ダイソンが2019年春に発売した、コードレススティック掃除機「Dyson V7 Slim」(以下、V7 Slim)。同社の掃除機は、高い吸引力と、外国メーカーならではのスタイリッシュなデザインが特徴ですが、日本の住宅事情や日本人の体形にはそぐわないといった声も少なくはありません。そんな中、ダイソンがついに、日本人の要望に応え、ダイソン初のスリムタイプとして登場したのがV7 Slimです。今回は、新たなラインナップとして登場したV7 Slimを実際に試して感じた、使い勝手や実用性をレポートします。

  • Dyson V7 Slim

    Dyson V7 Slim

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    基本的な構造は「V7」と同じですが、ヘッドやパイプが軽くなり、使いやすくなりました

まず、V7 Slimの真骨頂ともいえる本体サイズは、W211×H1,140×D206mm。最新上位モデルにあたる「Dyson V11」(以下、V11)に比べ、スペック上だとW39mm、H117mm、D40mm小さくなっています。割合に換算すると、それぞれ84.4%、90.7%、83.7%のサイズダウン。数値が示すとおり、手にしてみた感触も、おおよそ1割~2割ほどコンパクトになったことを実感できました。

重さはV11の2.72kgに対し、V7 Slimは2.2kgと、520gの減量。500mlのペットボトル1本分ほど軽くなったことになりますが、使ってみると「こんなもんか」という感じ。

たしかに最上位のV11と比べると軽くはなっているのですが、"軽量"をうたう他社のコードレススティック掃除機は、1.4kg~1.5kgというレベル。あくまでダイソンのラインナップとして軽量であって、絶対的な軽さを求めるのであれば、他社のコードレススティック掃除機を選択したほうがよいと思います。

とはいえ、サイズが小型化されたことにより、操作性がかなり向上しました。特に掃除機全体を動かすとき、床からハンドル部分までの高さは重要な要素です。V7 Slimは、V11と比べて床からハンドル部分までの高さが抑えられており、大いに負担が軽減され、「おっ、いいじゃん」と感心。ササっと掃除しやすくなった気がします。

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    薄くコンパクトになったモーターヘッドで、従来モデルでは入り込めなかった隙間も掃除ができました!

背の高い人ならば気にならないかもしれませんが、身長161cmの筆者が背の高い掃除機で掃除をすると、ヘッドを手前に引くときに曲げたひじを高い位置まで上げる必要があり、それと連動して肩まで上がってしまうせいで、掃除時にけっこうな疲労がたまります。

体勢が変わることにより、片手で掃除機を動かしながら、もう片方の手で家具を動かすといった動作がスムーズにできなくなり、疲れるうえに掃除効率も悪くなるとストレスを感じていました。V7 Slimでは、掃除機の延長ホースが短くなり、ストレスが軽減されたので好評価。

本体サイズに合わせて、ヘッドも薄くてコンパクトなものが採用されています。小回りがよくなり、これまでダイソンのコードレス掃除機では掃除しづらかった場所、入り込めなかった隙間など、対応できる範囲が広がったこともプラスポイントでしょう。

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    コンパクトになったモーターヘッドは、取り回しがよく、部屋の隅っこや狭い部分の掃除もしやすくなりました

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    ハンドル部分の裏面に滑り止めのゴムなどは付いていませんが、壁に立てかけておくことは可能。パイプが短くなり、ヘッドの形状が変わったせいか、(ダイソンの)ほかのモデルより、心なしか安定して立てかけておける気がします。ただし、ちょっと手が本体に当たると倒れてしまうので、あくまでも仮置き程度

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    掃除の途中でちょっと手を放したい、くらいなら対応できます

V7 Slimの性能や機能面は、名前が示すとおり、ダイソンが2017年に発売した「V7シリーズ」と同様。毎分最大10万7,000回転する「ダイソン デジタルモーター V7」を搭載し、吸い込み仕事率やバッテリーの駆動時間、充電時間、ゴミをためるクリアビンの構造やゴミ捨て方法といった基本設計はV7と変わりません。

吸引力については、毎分最大12万5,000回転する最新デジタルモーター搭載のV11と比べて見劣りします。とはいえ、V7が発売された2年前の時点だと、吸引力はダイソン史上最高レベル。2019年の掃除機市場を見ても、まだまだ高水準ではあります。

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    吸引力は手元のスライドボタンで、MAXと標準の2段階から切り替えられます

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    手前にあるのが充電端子。コードを直接挿すか、付属のソケット型アダプターでも充電できます。バッテリー残量は、青く光るLEDライトが目安となります

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    床にこぼしてしまったシュレッダーのくずを吸引

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    MAXモードでしたが、最上位モデルV11のようにスムーズには取り除けず、数回ヘッドを往復させる必要がありました。吸引力の違いだけでなく、ヘッドが違うせいもあるように思います

V7 Slimを端的に表現するなら、「1周り~2周りほどコンパクトになった2年前のダイソンの掃除機」。2年前に登場していれば、多くの消費者を惹き付けたに違いありません。しかし、最新のV11を使ったことのあるユーザーにとっては、「小さくなって取り回しはいいけれど、どこか物足りなさを感じる」のが正直なところです。

V7 Slimで軽さとコンパクトさを実現したのは、延長パイプとヘッドのパーツをV7よりも小さなものに付け替えた点にあります。なのでハンディ掃除機として使う場合、その恩恵を受けられないのが残念です。ダイソンの掃除機はハンディタイプで使ってもズバ抜けた吸引力。そこも魅力の1つと思っている筆者としては、ハンディとして使っても軽さを感じられるものを期待します。

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    ハンディとしての使い心地は、従来のV7と変わりません。女性の力だと、高い位置に持ち上げての掃除がちょっと辛いかも

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    ゴミ捨て時は、本体ハンドル付近の赤いレバーを上に引き上げます。このとき少し力が必要です

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    赤いレバーを引くと、ダストカップが自動で開く仕組み。直感的で、筆者は好きです

筆者がダイソンのコードレス掃除機に望むのは、本体を含めた軽量・小型化。モーターやバッテリーの軽量・小型化によるサイズダウンは、すでに日本メーカーがチャレンジしているので、コードレス掃除機の覇者として君臨するダイソンにも、ぜひ挑んでほしいです。液晶ディスプレイを備え、専用の充電スタンドまで用意されたV11の仕様で、V7 Slimのサイズ感と重さを実現すれば、最高・最強だと思います。

ちなみにV7 Slimに付属する交換パーツは、モーターヘッド、コンビネーションノズル、隙間ノズルの3点。

5個のパーツが付属し、V11シリーズの中では最小構成モデルにあたる「V11 Fluffy」の価格が64,303円(税込)。対してV7 Slimは36,050円(税込)と、V11の半値ほどなので、ダイソンの掃除機がほしいと思いながらも、価格面と大きさで断念していた人にとっては、とても魅力的なモデルだと思います。今後、軽さやコンパクトさを重視しつつ、性能や機能も優れた上級モデルが登場するとしたら、その価格にも要注目ですね。