最新のApple Watch Series 5でアップデートされた注目すべきポイントについて、特徴的な機能を試しながらレポートしていきましょう。

【1】本体ケースの種類が増えた

Apple Watchは、文字盤やバンドを手軽に交換し、ユーザーの個性を思う存分アピールできる豊かなカスタマイズ性を特徴としています。最新のSeries 5は、本体ケースの種類がさらに増えました。

  • Apple Watchはカスタマイズが手軽に楽しめるのが魅力。ケースも、質感を重視したプレミアムモデルが増えました

定番のアルミニウムケースには、今回から初めてiPhoneの製造過程で使われた金属を無駄なくリサイクルした7000シリーズのアルミニウムが100%使われています。カラーはシルバー/ゴールド/スペースグレイの3色。リッチな輝きが女性にも人気のステンレススチールケースは、シルバー/ゴールド/スペースブラックの3色があります。

純白のセラミックケースは、Series 3以来の復活を遂げました。すり傷などに強く、指紋の付着が目立ちにくいことも魅力です。

そして、Series 5で初めて採用された「チタニウム」は、軽くて剛性が高いことを特徴とする金属です。元来は、指紋の付着に弱く変色しやすいため“腕時計向き”ではない素材ですが、Apple Watchのケースは表面に特殊な被覆加工処理を施しており、経年変化に高い耐性を備えています。カラバリは、金属本来の美しい輝きを放つチタニウムと、ダイアモンドライクコーティング(DLC)という表面強度を高める塗装手法を採用するスペースブラックチタニウムの2種類があります。

  • Apple Watchで初めてチタニウムケースを採用するプレミアムモデルが発売されます

このほかに、アルミニウムケースがベースのNikeコラボモデルと、ステンレススチールケースがベースのエルメスとのコラボモデルもあります。

  • エルメスとのコラボモデルはステンレススチールケースがベース

ケースのサイズは、少し大きめの44mmとコンパクトな40mmの2種類で、デザインはSeries 4からほぼ変わっていません。それぞれ、Series 3までの42mm/38mmのケースとの互換性があるので、買いそろえてきたApple Watch用バンドのコレクションを引き続き活用できるのが嬉しいところ。1,000通り近いケースとバンドの組み合わせから、好みに合うペアリングが探せる「Apple Watch Studio」のサービスも、リアルとオンラインのAppleストアで開始されました。

  • Series 5にNikeのバンドを装着。ケースのサイズが合えば、これまでに発売されたバンドが装着できます

  • 好みに合うケースのサイズと素材、バンドの組み合わせが探せる「Apple Watch Studio」のサービスも始まりました

【2】画面の常時表示が可能になった

新しいSeries 5は、常時表示対応のRetinaディスプレイが搭載されたのが大きなポイントです。

ふだん、アナログの腕時計を身に着けていると、そもそも画面が常時表示できることがそんなに珍しいのかと思うかもしれません。Apple Watchに搭載されている有機ELディスプレイは、時刻などさまざまな情報を表示するために電気を使います。そのため、必要な電気を本体の内蔵バッテリーにチャージする手間をできるだけ省き、なおかつ本体を薄く軽量にしながら十分に長い連続駆動を実現するために、これまでのApple Watchでは内蔵センサーを使って、ユーザーが手もとのウォッチを傾けて画面をのぞき込む角度になった時だけ画面をオンにしていました。

Series 5では、電力効率の高いLTPO(低温多結晶酸化物)OLEDディスプレイをSeries 4に引き続き搭載しました。さらに、ディスプレイドライバーやパワーマネジメントIC、環境光センサーの組み合わせを最適化したことで、画面を常時点灯しながら、Series 4と同じ約18時間の内蔵バッテリーによる連続駆動時間を達成しています。

この常時表示ディスプレイ、実際に使ってみると、やはりとても便利でした。時刻を“チラ見”したい時に、わざわざ手首を返す必要がないので、仕事の席で相手と話している時もさっと時刻を確認できます。Series 4から大きな飛躍を実感しました。

  • 常時表示に対応したSeries 5のディスプレイは魅力満点。スタンバイ状態の少し暗い常時表示画面は、晴れた日の屋外でも視認性をしっかり確保しています

  • 画面表示をオンにすると全体が明るくなり、秒針も表示されます

Series 5の常時表示ディスプレイは、「オン」の時には画面の輝度を上げ、毎秒60回も画面を素速く書き換えて動くオブジェクトを滑らかに表示しています。ユーザーが画面を見ていないであろう方向に本体が傾くと、ディスプレイの照度を落として、ベタ塗り表示の時計の針も輪郭線のみを表示するなど、消費電力を減らせる黒色表示の比率を増やします。画面の書き換えは毎秒1回に抑えられ、時計は秒針の表示がなくなります。

Apple Watch本体の設定から「画面表示と明るさ」>「常にオン」を選択すると、「機密コンプリケーションを非表示」にする項目があります。これをオンにすると、カレンダーやアクティビティなど、ユーザーの個人情報に関わる情報が暗転状態の時に非表示になります。常時表示ディスプレイは便利ですが、思わぬ形で個人情報を盗み見られる心配もあります。不安な人は、この機能を利用するとよいでしょう。

  • ウォッチの設定からディスプレイ表示の「常にオン」と「機密コンプリケーションを非表示」を選択できます

  • 標準設定の状態。通知が来ると、意図せず周囲の人に内容を見られてしまう可能性があります

  • 「機密コンプリケーション」を非表示にすると、スタンバイ状態の時にカレンダーの情報が隠れて見えなくなります

【3】内蔵コンパスはふだん使いも色々イケそう

Apple Watch Series 5は、本体にコンパス機能をアプリ化して内蔵しました。文字盤にコンプリケーションとしてコンパスアプリのショートカットも追加できます。

