iPhone 11シリーズは、既報の通り、2019年9月20日に発売された。「スゴイ!」よりは「便利」に重心を置いており、日用品的な便利さが強化されている。とはいえ、アピールポイントは大事であり、3眼仕様のプッシュが目立つ。そこで今回は、観測開始されたばかりの大型低温重力波望遠鏡KAGRAを中心にiPhone 11シリーズのカメラに関するフィールドレビューをお送りする。なお使用した端末は「iPhone 11 Pro Max」。標準カメラと超広角カメラについてはシリーズで共通なので、iPhone 11の人にも参考になるだろう。
暗所の優秀さは武器になるが、光源によっては色味に注意
研究所全般での撮影は暗所が多く、また光源も新旧入り交じっているため、デジタルカメラでも何かと面倒なところだが、iPhone 11 Pro Maxではどうだろうか。似た環境でいえば、社会見学的なシーンだ。
おさらいしておくと、iPhone 11シリーズは共通して超広角13mmと標準26mmがあり、iPhone 11 ProとiPhone 11 Pro Maxには望遠52mmがある。有効画素数はいずれも12MP。手ぶれ補正機能は26mmと52mmにあり、13mmにはなく、またオートフォーカスについても13mmには実装されていない。これはパンフォーカスにしやすい点と、スペース的な問題からだろう。
さて。KAGRAは地下にある研究施設だ。2019年10月4日より重力波の観測を始めている。かぐらトンネルから入り、500mほど進んだところに中央実験室があり、中央実験室や機器のある場所以外は暗い場所中心である。KAGRAの詳細については、以下の2記事を参照してほしい。
・日本の重力波望遠鏡「KAGRA」が報道公開 - 年内に本格観測を開始へ
https://news.mynavi.jp/article/20191004-904387/
・写真で見る大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」
https://news.mynavi.jp/article/20191008-906003/
先に記しておくと意外と問題ナシであり、使い勝手としては良好だった。ナイトモードがおもいのほか、優秀であったのが大きい。手持ちでも夜景を撮影できるモードで、画面上に表示された時間分だけなるべく動かないでいる必要はあるのだが、シャッター速度1秒であれば歩きながらでもOKなケースもあった。これは長時間露光モードといっても、明暗合成的な挙動があるためと思われる。シャッター速度4秒以上となると手持ちでも厳しいのだが。ちなみにシャッター速度3秒でどうしてもブレてしまいやすい場合は、画面ではなく、真正面を注視してみると比較的安定しやすい。遙か彼方に欲しいモノがあるとイメージし、それを注視するのも効果的だ。
気になる点としては色味。多くのユーザーが感じているハズだが、黄色が強めだ。晴天下では問題ないのだが、白色LED下の場合は記憶色とも異なる色合いとなりがちだ。この点は、iOS 13から強化された写真編集機能か、Lightroom MobileやMaxcurveでホワイトバランスを調整したほうがいいケースが多い。
また純正の編集機能に触れておくと、トリミングを選択した際、傾きだけでなく、縦方向と横方向も写真によっては自動的に修正してくれる。傾きは多くの場合で自動的に補正されるが、縦方向と横方向は被写体までの距離、及び被写体によって判断されているようだ。試しに壁を撮影してみるといいだろう。とくに13mmでの撮影データに効果的な機能だ。
もうひとつ。光源が多い場所での注意点は、ゴーストの発生のしやすさだ。下記動画を見るとわかりやすいが、注意していても生じることが多く、意識しての回避は光源数が増えるほど難しくなる。自分の正面に光源があるときは、気持ち向きを変えてみるなど試してみよう。
スマホで超広角がキレイに撮れるのは結構うれしい
もう1スポットでもお手軽さを見てみよう。KAGRAからも近い、神岡町にある道の駅スカイドームだ。スカイドームにはカミオカラボが併設されており、スーパーカミオカンデやKAGRAに関する展示が豊富である。大きくスクリーンがあるため、26mmでは下がっても全体を収めにくいが、13mmのおかげで楽に撮影しやすい。
もっぱら13mmと26mm中心で撮影していたのだが、52mmの出番は風景よりはテーブルフォトの際に多い。サイズ感もほどよいのが大きい。料理だけでなく、小物撮影が多いのであれば、iPhone 11よりは、iPhone 11 Proシリーズのほうがオススメだ。
取材時においては、iPhoneのカメラはメモ撮影用が主なのだが、状況によってはそのまま記事に使用できる写真もあり、小便利である。スマホオンリーのユーザー、とくにiPhoneのみで過ごしてきた人からすると、はじめての超広角という人もいるハズだ。少し振り回されるかもしれないが、ちょっと上向きで撮るくらいから慣れていくといいだろう。いくつか気になる点はあるものの、毎度ながら無難に遊べるカメラであるのは、iPhoneのいいところだ。