日立製作所と博報堂は6日、両社が行った「第四回 ビッグデータで取り扱う生活者情報に関する意識調査」のレポートを発表した。

ビッグデータやAIの活用が進み、世界的にもプライバシーへの取り組みが注視されるなか、AIやIoTの利活用のため2013年から継続的に両社が行っている。今回の調査対象は2019年3月1日から3日にかけてインターネットを用いた全国20代から60代の男女。なお意識調査では、個人情報保護法での規定にある特定の個人を識別できる情報に限らず、商品購入履歴やGPS位置情報などを広く「パーソナルデータ」と定義している。

期待と不安の全体的な傾向は変わらないが、今回の調査では"年代が若いほど不安が少なく、年代が高いほど不安が大きい"という傾向が表れているほか、AIのプロファイリング(※個人的側面を予測するためのパーソナルデータの自動処理)については多くの生活者が「病気予防」、「安全運転アシスト」に注目している。夢が広がるAIだが、企業はパーソナルデータにどう取り組むべきか。プライバシー保護の何を徹底することで不安が低減するかの調査結果も発表している。当然、サービス提供側となる企業が取り組みを進めることで不安が低減していくことがうかがえる。

  • 「企業等が以下のようなプライバシー保護策を徹底している場合、あなたご自身のパーソナルデータが利用されることについて、不安はどの程度低減されますか」に対する回答結果

    「企業等が以下のようなプライバシー保護策を徹底している場合、あなたご自身のパーソナルデータが利用されることについて、不安はどの程度低減されますか」に対する回答結果。両社資料より

今回の調査結果のポイントは以下の通り。

●パーソナルデータの利活用に対する生活者の期待と不安は、依然として過半数が不安を感じるものの、適切な対策の徹底で不安は低減可能。

・パーソナルデータ利活用に対する期待と不安の全体的な傾向は、前回調査と変わらず。年代別では、“年代が若いほど不安が少なく、年代が高いほど不安が大きい”という傾向が初めて明確に。
・不安要因のトップ2は、前回調査と変わらず「拒否権がないこと」と「活用目的の説明・公表が不十分」。
・「第三者提供の制限」「収集制限」「第三者による企業監査」の徹底で不安が軽減されると6割近くが回答。

●AI(人工知能)の活用には、多くの生活者が期待。推進にあたっては、企業の適切なルール遵守が不可欠。

・特に、AIによるプロファイリングでは、「病気予防」「安全運転アシスト」などに期待。
・一方、AIの自動処理による判断について、その根拠が分からないという“AIならではの問題”に起因するプライバシー上の不安も浮上。
・AIを利用する企業に求められているのは、「人や環境に対する安全性の担保」、「使用データの適切な管理」、「AIに起因する問題の責任の所在を明らかにすること」などの原則の遵守。

●パーソナルデータ利活用への関心・知識は上昇傾向。ビッグデータへの関わりや親しみ度合いによって意識差も。

・パーソナルデータ利活用への関心・知識レベルは前回に比べ全体的に底上げ。
・ビッグデータを利活用したサービスの開発に携わっていた経験や、実際にそのサービスを利用したことがあるなど、ビッグデータへの関わりや親しみがある生活者ほど、データ利活用への期待や関心・知識が高い傾向。
・プライバシー保護について、「企業等による対策を期待する生活者」と「自衛傾向の強い生活者」の2つのタイプが存在し、それぞれが求める対策への対応が必要。

両社は2014年からプライバシーへの取り組みを開始しており、日立では情報・通信システム事業関連の部門にプライバシー保護対策を統括する「パーソナルデータ責任者」、リスク評価や対応策の立案を支援する「プライバシー保護諮問委員会」を設置。博報堂DYグループは、個人データを非個人情報に加工した上で統合するデータ活用技術「k-統計化&データフュージョン」を開発している。