この秋、新しくリリースされるiPadOS。いよいよiPadが”ほぼパソコン”として活用できる時が近付いているのでしょうか。WWDCの基調講演で初めてその一端が明かされましたが、かなり駆け足だった部分も多々ありました。

そこで、改めてiPadOSに搭載される機能を詳しく見直し、iOSからどう変わるのかを確認してみましょう。果たしてどの程度までパソコン代わりになるのでしょうか。今回はマルチタスク機能や「ファイル」アプリなど、iPad単体ではやや不自由だった部分の強化ポイントを予習します。

  • 使い勝手がパソコンに近付くか? iPadOS期待のポイントとは

<1>マルチタスクが大きく進化、1アプリ複数画面の操作が可能に

これまでも、同じ iOSを搭載しながらiPhoneとiPadでは機能や使い勝手の異なる部分がいくつかありました。iPad独自の機能である画面分割「Split View」や「Slide Over」もその一つです。iPadOSではこれが強化され、複数の作業を並行する場合の自由度がかなり高くなりそうです。

iOSのマルチタスク機能でこれまで不自由だったこと

  • 同じアプリで複数ファイルを同時に開いて作業できない
  • 複数のアプリを併用した作業がしにくい

書類制作時に他の書類やWebサイトを参照したり、もらったメールを見ながら返信を書くなど、ビジネス系の作業は1画面で完結しないことがよくあります。これまでのiPadでも4本スワイプでアプリを切り替えたり、Split ViewやSlide Overを使うなど部分的に可能ではありましたが、自由度が高いとは言えませんでした。それがiPad OSでは大きく変わることになりました。

iPadOSのマルチタスク機能でできるようになること

  • Split Viewで同じアプリの画面を2枚並べられるようになる
  • Split Viewの状態の画面を複数保持し、切り替えて使える
  • Slide OverはiPhoneのアプリスイッチャーのようにアプリ切り替えが可能

iPadOSでは、パソコンでいう”デスクトップ”の概念はないものの、1アプリ1画面という従来の開き方に縛られず、かなり自由にウィンドウを開くことができるようになります。

  • Split Viewがより柔軟になり、同じアプリを2つ開いて並べることができるように

  • 複数のSplit Viewの状態の画面を保持。作業に合わせてアプリのセットをすぐに切り替えられます

  • Slide OverはiPhoneと同様のジェスチャで開いているアプリを切り替えられます

「メモ+メモ」「Pages+写真」「メール+ブラウザ」など、Split Viewにした画面をいくつも保持しておけるので、その都度アプリを閉じたり開いたりしなくても作業を継続しやすくなります。かなりメモリを消費しそうなのが気になるところですが、アプリとファイルの開き方についてはこれまでより自由度が高くなることが期待できます。

<2>ファイルのやり取りがパソコン並みになる「ファイル」の進化

iOSに「ファイル」アプリが初めて登場した時、これでMacとの連携が楽になると思ったものですが、実用するにはちょっと物足りないレベルだったと言えるでしょう。できないことはないのですが、積極的に使いたいものではなく、使おうとしても使えない場面が少なくありませんでした。

iPadの「ファイル」でこれまで不自由だったこと

  • 扱えるのは自分のiCloudや連携可能な一部のクラウドストレージのみ
  • フォルダが1階層1画面で表示され、一覧性が悪い
  • ファイルの圧縮・解凍ができない

iPadでMicrosoft Word、Excelなどのドキュメントを扱うこと自体はできても、仕事であれば他の人とドキュメントをやり取りしたり、共有サーバに保存するところまで求められます。会社のサーバや自宅のNASにアクセスできず、結局パソコンがないとダメ、というケースも多かったのではないでしょうか(サードパーティ製アプリで可能なものはありました)。その状況が、iPadOSでは大きく変わりそうです。

iPadOSの「ファイル」でできるようになること

  • USBメモリーやSDカード、ハードディスクなどの外部ストレージに対応
  • WindowsファイルサーバやNASにアクセスが可能に
  • ファイルのカラム表示が可能になり、メタデータも表示されるように
  • Safariからのダウンロードやメールの添付を「ダウンロード」フォルダに保存
  • ZIPの圧縮・解凍に対応

これでZIPの添付ファイルが来ても、社内の共有ファイルを編集するときも、iPadだけで作業が完結できるようになります。この他、ローカルストレージのフォルダ管理が可能になり、Wi-Fiのない場所でもファイルを扱いやすくなります。また、これまで「メモ」アプリに搭載されていた書類スキャナ機能がファイルアプリにも搭載されます。

  • 外付けドライブに対応し、USBメモリーやHDD、デジタルカメラ等から手軽に読み込みが可能に

  • 「ファイル」がMacのファインダーのようにカラム表示やプレビューに対応

さらに、Webサイトからダウンロードしたファイルを保存できる「ダウンロード」フォルダが用意され、ZIPの圧縮、解凍にも対応。ファイルの扱いで不便だった部分が大幅に解消されます。これにより、iPadでできそうでできなかった”PC的な作業”の相当な範囲が現在よりかなり容易になると言えるでしょう。

次回は、テキスト入力やコピー&ペーストなど、細かいけれどちょっとした使い勝手の違いを乗り越えるためのアップデートについて考えます。