ソフトバンクグループは5月9日、2019年3月期決算を発表。売上高は9兆6,022億円(前年同期比5%増)でした。しかし、5月9日の決算説明会に登壇したソフトバンクグループ代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏は、あまり細かい数字に興味がない様子。当期純利益についても「4年連続で1兆円を超える目処が立っています」としつつ、連結業績について「どうでもいい数字」「誤差に過ぎない」と表情ひとつ変えず、まったく関心を示しません。

  • ソフトバンクグループ代表取締役会長 兼 社長の孫正義氏

ソフトバンクグループは本当の収穫期に

孫氏が「ソフトバンクグループの経営を端的に表わしているのがこちらです」と紹介したのは、上下動を激しく繰り返しながらも、ここ数年は右肩に上がるグラフでした。ソフトバンクグループの株主価値を示したもので、変動はインターネットでやり取りされるトラフィック量に起因するとのこと。孫氏は、インターネットの急成長とともに、ソフトバンクグループの株主価値が上がってきたと結論づけます。

  • ソフトバンクグループの株主価値を示したグラフを紹介(横軸は左が1995年、右が2019年)

連結業績でひときわ目をひいたのは、営業利益2兆3,539億円(同81%増)という数字です。前年同期比で81%という伸び率は、尋常ではありません。この圧倒的な伸びに貢献しているのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)でした。2017年に発足した超巨大ファンドで、OneWeb、WeWork、Didi、Grab、Guardant Healthといったグローバルのユニコーン企業82社を投資対象としています。

  • ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、AIに特化したユニコーン企業82社が投資対象

交通、医療、金融、不動産などさまざまな業界で展開するこれら82社ですが、AIを活用した新たなサービスで、世界を席巻しつつあるという一点で共通しています。「かつてインターネットは広告業と小売業を革新しましたが、AIは残りすべての産業を革新していきます」と孫氏。続けて近日、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2を立ち上げるとの発表もありました。

  • ソフトバンク・ビジョン・ファンド2により、さらに強力なAI起業家集団が誕生する?

孫氏は、「これまでインターネットは知識として使われてきましたが、今後インターネットは、インテリジェンスをともなうAIの知恵として、ますます活用されるでしょう」と力説。先の例に照らし合わせて、ソフトバンクグループの株主価値は今後、ますます上がると言いたげです。

「これからいよいよ、ソフトバンクグループが活躍する時代がやってきます。そのエコシステムがやっと構築できたところです。私の髪の毛は薄くなりましたが、情熱は燃えたぎっています。これなら髪の毛も生えてきそう」と冗談交じりで饒舌な孫氏。ついに来たぞ、私の時代が来た、と笑顔を見せ、「これから本当の意味での収穫期に入ります。株主の方々には、春を存分に楽しんでいただければ」と、最後は言葉に力を込めていました。

日本のライドシェアを憂う

質疑応答では、孫氏が記者団の質問に対応しました。なかでも、世界の潮流から取り残されつつある日本の現状を憂いた場面が印象的でした。

グローバルでは現在、ライドシェア、自動運転といったAIを使った新しいサービスが盛り上がりつつあります。しかし国内では、まだ規制が厳しいのが現状。

このことについてコメントを求められると、孫氏は「規制は進化を遅らせてしまう、というのが私の一貫した考えです。日本の自動車産業はグローバルでも大きな存在で、世界に誇れる。ですが日本の自動車産業がグローバル企業に負けてしまう危険性があるんです。自動運転、MaaSといったものに業態が進化できなかったら、根底からやられてしまう。小さな正義と大きな正義ではありませんが、最後に守るべきものがどこにあるのか。消費者はなにを求めているのか。政治家のみなさん、規制当局のみなさんは、世界でなにが起きているのか、目を見開いて判断いただきたい」と訴えます。

もっとも、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは日本国内だけでなく、世界で成長している企業に投資するという方針。「日本国内で規制緩和されようがされまいが、ソフトバンクグループの経営からみれば誤差の程度です。でも日本のため、日本の消費者のために悲しんでいるんです」と、孫氏は嘆いているようにも見えました。

ソフトバンクグループで次なるビジョン・ファンドの詳細は、近日発表予定。ひとまず成功といえそうなソフトバンク・ビジョン・ファンドですが、2回目のビジョン・ファンドはどうなるのでしょう。注目です。