カメラを手にするとEOSだと感じられる

――EOS Rのデザインを検討するにあたっての苦労話などはありますか?

松浦氏:EOS Rは、開発当初から「高画質の観点からレンズは大きくしたい」「操作性も高めたい」「けれどもカメラ本体は小さくする」という目標を定めていました。グリップ内のバッテリーを傾けて収納するなどの工夫で、ボディの巨大化を防ぎつつグリップのホールド性を高めました。

――僕はふだんEOSを使っているのですが、EOS Rはこれだけ構造が違うのに、いざカメラを手にするとその感触から「これはEOSだ!」って分かるんです。この感覚のもとになっているのは何なんでしょうか?

松浦氏:いくつか細かいポイントはありますが、レリーズボタンとメイン電子ダイヤルのポジションが大きいかなと思います。あとは、グリップの中指の上にあるひさしのような部分を深めに設計しているところでしょうか。持ってみて「EOSだね」と感じていただけるのは開発陣にとってすごい褒め言葉で、そこは絶対に変えられないというか守ろうとした部分ですね。

  • デザイン検討のために作成したモックアップ

――あと、デザインの知られざる苦労話などありましたら。

松浦氏:EOS Rの開発にあたって、我々デザイナーが最初に何を考えたかというと、先ほど話に出た「EOSである」ことがまずありました。それでいて、新システムなので、進化し続けている姿を見せなければなりません。

従来の一眼レフEOSは、レンズを装着するとレンズ交換式カメラの要であるマウントが隠れてしまいます。そこで、新システムのRFシステムでは、レンズマウントをしっかり表現したいと考えました。カメラ本体とレンズに共通した金属のシリンダーの意匠を設け、レンズ装着時の一体感を演出するとともに、新システムであることを見た目で訴求するようにしました。

機能的な効果も持たせており、上から見ると指の逃げ場になっていたり、レンズ取り外しボタンを押す際にレンズの角がじゃまにならず押しやすくなっています。この点は、カメラとレンズのデザインを考えるうえで重要視したポイントですね。

サブ電子ダイヤルは復活するのか

――今後、EOS Rよりもボディが大きい高性能モデルが発売されるとしたら、EOS Rで省かれた背面のサブ電子ダイヤルが復活する可能性はありますか?

山澤氏:今回のEOS Rでは新しい操作部材を搭載し、ユーザーのみなさんからさまざまな声をいただきました。それらの要望とカメラの性格などのバランスを考え、一眼レフEOSのようなサブ電子ダイヤルを搭載する可能性もあれば、まったく新しい部材を搭載する可能性もあります。そのカメラに最適で、しかもユーザーの要望にも応えられるデバイスを提供できればと考えています。

高野氏:細かい部分なのですが、RFレンズの外観はユーザーが必要な情報だけを残すという思想にし、EFレンズよりもシンプルに仕上げています。RFレンズは多くの新技術を搭載していますが、それらを記載すると一番必要な焦点距離が分かりづらくなってしまいます。そこで、必要な情報をひと目で識別しやすいデザインにしました。

  • 総合デザインセンター 専任主任 高野盛司郎氏

――本当だ、EFレンズにあった「IMAGE STABILIZER」や「ULTRASONIC」といった技術ロゴがありませんね。というか、F値の表記もないのですか! 鏡筒にあるのは、RF50mm F1.2 L USMのレンズであれば「50」だけなんですね。最後に、EOS Rでアピールしておきたい点はありますか?

山澤氏:EOSシリーズでは初めて、内蔵バッテリーがUSBで充電ができるようになりました。残念ながらUSB給電しながらの撮影はできませんが、バッテリーグリップ内のバッテリーもUSB充電できますので、モバイルバッテリーがあればバッテリー切れの心配を減らせます。

山澤氏:iPad用アプリ「Digital Photo Professional Express」を使うと、カメラの電源がオフの状態でもRAW画像をiPadに転送し、iPad上でRAW現像できます。カメラをカメラバッグに入れたまま、電車の移動中や喫茶店などで手軽に編集作業ができるので、ぜひ使っていただきたいです。

  • イメージコミュニケーション事業本部 ICB統括第二開発センター 大谷内貴彦氏

――ありがとうございました。