RPAを導入したものの、ロボが正常に動作しなかったり、想定したほど効果が出なかったり、個別最適になってしまうことで改善すべきところまで手を付けられていなかったり、どれが使えるロボなのかがわからなくなってしまったり……など、導入後にさまざまな課題が発生してしまうケースも多く見られる。

関野氏は、特に典型的なRPA導入後の落とし穴について下記の5つを挙げる。

1. 見積もり間違い、RPAが解決すべきものではなかった
2. 業務が属人化しておりロボ化困難、業務が個別最適になっていてロボが大量に必要
3. 個別最適なロボを大量に導入した結果、効率化してるかどうかがわからない
4. 使いづらい、すぐ止まる、動かない
5. やりっぱなし、保守が面倒

これらの状況を打開するための一番のポイントとして関野氏は「啓蒙活動によるリテラシー向上が導入中から導入後までじわじわ効いてくる」と、まずはRPAへの正確な理解が必要であることを強調。そのうえで、アセスメントや業務整理を適切に行うこと、そして現場で作る場合には特に横断的視点を見失わないようにすることが重要であるとした。

「ただやみくもにRPA導入するのではなく、どこをどうRPA化すべきかという目利きと、RPAを前提としたデータの流れを作ることが大切。そのうえで、ガイドラインの整備やリテラシー向上でガバナンスを効かせ、ロボを守り育てていくことも考えていく必要がある」(関野氏)

  • RPA導入後の落とし穴とその打開策

DXを実現するには、ツール導入自体を目的にしない

講演の後半で関野氏はDXに対してRPAが果たす役割についても説明した。DXによってビジネスそのものがデータを中心に回っていくようシフトしてきており、データプラットフォームの重要性は日々増してきている。しかし関野氏は「ツールやプラットフォームがあればよいというわけではない」と忠告する。

「ツールやプラットフォームを使いこなすには、業務変革に関するリテラシーや対応力が必要。ガラケーからスマートフォンへの変化のように、やれることや世界観が大きく変わってきている。従来は1つの業務の作業者であった人でも、より広い範囲を見て業務最適化を考え、検索性や関連性を高めてデータを活用していくことではじめてDXは実現できる」(関野氏)

RPA導入もDXを実現する手段の1つとなるだろう。その際に後悔しないための心構えとして関野氏は「ばんそうこうロボ」と「とりあえず業務ロボ」をつくらないことがポイントであるとする。

「ばんそうこうロボ」とは、異なるシステムを横断してあちこちにロボがあるような状態。絆創膏ロボをつくってしまうと、全体のフローを検討しようとしたときに費用対効果の説明ができなかったり、担当者がいなくなることで動かせなくなったり、本当にやりたかったことができなくなってしまったりなどの後悔が生まれやすいという。

また、目の前の業務に対して当面必要な数値だけ出す「とりあえず業務ロボ」では、毎回の業務をこなすことはできても、データがアセットとして保有されず、検索・閲覧したり未来予測したりすることに利用できなくなる状態に陥ってしまう。

「これらのケースでは、やり直したいと思っても再構築すらできず、成長の足かせにになってしまう」と関野氏。ツール導入自体を目的とするのではなく、人、業務、そして複数のツールを連携することで何を実現したいかを考え、データの利活用目的を設定することの重要性を強調した。

  • 「ばんそうこうロボ」と「とりあえず業務ロボ」