パナソニックが働き方改革を支援する新サービスを発表した。ノートPCのフロントカメラを用いて、働く人の「気持ち」を見える化できるという。

働き方改革支援サービスに「気持ちの見える化」を追加

日本企業の働き方改革が本格化する中、単に労働時間を減らすだけでなく「会社の成長」との両立を訴えるのがパナソニックだ。その中で、独自の技術で「気持ち」を見える化する狙いはどこにあるのだろうか。

働き方改革では「会社の成長」との両立が重要

2019年4月、時間外労働の上限規制などを含む「働き方改革関連法」が大企業向けに施行され、中小企業でも2020年4月から始まるなど、働き方改革がビジネスの現場に本格導入されつつある。

さらに2020年の東京五輪では、首都圏で交通機関の混雑が予想される。そこに向けて、在宅勤務やテレワークなど、働く場所を拘束しないワークスタイルに向けた動きが加速するというのがパナソニックの見立てだ。

そこで同社は2018年、パソコンの使用状況を見える化するサービスを発表した。「1日の半分以上をメールの送受信に使っていた」など仕事時間の内訳を可視化することで、時間配分の最適化や余った時間での価値創造を狙いとする。すでに1万3000台のパソコンで稼働しているという。

働いた時間を見える化する「しごとコンパス」。「申告と実績」の差も明らかになる

4月に追加した新機能では、PCの実使用時間を各企業の勤怠管理システムと比べることで、申告と実績の差異が分かるようになった。これまで勤務時間とは認められにくかったグレーな作業時間をカウントするのが狙いだ。

パナソニック社内での導入事例

こうしたツールを投入する狙いとして、単に労働時間や残業時間を短縮して従業員の健康を守るだけでなく、働き方改革を成功させるには「会社の成長」を両立させることが重要であるとパナソニックは主張している。

「会社の成長」との両立を主張する

しかし、労働時間を短くすればその分だけ業績が落ちるのではないか、との懸念を持つ企業はまだまだ多い。そこで技術による裏付けに基づき、「働き方改革を導入すれば、会社は成長できる」という道筋を示すことが、普及に向けた近道というわけだ。

カメラを用いた非接触センシング技術を活用

今回、パナソニックが新サービスとして発表した「きもちスキャン」は、従来の働き方改革支援サービスに追加できる月額制のオプションサービスだ。

具体的には、パナソニックのノートPC「Let's note」のフロントカメラで撮影した顔の映像を、独自のバイタルセンシング技術で解析することで、従業員の「元気度」を見える化するサービスになる。

フロントカメラで顔をスキャン。測定は2分程度で終わる

常にカメラに顔を監視されるわけではなく、測定は2分程度で終わる。外光など環境に左右される恐れはあり、マスクなどは外しておく必要がある。Let's noteの対象機種は限られるが、今後拡大していくという。

仕組みはこうだ。血管の容量変化から脈拍レベルを推定する技術を応用し、カメラの映像を独自技術でノイズ処理し、脈拍レベルを取り出す。毎日、同じくらいの時間に測定した記録を蓄積していくことで、気持ちの変化が分かるようになるという。

顔の映像をノイズ処理し、活動量を推定する

発表会には日本疲労学会の小泉淳一氏が登壇。電極を用いて従業員の自律神経活動レベルを測定し、疲労を推計した事例を示し、「これを非接触で測定できるのは大きな進歩だ」と評価した。

企業内での活用として、部門内で10人以上が導入している場合、管理職は個人を特定しない形で従業員のデータを閲覧できる。部門内での活動量の変化を見ていくことで、有給の取得を促すなどの対策ができるという。

技術的な背景には、パナソニック独自の「非接触バイタルセンシング技術」がある。同社はこれまで国内外の展示会などで積極的にアピールしており、専用のセンサーではなく一般的なカメラで人間の感情を把握できれば、オフィスだけでなくスポーツや医療分野など応用範囲は広い。

非接触バイタルセンシング技術。CES 2019のパナソニックブースにも出展した

働き方改革の本格化に伴い、労働時間の短縮や生産性の向上をうたうさまざまな製品やサービスが登場している。その中でパナソニックの強みは、独自のセンシング技術によりテクノロジーの力で働き方改革を後押しできることにありそうだ。

(山口健太)