IDC Japanは7月3日、コンテナインフラストラクチャソフトウェアのDockerコンテナとコンテナオーケストレーションツールのKubernetesの導入状況に関する調査結果を発表した。これによると、コンテナを本番環境で使用している企業は9.2%と2018年調査からの上昇率は1.3ポイントにとどまり、また導入構築/テスト/検証段階にある企業は16.7%で2018年調査からわずかな上昇となった。

  • Dockerコンテナの導入状況に関するユーザー調査結果

    Dockerコンテナの導入状況に関するユーザー調査結果

同調査は、同社が2019年4月に国内の企業及び組織468社に対してアンケート形式で実施。コンテナ導入の伸び率が小さかった理由として、Dockerコンテナは導入構築やテスト/検証に時間を要し、本番運用になかなか移れていない状況だという。

また、使用を計画、検討している企業と情報収集や調査を行っている企業の割合が2018年調査からやや低下。この傾向は導入意向のある企業とそうでない企業がはっきりしてきており、具体的な導入に向けた検討や調査の段階に移りつつあると指摘。

コンテナを本番環境で使用している企業と導入構築/テスト/検証段階にある企業を対象に、Dockerコンテナ環境で使用しているコンテナオーケストレーションツールについて調査した結果、45.5%の企業がKubernetesを使用し、次いでベンダーディストリビューションであるRed Hat OpenShift Container Platform(19.8%)だった。

Red Hat OpenShiftでは、コンテナオーケストレーションツールとしてKubernetesを採用しているため、Kubernetesがコンテナオーケストレーションのデファクトスタンダードになっている。

コンテナを導入している環境について調査したところ、オンプレミスが45.5%、IaaS(Infrastructure as a Service)が31.4%、PaaS(Platform as a Service)/CaaS(Container as a Service)が23.1%となり、IaaSとPaaS/CaaSを合わせると54.5%となり、クラウドサービス上に導入している割合が半数を超えた。

コンテナの導入促進要因について調査すると「インフラの使用効率向上とコスト削減」が34.7%で最も高い回答率だった。コンテナは仮想マシンに比べて軽量で集約率が高く、CPUやメモリなどのインフラリソースの使用効率が向上し、コスト削減にもつながるという。

2番目に回答率が高かったのは「開発者の生産性の向上」で30.6%だった。アプリケーションの開発者が容易に開発環境やテスト環境を用意することができたり、開発環境の差異をなくすことができたりするなど、コンテナは開発者にとって大きなメリットがあるという。

3番目以降は「アプリケーションの信頼性/可用性の向上」(28.1%)、「アプリケーション運用の効率向上とコスト削減」(28.1%)、「アプリケーション開発/リリーススピードの向上」(27.3%)と続き、アプリケーションに関する効果がコンテナの導入を促進する主な要因になっている。

同社のソフトウェア&セキュリティ リサーチマネージャーである入谷光浩氏は「コンテナはアプリケーション開発の生産性やアプリケーション能力を大きく向上させる技術であり、クラウドネイティブアプリケーションには必須である。しかし、現在の国内市場において、コンテナはまだキャズムを超えられていない。一方で、CaaSのようなコンテナとKubernetesの導入が容易なコンテナ向けクラウドサービスや、ベンダーとSIerのコンテナ導入支援サービスが充実してきており、導入に苦労している企業やPoCで止まっている企業にとって強い味方になるであろう。来年までにはキャズムを超え、コンテナの本格的な普及期に入っていくであろう」と述べている。