NTTドコモは9月20日、「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」の開幕試合の映像を5Gで転送する『5Gライブビューイング』を実施しました。400インチの大画面に4K超高画質で映し出されたのは、日本vsロシア戦の迫力のライブ映像。東京スタジアム(東京都・調布市)の興奮や熱気が0.8秒以下という超低遅延で汐留に用意されたイベント会場(東京都・中央区のベルサール汐留)まで届けられました。

  • NTTドコモが「もっとわかると、もっと熱い。0 distance 5G LIVE SPORTS」と題したラグビーワールドカップ2019の5Gライブビューイングを開催

ラグビーW杯をマルチアングルで遠隔観戦

ラグビーワールドカップ2019が開幕したこの日、ドコモは次世代移動通信システム「5G」のプレサービスをローンチしました。同社ではすでにラグビーの試合会場となる全国8カ所のスタジアムを5Gエリア化しており、このラグビーワールドカップ2019において、5G技術を活用したサービスの提供に意欲的に取り組んでいく考えです。

そんな5G試験サービスのひとつが「マルチアングル視聴」。スタジアムやイベント会場で試合を観戦しつつ、ドコモが用意する5G対応スマホで多視点映像をチェックできるのがメリットです。全国8カ所のスタジアムのほか、ライブビューイングが実施された汐留でも機器が用意され、多くの来場者が次世代のスポーツ観戦を体験しました。

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    マルチアングル視聴の利用イメージ。2画面が連携する、LG Electronics製の5G対応スマホを使っています

この日、汐留の会場には一般客 約300名、メディア 約50名、関係者 約50名が招かれました。会場に用意された400インチのメインディスプレイは4Kの超高画質。両脇にも270インチのサブディスプレイが設置され、様々な角度のライブ映像を映し出します。これほどの高画質な映像をほぼ遅延ゼロの状態で視聴できるのには、高速、低遅延、多接続が特徴の5G通信技術が貢献しています。

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    試合前の様子。東京・汐留のイベント会場に大型ディスプレイと観戦席が設置されました

2020年春の5G本格商用化に向けて

試合前、ドコモの関係者がイベントの概要について説明しました。

ラグビーワールドカップ観戦用のライブビューイングは音響にもこだわっているとのこと。ドルビーアトモスによる立体音響、ドコモが開発したリアルタイム-ロスレス音響符号化技術によって、あたかもメインスタンドで応援しているかのような環境をつくりあげている、と説明がありました。このほか、東京スタジアムにはカメラマン(ピッチに3名、観客席に1名)がスタンバイ。現地で撮影した写真が5Gを通じてクラウドに即時アップロードされ、ロビーのディスプレイにリアルタイムで表示されるようになっていました。

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    NTTドコモ 取締役常務執行役員 スマートライフビジネス本部長の森健一氏(左)と、同 スポーツ&ライブビジネス推進室長の馬場浩史氏(右)

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    試合中に撮られた写真が、次々にディスプレイに表示されていく仕掛け

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    一眼レフと5Gスマホをケーブルでつなぎ、撮影した写真を即時アップロードできる環境を構築。キヤノンが協力しています(写真は18日に開催した5Gプレサービス開始イベントで撮影したもの)

いよいよ5Gライブビューイング、開始

汐留の会場では試合前、元ラグビー日本代表の大田尾竜彦さん、矢富勇毅さんらがトークセッションを披露。スポーツ実況の佐藤哲也さんも交えて、優勝国予想などで盛り上がりました。

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    試合前の様子。大田尾竜彦さん、矢富勇毅さんらが会場を盛り上げます

当夜は開会式のセレモニーから異様な興奮状態に包まれた東京スタジアムでしたが、その熱気がそのまま汐留まで運ばれてくる印象でした。国歌斉唱が行われ、フィフティーン(1チームのメンバー)がピッチに散らばってキックオフ。あまりの歓声の大きさ、その臨場感に、本当にスタジアムで観戦しているかのような錯覚をおぼえました。

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    試合が始まり、ライブビューイングの雰囲気も最高潮に

会場では中央のディスプレイに国際映像を、左右のディスプレイに俯瞰カメラ・寄りのカメラ・ゴール裏のカメラからの多視点映像を表示。来場者が好きなアングルのカメラ映像をチェックできるようになっていました。

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    左右のサブディスプレイには多視点映像を表示

観客側に用意された5Gスマホの「マルチアングル視聴」も同様で、選手を大映しにするFOCUS VIEW、ゴール裏からの視点のTACTICS VIEW、選手の状態をチェックできるSTATS、リプレイ映像を確認できるREPLAYをユーザーが自由に選べるようになっています。試合がはじまると、会場の大型ディスプレイで全体の推移を見守りながら、好きなタイミングでスマホのマルチアングル視聴を試す来場者の姿もありました。

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    会場の大型ディスプレイに興奮しつつ、知りたい情報はスマホのマルチアングル視聴から取得できる状態に

ラグビー経験者が感じた5G観戦のメリット

ちなみに高校では3年間ラグビーをやっていた筆者(ポジションは右ロック)。今回の5Gライブビューイング開催を楽しみに待ちわびていた1人でもあります。そんな筆者が、実際に5Gによるマルチアングル視聴を試して気が付いたことは――。

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    5Gスマホに映し出された試合中の映像。下の画面でFOCUS VIEW、TACTICS VIEW、STATS、REPLAYを切り替えられます

まずは何と言っても、リプレイ機能が便利でした。いまのプレイをもう一度見たい、そんなときに自由に何度でも見返せるのが嬉しい。スタジアムで生観戦しているときは、リプレイ映像を見ることができません。これからの時代のスポーツ観戦には、必須の機能と言えそうです。

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    リプレイ機能の利用イメージ

また、試合中、ライブビューイングのメイン映像には映ってないところで大歓声が起きている。何が起こっているんだろうと疑問に思ったことがありました。別のアングルの映像を確認すると、スタジアムに発生したウェーブが映っています。なるほど、と納得。このほか、トライ後のコンバージョンキック(トライ後に行うゴールキック)を蹴るシーンで、メイン映像では角度がよく分からないこともありました。そんなときも、別アングルからチェックできればキックの難易度も分かる、マルチアングル視聴に助けられました。

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    ハーフタイムに、ゆっくり選手のスタッツ(プレー状況を数値で表す成績表)を確認するという使い方も

実際にスタジアムの中にいたわけではありませんでしたが、筆者はたぶん現地にいる観客と同じくらい、震えが来るほど興奮しながら観ていました。スポーツ観戦に限らず、アーティストのライブなど、自分が好きなイベントであればかなり楽しめるだろうと思います。

ひとつ注文があるとすれば、ラグビーの複雑なルールを分かりやすく解説する工夫があっても良かったのではないでしょうか。例えばファウルでプレーが止まったら、その都度、いま起きた反則を解説するアニメが右下に表示される。ユーザーが適宜、それをタップすることでメイン画面に、反則の理由を解説するアニメが表示される。そんな使い方ができれば、まだ野球やサッカーほど一般的でないラグビーへの理解も一層深まるのではないか、と感じました。


来年に迫った東京五輪においても、様々な5Gサービスを提供していきたいドコモ。ラグビーワールドカップ2019は、そのテストケースとしても重要な役割を担っています。なお大盛り上がりだった20日のロシア戦ですが、ドコモでは10月13日の日本vsスコットランド戦も、ベルサール汐留において同様のイベントを実施する予定です。