EIM(エンタープライズ情報管理)大手のカナダOpenTextは7月10日から3日間、カナダ・トロントで年次イベント「Open Text Enterprise World 2019」を開催した。これまでマネージドサービス、一部のSaaS化などを進めてきたが、2020年に登場する次期版より「Cloud Edition」としてクラウドファーストで製品の開発と提供を行うことを発表した。

OpenTextでCEOとCTOを務めるMark Barrenechea氏は、「ERP時代は終わり、情報の時代になった」と述べ、「ERPはプロセスのメリットをもたらしたが、情報時代は情報からメリットを得る必要がある。そこで情報管理のEIMでは重要な役割を果たす」と続けた。

  • OpenText CEO兼CTO Mark Barrenechea氏

今年のEnterprise Worldはクラウド一色となった。すでにマネージドサービス、EIMのSaaS「OpenText OT2」とその上で動く「Core Apps」と呼ばれるサービスなどクラウドの取り組みを進めてきたが、2020年より「クラウドファーストになる」とBarrenechea氏は語る。

OpenTextはEIMプラットフォームスイートとして2015年に「OpenText Release 16」を発表した。以来、Release 16はEnhancement Pack(EP)として機能強化し、コンテンツの「OpenText Content Services」、BtoBのEDIクラウドの「Business Network」、コンテンツ管理に特化したAIプラットフォーム「Magellan」、モニタリングとエンドポイント隔離の「OpenText Security」などで機能を拡充してきた。

今回発表したEP6では、さまざまな機能が加わった。例えばContent ServicesはDocumentum D2とSAPとの統合など、ビジネスプロセスとの統合を進めた。

Barrenechea氏は、「すべてのマシンを読めるようにすることで、コンテンツマネジメントから洞察のプラットフォームとなるコンテンツサービスへと進化させる」と述べる。

Release 16はEP6の後、10月にEP7を公開。その後は「OpenText Cloud Edition(CE)」となり、「クラウドファースト」(Barrenechea氏)の製品となる。

「コンテナ化によりどこでも動かせるようにし、アップグレードは不要だ」とBarrenechea氏。なお、クラウド版の提供はサブスクリプション形式をとる。コンテナ化することでパブリッククラウド、プライベートクラウド、そしてこれまで通りオンプレミスで動かすことができる。

Barrenechea氏は「クラウドは成熟している。コスト削減、スピード、アジリティのメリットだけでなく、イノベーションのプラットフォームに進化している」と語り、提供済みのマネージドサービスの顧客は2500社を数えると報告した。

Cloud Editionは2020年4月に登場の予定だ。4月は第2四半期であることから「20.2」(2020年第2四半期)となる。その後、年数と四半期の組み合わせてナンバリングを進める。

なお、OpenTextは2020年4月のCEローンチに合わせ、Business Network、Magellan、デジタルフォレンジック「EnCase」、Core Appsも20.2としてローンチする。

Barrenechea氏は「OpenTextにとって重要なコンソリデーションポイントになる」と述べた。OT2のサービスも16がライブ稼働しているが、10月には25に増やし、2020年4月には完全なサービスとして提供する。

  • 製品ロードマップ。Release 16がCloud Editionとなる2020年4月は、OpenTextにとって節目となりそうだ

これらの新機能を紹介した後、Barrenechea氏は情報からメリットを得るためには「情報スプロール現象」に対する対策が必要だと語る。

ここ数年のクラウドブームで部門間で独自にSaaSを導入した結果、情報が管理できなくなる状況になる企業が多い。これが情報のスプロール現象を招いており、「CIOが再び活躍すべき」とBarrenechea氏は述べる。

そして、「OpenTextのクラウドプラットフォームはアクセス管理ができ、中央のデータベースにさまざまなシステムへのマッピングを1万種類以上揃える。これを活用して、それぞれに合わせた方法で接続が可能だ」という。この領域では2018年12月、API・データ連携技術のLiaison Technologiesを買収しており、今後、OpenTextの技術への統合を進めていく模様だ。

  • OpenTextを利用することで情報の管理できない増加(スプロール現象)に対応できるという。

  • 「デモではCore Signを使ってWord文書に電子署名する様子を見せた」