ソニーのウォークマン第1号機「TPS-L2」の発売40周年を記念したイベント「#009 WALKMAN IN THE PARK」が、7月1日から9月1日までの2カ月間、銀座・数寄屋橋交差点の銀座ソニーパークにて開催されます。歴代ウォークマンを体感できるという触れ込みですが、はたして? メディア向け内覧会でのインプレッションをお伝えします。
40代以降の層は持ち歩いてイヤホンで聴くスタイルの再生機を見かけると、ついあの名前を口にしてしまいます。そう、「ウォークマン」。近ごろはスマートフォンにお株を奪われた感もありますが、徹底的に音質を追求した「NW-WM1Z」、Bluetoothレシーバー機能など新基軸を取り入れた「NW-A50」など、いまなお元祖・ポータブルオーディオプレイヤーとしての意地を感じさせる製品を送り出しています。
以前、ソニービル時代に800台超のウォークマンを展示したイベント「It's a SONY展」を実施したことがあるそうですが、今回の「#009 WALKMAN IN THE PARK」は体験型。「単なる回顧展にするつもりはありません」(ソニー企業株式会社 社長/チーフブランディングオフィサー 永野大輔氏)とのことで、眺めるだけで終わらないさまざまな工夫がなされています。
その目玉が「My Story, My Walkman」。ウォークマンが誕生した1979年から現在までの各年に著名人40名を割り当て、当時のエピソードや音楽に関連した思い出を綴ってもらい、各年を代表するウォークマン1機とともに、地下1階から3階の体験型スペースに展示するという企画です。
たとえば、1979年はブックデザイナーの祖父江慎さん。1986年は最近「宮本から君へ」がドラマ化された漫画家の新井英樹さん。1991年は音楽活動でも知られる笑い芸人・くっきーさん。同じ「ジェニーハイ」メンバーの川谷絵音さんは2010年担当です。どちらかといえばミュージシャンなどアーティスト寄りの人選ですが、2016年はプロレスラーの棚橋弘至さんですから、アートやエンターテインメントなど各分野から偏りなくチョイスされたというところでしょうか。
各階では、スタンプラリーも実施されています。ウォークマンのスタンプをすべて集めた人には、SONY製カセットテープのような外観のブックレットがもれなくプレゼントされるとのこと。1号機の「TPS-L2」から2018年発売の現行モデル「A50」まで、歴代製品のうち83モデルが写真付きで解説されています。なくなり次第配布終了となるそうですから、早めの来場をおすすめします。
ほかにも、アーティストによってカスタマイズが施されたウォークマンの作品展「Custom Walkman」、数量限定・記念オリジナルTシャツの販売も行われます。1Fのテナント「トラヤカフェ・あんスタンド」でも、イベントとのコラボ商品として1日20食限定のかき氷(702円/税込)も販売されます。
この「#009 WALKMAN IN THE PARK」は回顧展ではないそうですが、80年代前半のウォークマンが一番熱かった時期をリアルタイムに経験した世代としては、当時の思い出抜きにウォークマンという製品を見ることができません。それに、実際に聴くことができるウォークマンは40台、よほどコアなファンでないかぎりすべての製品に対し均一な“思い”はないはずです。
というわけで、筆者の独断で1980年代のウォークマンを5台、ピックアップ。それぞれの時代背景とともに解説してみます。キャプションにも注目してください!
1981年 WM-2
当時は田舎の小学生ですから、世間で大ヒット中ということは知っていても実物を見たことがない……というレベルで、単に憧れの存在でした。ちょうど洋楽を聴き始めた時期で、ラジオではノーランズがよく流れていた記憶があります。しかし、ラジオでたまたま聴いたキング・クリムゾン(初来日直前で特番が組まれていたらしい)が気に入ってしまい、以来プログレにのめり込み……繰り返し聴くためにウォークマンが欲しかったのです。
1982年 WM-DD
実は、マイファーストソニーがこの製品。当時はレンタルレコードなどという業態は存在せず、FMラジオでプログレ番組を見つけると録音して聴く、という日々でした。ピンク・フロイドのアルバムをスピーカーで聴くと家族に怪訝な顔をされるので、ヘッドホン中心に聴くようになってきたのもこの頃です。ウォークマン初のディスクドライブ搭載機で、友人に聴かせてもらった従来モデル(ベルトドライブ方式)に比べて音のヨレが少ない! などと喜んでいた記憶もあります。
1983年 WM-F5
この年の代表モデルとして選ばれていたのが、防水モデルのWM-F5。地上に設置された約2.5mのオブジェがこれですね。FMラジオを聴けることもあり、かなりの人気モデルだったと記憶しています。しかし、個人的に印象深いのは同じ年に発売された「WM-20」(DDを友人に売った代金に足して購入)。カセットケースサイズが売りですが、聴くときには1cmほどスライドさせるという仕組みでした。単三電池×1本で動くのに、カセットケースと同じサイズとはどうして? と不思議に思いましたが、店頭で構造を見て納得したものです。
1984年 D-50
この製品にも驚かされました。当初はディスクマンという名称で、カセットテープのウォークマンとは別モノという認識でしたが、後日「CDウォークマン」に変更されていたのですね。オーディオCD自体が発売されたばかり(1983年)なのに、もうこんな小型製品が出てきた! という世評だったように記憶しています。オーディオ好きな友人が購入したと聞き、CDプレイヤーを持っていないのに買ったピンク・フロイド「狂気」のCDを持ち自宅に押しかけたのはつい昨日のことのようです。
そんなD-50ですが、この展示ではもうひとつ見どころが(聴きどころ?)。試聴用にセットされているCDが例のヤツなんです。2曲目にスキップすれば、誰でもわかるのではないでしょうか? プログレ少年も、このアルバムは繰り返し聴いたものです。
1986年 WM-102
購入には至りませんでしたが、心揺さぶられたのがこのモデル。カセットケースサイズでオートリバース、薄型充電池の採用で小型軽量というコンセプトは、前年に発売されたWM-101から引き継がれたもの。
当時はイタリアやフランスのプログレを中心に聴いていましたが、正直に趣味を話すとドン引きされるので、女の子ウケを考えてAORに手を出し始めた時期でもあります。しかし、AORは優秀録音盤が多いこともあって、CDと聴き比べると音質差が気になるのですよね。今回のイベントに展示はありませんが、音質差を埋めるべくイコライザー搭載の兄弟モデル「WM-104」が欲しかったことをよく覚えています。