クアルコムジャパンは9月19日、5G技術と、来たる5G時代に向けた同社の取り組みについての記者説明会を開催した。説明会には米Qualcomm社のクリスティアーノ・アモン社長が登壇し、5Gで実現するイノベーションについてプレゼンテーションを行った。
登壇したアモン社長は、9月20日からNTTドコモが5Gのプレサービスを開始することを挙げ、今年は世界的に5Gへの移行がスタートしたことを紹介。5Gへの移行は様々な業界、特に日本では、製造業や自動車、エンターテインメント産業などが5Gにより大きな影響力を受け、同時に国際的な競争力も得ることになると指摘。
いわゆるデジタルトランスフォーメーション(IT技術が生活をよい方向へ変革するという概念)において、5Gは単なる携帯電話を超えてあらゆるものをクラウドに接続するためのものとなり、電気と同じように「あって当たり前」の技術になることを紹介した。
日本の産業界への影響については、一例として映像コンテンツ業界を挙げ、日本にはソニーやパナソニックといったプロ向けの映像機器のメジャー企業があることを指摘し、カメラが5G対応すれば、撮影したデータを直接スタジオに送れるようになるなど、コンテンツ制作において大きな飛躍に繋がることを紹介。またコンシューマ向けでは、スポーツの試合などで4K映像をリアルタイム配信できるようになるなど、質の面での向上が期待できる。同時に超多数を相手の高速通信が可能な5Gは、通信と放送の垣根も超えるような、大きな変革をもたらす可能性があるようだ。
5Gは全世界で計画よりも前倒しに導入が進んでおり、4Gのスタート時には世界で対応キャリアは4事業者、対象となる顧客が1億2,000万人程度しかいなかったものが、5Gではスタート時から世界中で20以上のキャリアが参画しており、22億人もの潜在的な顧客がいる市場となることを紹介。また、端末も150種類以上が5G対応として製品化済みとなっており、3Gや4Gとは比べものにならない勢いでの立ち上げになることをアピールした。
こうした5Gの大規模展開の支えとなっているのが、クアルコムのスマートフォン向け5Gモデム搭載SoC「Snapdragon」シリーズだ。ドイツで開催されたIFA 2019では、Snapdragonの8シリーズ、7シリーズ、6シリーズを発表し、2020年にはフラッグシップだけでなく、普及価格帯にも5Gを浸透させていくとした。
質疑応答では、先日TDKから取得した両社の合弁会社「RF360ホールディングスシンガポール」の目的について、フィルターなど5G向けの部品を内製できるようにすることで5Gのトータルなソリューションを提供できるようになることで市場を加速させられること、TDKとはセンサー技術などで協業を続けていくとした。また、Appleとの和解については、業界をリードする2社の和解は市場に対してプラスであり、Appleから5G対応製品が登場するのを楽しみにしているとコメントした。
なお、日本の5Gの起ち上げが世界と比べて遅いのではないかという指摘については、日本では周波数帯の割り当てが完了しており、まだ割り当て作業中である欧米と比べても決して遅くはない、という認識であると述べていた。
現時点では5G向けモデム製品はクアルコムの独擅場となっているが、ファーウェイやサムスンなどは5Gモデムを内蔵したSoCを発表しており、今後競争は激化していくだろう。アモン社長が予想する5G社会の実現に向けて、同社が今後担っていく役割について、注目したい。