アップル純正のコンパスアプリは、東西南北の方位だけでなく、海抜高度や水平線に対する傾きも計測表示したり、向かいたい方向を固定して、自分の向きとの差分を確認できる機能もあります。トレッキング(山歩き)やハイキング、クロスカントリースキーなどのアウトドアレジャーで大いに活躍してくれそうです。

  • Series 5で新たに内蔵されたコンパス機能。さまざまなアプリでいろいろ便利に使えそうです

でも、実はコンパス機能が便利に使える機会は日常の生活シーンにもいろいろありそう。「マップ」とコンパスアプリが連携するようになったので、「いま自分が向いている方向」がマップの画面上で確認できます。仕事や旅行で初めて降りた駅から、目的地により正確に足を運べそうです。

  • 特に、マップアプリでコンパス表示(自分がいま向いている方向)が可能になったのは大きな収穫といえます

新居を探す時に気になる「部屋の方角」は、これからはApple Watchでスマートに調べましょう。風水に興味のある方は、Apple Watchがあれば吉凶方位に関連する知識がより深められそうです。Apple Watchの内蔵コンパスを活用するためのAPIもデベロッパーに公開されているので、これから便利なアプリが増えそうです。

【4】WatchにアプリをApp Storeから直接ダウンロード

Apple Watch Series 5と同時に、最新のwatchOS 6がリリースされました。watchOS 6にはApp Storeが新たに加わり、ウォッチ単体でアプリのダウンロードが可能になったことに要注目です。これまで、アプリを追加する時はiPhoneのApp Storeでダウンロードしてから、iOSのWatchアプリを介して同期する必要がありました。これからは、特にiPhoneから離れた場所でも使えるApple WatchのCellularモデルで、新しいアプリがスムーズに楽しめると思います。

  • watchOS 6からApp Storeを搭載。ウォッチ単体でアプリの追加が可能になりました

なお、watchOS 6を利用できる条件は、Apple Watch Series 1以上の端末を、iOS 13以降をインストールしたiPhone 6sよりも新しいiPhoneとペアリングした環境が必要です。

新たなアプリも一気に増えました。女性のヘルスケアに役立つ周期記録アプリは、常時身に着けていることの多いApple Watchと親和性が高そうです。これまでありそうでなかったiOSとインターフェースを共通化した「計算機」や「ボイスメモ」は、筆者もかなり頻繁に使うと思います。

  • Apple Watchに最適化された計算機、ボイスメモが使いやすいです

そして、筆者がもうひとつ注目したアプリは「ノイズ」です。Apple Watchに内蔵されているマイクを使って、ユーザーがいまいる場所の環境ノイズをリアルタイムにチェックできるアプリです。

  • Apple Watchの内蔵マイクで周囲の環境音が測定できる「ノイズ」アプリ。設定したしきい値を超えるノイズが飛び込んで来たときにアラートを飛ばしてくれます

加齢に伴う聴力低下は避けられないものですが、大きな音に長時間耳をさらしてしまうと、若い人でも聴力の低下は進んでしまいます。世界保健機構(WHO)の指標によると「80dB」以上は“大きな音”に分類されており、これより大きな音に長い時間耳を晒してしまうと、やがて聴力に回復できないダメージを負ってしまい、難聴のリスクも高くなると言われています。

  • 駅の改札は60dB中盤。ノイズを測定しながら散歩していたら意外に楽しくてハマりました

  • 電車が侵入してくる駅のホームの先端は80dB前半もありました

iOSのWatchアプリから「環境音測定」をオンにしておくと、ヘルスケアアプリで1日の間に触れた環境音のレベルを可視化できます。あまり大音量に囲まれる場所には近づかないように自覚を促せるようになりそうです。Watchアプリの「ノイズ通知」から“しきい値”を決めておくと、そのレベルの音にさらされていることをApple Watchが検出するとバイブレーションで注意を促してくれます。

  • Watchアプリで「環境音測定」をオンにしておく必要があります

ちなみに、iOS 13のヘルスケアアプリには「ヘッドフォン音量」という項目が新設されています。iPhoneをAirPodsやBeatsのワイヤレスヘッドホン・イヤホンにペアリングして音楽を聴いている場合、かなり正確な音量設定の推移が記録されます。ここでもまた、80dB以上のボリューム設定が長く続いた場合は要注意です。筆者も、アプリのグラフを確認してみたところ、電車に乗りながら海外ドラマを見ていた時に、気付かぬうちにかなり音量レベルを上げて使っていたようです。反省しなければ。

  • iOS13のヘルスケアに追加された「ヘッドフォン音量」。あなたも知らないうちに80dB以上の大音量で音楽を聴き続けているかも…

歴代モデルのユーザーも納得の完成度。初めてのApple Watchにもオススメ

Apple Watchは、2018年にSeries 4が発売された時にディスプレイが大画面化し、デザインや使い勝手が大きく変わりました。Series 4と比べると、今年のSeries 5の変化は小さいのかな…と思っていましたが、実際に試してみると想像よりも大きな進化を遂げていました。特に、常時表示対応ディスプレイがもたらす快適さは、これまでApple Watchを愛用していた方ならば、アップルストアのデモ機を体験するだけで直感できる魅力だと思います。物欲を刺激されること間違いなし!

個性を主張するためのファッションアイテムとしてスマートウォッチを捉えているのであれば、Series 4にはなかったチタニウムやセラミックのケースが加わったApple Watchを買い足さない理由はないと思います。

最新のApple Watchについてさまざまな機能を紹介してきましたが、Series 5はビギナーも快適さをすぐさま実感できる親しみやすいスマートウォッチに仕上がっています。iPhoneユーザーなら、ふだんの生活をさらに快適かつ豊かにしてくれる買い物になるはずです。