IDC Japanは5月27日、国内サーバ市場のシステムタイプ別予測を発表した。これによると、2019年の国内サーバ市場の支出額は2018年比2.1%増の5536億円とプラス成長だったが、2018年から2023年における年平均成長率(CAGR)は-0.4%で推移し、2023年の市場規模は5301億円になるという。
同社はシステムタイプを「SoR(Systems of Record)」「SoE(Systems of Engagement)」「SoI(Systems of Insight)」「システム基盤プラットフォーム」「機器/装置制御システム」の5つに分類しており、このうちSoR、SoEとSoIを合算した「SoE/SoI」、システム基盤プラットフォームと機器/装置制御システムを合算した「Other」の3分野について、サーバ市場の予測値を提供している。
2019年の同市場におけるシステムタイプ別の支出額を見ると、SoRが2018年比1.4%減の2061億円、SoE/SoIが同1.2%減の608億円、Otherが同5.6%増の2867億万円の見込みとなっている。また、2023年のシステムタイプ別支出額は、SoRが1876億円でCAGRは-2.1%、SoE/SoIが648億円で同1.0%、Otherが2778億円で同0.5%と予測。
SoR向け出荷が低迷する一方で、SoE/SoIおよびOtherシステムタイプ向け出荷は堅調に推移するという。SoRは、主にビジネストランザクションの記録に関わるシステムであり、国内では生産年齢人口の減少が続き、人や企業の活動によって発生するビジネストランザクションが今後大きく増加するとは考えにくい状況にあると指摘している。
SoEは顧客エンゲージメントを強化するためのシステムであり、SoIはデータの分析を通して洞察(インサイト)を得るためのシステム。SoE/SoIは、国内における生産年齢人口減少の影響をSoRほどは受けない見込みとなり、理由としては多様なデータを総合的に分析し、新たな洞察を得ようとすることで新たな需要が生じることを挙げている。
Otherは他のシステムタイプと同様に生産年齢人口の減少といった負の影響を受けるが、政府系研究機関や大学向けの科学技術計算用途での出荷や、IoT(Internet of Things)の普及に伴うプラス要因によって底堅く推移するという。
システムタイプ別に同市場を見ると、成長余力があるのはSoE/SoI向けサーバ市場であり、配備モデル別ではシステムタイプに関わらず、Traditional(非クラウド)からパブリッククラウドやプライベートクラウドへのシフトが進行している。
SoE/SoI向けでは、ハードウェアからミドルウェア、アプリケーション、さらにはクラウドサービスなどを総合的に提供することが訴求ポイントになる顧客層と、エコシステムを通してサーバを提供する方が適している顧客層とに分かれると分析している。
総合ITベンダーを標榜してきたベンダーが、成熟した国内市場で両方の顧客層をターゲットとする場合、自社の提供する製品/サービスと、エコシステムの他の参加者が提供するソリューションが競合するといった、相容れない部分があるという。
同社のエンタープライズインフラストラクチャのグループマネージャーである福冨里志氏は、「この点に以前よりも踏み込んだ戦略と実効性のある戦略遂行上の仕組み作りがサーバベンダーには求められている」と述べている。