こうしたコミュニケーションに対して、世の中の反響はどうだったのだろうか。北原氏によると、テレビCMを公開してから消費者からは様々な意見や反響が寄せられ、日常的な家事がもつ潜在的な課題の大きさに改めて気が付かされたという。

「“テレビCMを見て気が付かされたことが多かった”、“テレビCMを観たことでパートナーの気持ちがわかった”という意見が多く寄せられ、女性はもちろん男性の共感も多かったです」(北原氏)

一方で、家事に対する価値観や日常の課題はひとつではなく、人によって意見や考え方、家事像の受け止め方は大きく異なる。そうした中で、MagicaのCMに対して消費者からは批判的な意見もあったそうだ。

「“女性が食器洗いをするものだという前提に立っているのではないか”、“食器洗いはそんなに簡単なことではない”、“自分(男性)はもっと家事を頑張っている”と、本当にリアルな声が寄せられました。家事の在り方というテーマに改めて関心を持ち、議論していただくきっかけを生み出せたことは大きな成果だったのではないかと考えます」(北原氏)

家事だけではなく、私たちが暮らす日常には当たり前になりすぎて議論のテーマにもならないが、実は大きな課題が眠っているというシーンは少なくない。そうした中において、Magicaのコミュニケーションは、食器洗いという何気ない日常に潜む夫婦間の課題を顕在化し、消費者の関心を引き出しながら製品が持つソリューションを提案するというアプローチをとった。ひとつのテレビCMから日常生活の課題をテーマに消費者の中で議論が生まれるというケースは非常に珍しい。製品のイメージや効果効能を強く打ち出し、ブランド認知やブランド高感度を高めるという従来のブランドコミュニケーションとは一線を画した手法で、より消費者の実態に寄り添ったコミュニケーションだと言えるのではないだろうか。

最後に、北原氏に今後の消費財マーケティングに求められる視点について語ってもらった。

「これからは理想を語るだけではなく理想と現実との差をしっかりとみていくべきであると思います。家事はストレスの溜まる嫌なこと、それは事実です。その前提に立ち、今までの生活習慣をリデザインすることで、より良い生活を送れるような提案をしていきたいと考えています。商品はひとつ200円足らずで購入できる小さなものですが、それが生活の中に潜んでいるちょっとしたストレスを解消し、日常の行動や価値観を変えるきっかけになるのです。家事という“必ずやらなければならないもの”を、商品を通じて少しでもポジティブにしていきたいのです」(北原氏)

  • 「家事のストレスを、商品を通じて少しでもポジティブにできれば」と北原氏