世界中で放映されているアジア発祥の格闘技イベント「ONEチャンピオンシップ」。記念すべき100回大会が10月13日両国国技館で開催されます。今回は100回記念ということもあり、対戦カードはもちろんのこと、10月5日、6日に開催されたファンフェスでeスポーツとコラボするなど、話題に事欠きません。

ですが、「普段格闘技をあまり見ないからどこに注目すればいいかわからない」という人もいるでしょう。そこで、今回は私、青木真也がONEの見どころを紹介します。

  • 海外で行われた過去のONEの大会の様子

選手のメッセージを感じてほしい

日本で格闘技というとハードルが高かったり、危険なイメージがあったりします。ですが、ONEの見どころは闘いそのものではありません。ONEのチャトリCEOは、スピーチのなかで「我々は闘いを売っているのではない。ヒーローを作っているのだ」と、伝えています。

スポーツの試合で感情を揺さぶられた経験はありますか? もしあるとすれば、それはスポーツの試合だけではなく、選手にドラマがあるからだと思います。少なくとも私はそうです。選手やチームのドラマ、物語が見たいのです。

もちろん、選手は勝敗にこだわるでしょうし、それ自体は当然です。ただ、それだけではなく、選手は「世の中に伝えたいこと」「問いかけたいこと」を持っています。伝えたいことがあるからこそ、観客の前で格闘技を行うのです。何もなければプロになる必要はないでしょう。

青木真也が伝えたいことは

当日は私も選手として試合をします。そこで何を伝えていきたいのか。それは、立身出世のようなストーリーはありません。私は「人生、楽しいことよりも、苦しいことやつらいことのほうが多いですが、コツコツと前を向いて進んでいれば、いつか報われるはず」というメッセージを、伝えたい。

日本では「こうあるべき」という外部圧力の強さが、多くの人を苦しめています。たとえば、人間関係がうまくいかなかったり、ドロップアウトしてしまったりすると、やり直しが難しいものです。そんな日本において、36歳の私と同世代の人は、会社や家庭で日々悩んでいると聞きます。実は私も去年、別居をして、家庭のことで悩みを抱えていました。格闘技の選手である私が感じていることと、一般社会の同年代の人が感じていることは、実はそこまで違わないのかもしれません。

しかし、うまくいかないことがあっても、マイノリティであっても、懸命に目の前のことをやれば生きていけるのです。もし、何かと闘っていたり、何かに悩んでいるのであれば、ONEを観にきてほしい。きっと何かを感じ取れるはずだし、会場を出る頃には前を向いて歩けていることを約束します。

  • 当日は僕も試合に出場します

格闘技に限らず、思想や信念を伝えることは大事です。たとえば何かの商品があったとして、その作り手や商品自体の物語や思想に共感が生まれると、購入やファン化につながるのではないでしょうか。だからこそONEは物語を大事にしているのです。

10月13日、会場にあるのは選手一人ひとりの物語。スタッフも必死の想いでイベントを盛り上げようとしています。見どころは彼らの“懸命さ”であり“必死さ”。泥臭い物語が、そこにはあるのです。