インテルが10月4日に都内で開催した開発者向けカンファレンス「インテル デベロッパー・カンファレンス 2019」で、2020年に市場投入が計画されている次世代の主力CPU「Tiger Lake」(マイクロアーキテクチャの開発コード名)の性能について言及があった。

興行としてのeスポーツの規模は増々大きくなり、PCやゲーム業界などそれを取り巻く製品市場も拡大を続けている。ここ日本でも、海外に比べ出遅れた感はあるが、「eスポーツ」という単語自体は、プレステの3と4の区別もつかない様な人でも聞いたことはある、という程度には盛り上がっているだろう。

インテル技術本部 部長の安生健一郎氏

今回の開発者向けカンファレンスのプログラムのひとつとして、インテルが海外動向も見据えつつ国内eスポーツをいかに支援し、普及に貢献できるかという講演が行われた。登壇した同社技術本部 部長で、工学博士の安生健一郎氏は、「海外とは違う、日本だけの動きが必要なのでは」と指摘する。

今の国内eスポーツシーンは「ハイエンド」に偏っている。トッププロが特別なハードウェアで参加しているだけなのだとしたら裾野が限られてしまう。野球やサッカーは、子供たちが公園で遊んでいるところから最高峰までのつながりがある。安生氏は、「特別なPCではなく、家にあったり、仕事で普段使っているような普通のPCでもゲームができるようになれば、とりあえず遊んでみようという発想がうまれるのではないか」と話す。

先般、インテルは「第10世代Core」と呼ぶ新しいプロセッサ製品群をリリースしている。第10世代Coreには少しわかりづらいが大きく2種類の製品があり、ひとつは「Comet Lake」と呼ばれるCPU性能に特化したもので、もうひとつが「Ice Lake」と呼ばれるCPUよりもGPU性能を高めることに成功したものだ。Ice Lakeかどうかは、統合型GPU「Iris Pro Graphics」の内蔵を示す「IRISロゴ」の有無が簡単な見分け方だ。

  • Ice Lakeとその統合GPU「IRIS」は、第10世代Coreの中でもゲームプレイに適した製品だ

残念ながら日本市場ではIris内蔵の製品が未だ少ない(デルの「XPS 13 2-in-1」くらい)が、このIrisにより、薄くて軽い普段使い用に見えるノートパソコンであっても、デスクトップ並のGPU性能でゲームが遊べるようになりつつある。アジア、特に中国市場ではノートPCでゲームを遊ぶ傾向が強まっているそうで、Irisのような統合型GPUの展望は明るい。

  • IRISの性能を、ゲームタイトルの実フレームレートで旧製品と比較したグラフ。1080p環境で30FPSあれば十分に遊べ、60FPSならかなり快適と見ていい

インテルは次世代製品でもこの取り組みを継続し、さらに加速させる。「Xe」と呼ばれる新たな統合型GPUを開発しており、同社が2020年の製品化を予定している次世代マイクロアーキテクチャ「Tiger Lake」では、これを内蔵したプロセッサ製品を実現する計画だ。安生氏は、「Xeグラフィックスでは、インテルがディスクリートGPUに参入するのではといわれることもあるが、その認識は少し違う。薄くて軽いノートPCに、ディスクリートGPU並の統合GPUを内蔵するというのが、我々の認識だ」と説明する。

Xeは来年の製品化に向け、鉄拳7がスムーズに動くであるとか、レイトレーシング技術を利用できるといった、性能の高さを裏付ける情報が出始めている。Irisでも主要ゲームタイトルを1080p画質で遊べるという性能が実現しているが、安生氏はXeの性能目標を「FPS(frame per second)において、Irisで30フレームだった環境で、60フレームをねらう」と述べた。

  • インテルは2020年、「Xe」で統合GPUの性能をディスクリートGPU並に引き上げる計画だ

インテルは今後、eスポーツの裾野が他のスポーツのように広がり、「エンスージアスだけでなく、誰でも、気軽にPCゲームを楽しめる」時代の実現を目指し、半導体の開発や、国内独自のイベント支援などに取り組んでいくとしていた。