本のお客様における「Oracle Cloud」への期待は大きく、東京リージョンでは開設以来、急速な勢いで利用量が増加している。イベント会期中に開始した、デベロッパー、学生、企業といったすべてのお客様が「Oracle Cloud」を無期限に無償で利用できる「Oracle Cloud Free Tier」も、すでに多くの日本のユーザーに登録していただいている。

  • 「Oracle Cloud」を無期限に無償で利用できる「Oracle Cloud Free Tier」を発表

オラクルのオープンな戦略の対象は、企業のお客様やエコシステムだけではない。デベロッパー、学生の皆さんにも、「OCI」や「Autonomous Database」をまず試してみて、その良さを知っていただきたい。その体験によって、今後日本でのユーザー・コミュニティが広がっていくことにも期待したい。

発表された主な施策の日本での展開はまだこれからであるが、現地でお話した日本のお客様やパートナー様からの期待は大きい。われわれも、日本市場での展開を、日本のお客様のニーズに沿った形で展開していくため、尽力していく。これからの「Oracle Cloud」に、ぜひ注目していただきたい。

著者プロフィール

竹爪 慎治


日本オラクル 執行役員 プラットフォーム事業統括
日本オラクル株式会社 執行役員 クラウド事業戦略統括。国内大手SIerを経て、2000年日本オラクル入社。コンサルティング、新規事業開発、営業などを経て、2016年7月から現職