イープラス システム部 システム運用グループ データマーケティングチーム リーダー 辰巳優介氏

イープラスは、全国で開催されるコンサート、フェス、スポーツや演劇などのチケットを販売する国内最大規模のチケットプレイガイドだ。年間10万件以上の商品(公演)を取扱い、その仕入、販売管理、経理やカスタマーセンターの運営に加え、1200万人以上の会員の嗜好データをベースとした膨大なデータ・マーケティングを支える業務は多岐に渡る。そのイープラスが、RPAに取り組み始めたのは2017年のことだという。

「2017年の春から検討を始め、一通りの調査やトライアルを行った上で10月には正式導入を決定しました。RPAの流行より一歩早い動き出しだったと思います」と振り返るのは、イープラス システム部 システム運用グループ データマーケティングチーム リーダーである辰巳優介氏だ。

導入したのは、NTTデータが提供するWinActorだ。RPAツールの選定の基準は、導入にあたってのコストを含めた負担の少なさだったという。

イープラス システム部 統括部長 大川信行氏

「サポートつきのトライアルプランがあり手軽に始められるコストで進めることができました。自分たちのペースで新しいサービス適用の可能性を探りたいと思っていた我々の意向にフィットしていたことが大きかったです」とシステム部 統括部長の大川信行氏は語る。

早速、希望者を対象に集合研修を受けWinActorを学習し、トライアルで実業務に活用できそうだという手応えを感じることができた。実業務への導入当初はロボット作成から保守・運用までの一連の流れを掴むまでの導入サポートをパートナーであるネクストウェア社に依頼した。開発された成果物を参考にすることで徐々に自社主導での開発件数を増やしていったという。現在はイープラスが主体となった運用が定着し、全社的にもRPAの認知・活用が広がっている。

毎日の定型業務からRPA化をスタート

導入から2年弱で、社内では200本程度のロボットが稼働しているというが、最初に手をつけたのは毎日の情報入力が正しく行えているかのチェックに関する業務だったという。

「多彩なチケットを扱う中で、発売前日にはいつからどんなチケットを、どういう風にどれだけ売り出すかという情報入力を行います。この情報入力自体が手作業である上に、正しく入力されていることを複眼的に多段チェックする工程まで多くの人が必要になります。各人の業務内容に合わせたチェックリストを出力する作業は、各担当者それぞれが1日1時間ほどかけておこなう業務です。これは私が以前担当していた業務だったので、トライアル時にRPA化できそうだと感じました」と辰巳氏。

現在のチケット販売は、ファンクラブ先行、チケット会社先行、メディア先行販売等、販売回数が増加し、また特典がつくチケットがあるなど複雑化している。公演主から提供される元情報はメールでのExcel添付で提供されることもあれば、手書きのFAXで来ることもあるという。またそのフォーマットは統一されていないことが多く、データ加工の際にも手作業を要するため発売前のチェックは必須業務だった。まず、この入力された情報が意図したとおりであることを人の注意力だけに頼るのではなくデータ同士の突き合わせで機械的にチェックする方法に変えるべくRPAを活用したわけだ。

「現在はさらに踏み込んで、情報入力にも一定の規則性があるものについてはその規則をロジック化することで情報入力処理そのものまで自動化に成功しています。たとえば、年間を通して試合のスケジュールが固定されていて販売方法にも一定の規則性があるスポーツのようなジャンルでは1年分の発売情報を年初にまとめて登録してしまうこともできるのですが、以前は登録時期に一時的に人を増員するなどして対応していました。この1年分の情報入力を自動化したことで、コストばかりでなく働く人のミスを起こせないという心理的負担も軽減できたのではないでしょうか」(大川氏)