NTTドコモは4月15日、従来よりも割安をうたう新携帯料金プランを発表した。新プランは5月22日より予約申し込みを受け付け、6月1日より開始する。

NTTドコモ 代表取締役社長 吉澤和弘氏

同社は兼ねてより、「2019年第1四半期に、携帯料金を2~4割下げる新プランを発表・提供開始する」と予告していたため、今回の発表内容は携帯業界関係者にとって非常に注目の高いものであった。

実際に登場したのは「ギガホ」「ギガライト」という2つの新プラン。どのようなもので、さらには今後の携帯業界にどのような影響を与えるのか。

「シンプルでおトク」な新プラン

新プランは、同社が掲げる「従来よりもシンプルでおトク」というメッセージを強く意識したものであった。これまでの料金プランが複雑で理解できないという声に応えるべく、わかりやすいもの目指した工夫がみられる。

従来の同社のプランはやはり複雑だった。契約者は1か月に使用するデータ通信量に合わせて「パケットプラン」を選択し、さらには電話の使用頻度に応じて「基本プラン」を選択する。さらにパケットパックを家族で使う場合や、月々サポートの適用まで考慮すると、組み合わせは膨大になる。

それが今回の新プランでは、「データ通信量がいくらあっても足りない」という人は「ギガホ」に、「SNSのチェックやLINEを使う程度」という人は「ギガライト」に、と2つのプランから選ぶだけでよい。

新プランは、現行の「基本プラン」「パケットパック」を一体化させ、よりシンプルなものにした

次に、「おトク」という点について。同社は新たに、「家族でドコモを使っている」ユーザー向けの「みんなドコモ割」を提供する。これは、家族がドコモユーザーであれば、その回線数に応じて「ギガホ」「ギガライト」の月額料金を割引をするというもので、2回線で500円、3回線で1,000円引きとなる。

「みんなドコモ割」で、家族・親族の人数に応じた割引が適応される

同社の利用者のうち、約7割が「家族で3回線以上」のユーザーであるということから、新プランの料金は「みんなドコモ割(3回線利用)」で1,000円を引いた額をベースに紹介された。

実質通信制限の「ギガホ」、割引幅の大きい「ギガライト」

新プランの1つである「ギガホ」では、毎月30GBのデータ通信を利用できる。「外出先でもよくスマホを使う」「動画視聴、SNSに画像や動画をアップすることが多い」「データ量を気にせず使いたい」といった利用者を想定して用意された。

「ギガホ」の特徴は、容量を超過して通信制限にかかったとしても、通信速度が1Mbpsにしか下がらない点だ。これは従来の128kbpsに比べると、約8倍の速度であり、この数字についてドコモの吉澤和弘 代表取締役社長は「ストレスなく動画視聴、SNS利用できるスピード」と説明する。通信制限に苦い思いをした経験のある人にとっては嬉しいサービスだ。

筆者自身、よくモバイルデータ通信で動画視聴をしてしまうために、データ容量を超過してしまって「Yahoo! 乗り換え案内」や「グーグルマップ」を使えなくなり、泣く泣く1,000円を払って1GBを購入する、ということがよくある。

1Mbpsという速度は、それらのアプリを利用するのに不足なく、推奨速度が0.5Mbpsの「Youtubeを標準画質で視聴する」のにも十分なスピードだ。

通信容量を超過しても、dTVやYoutubeなどの動画配信サービス、TwitterやFacebookなどのSNSなどをストレスなく利用できる

30GBのデータ通信量は、従来は月額8,480円で提供していたウルトラデータLLパックに相当するが、新プランでは月額6,980円で利用できる。さらにこの価格は「みんなドコモ割(3回線)」に当てはまるユーザーであれば5,980円にまで下げられるため、ドコモとしてはこのプランで「約3割値下げした」という認識だ。

30GBの大容量からなる「ギガホ」プラン。標準価格は月額6,980円だが、2019年9月30日までに「ギガホ」に加入すると、「ギガホ割」が適用され、最大6か月間、1000円引きの月額5,980円で利用できる

一方の「ギガライト」は、KDDI(au)の「ピタットプラン」に似た、毎月利用したデータ量により料金が段階的に適用されるプラン。「動画はあまり見ない」「メールやSNSのチェックが多い」「自宅ではWi-Fiを使っている」といった利用者を想定したもので、このプランでは最大4割値下げの恩恵を受けられるユーザーもいる。

こちらの標準価格は、月額2,980円から。ここでも「みんなドコモ割(3回線)」を当てはめると、1GB以下の利用の場合は月額1,980円となり、従来の同社の「ベーシックシェアパック」での最安値である3,480円と比べると、約4割安くなる計算だ。

利用したデータ量に応じて料金が積み上げられる「ギガライト」

新プランはキャリア各社の「値下げ合戦」のトリガーに?

吉澤社長は、このタイミングで今回の新プランを発表した理由について、「今年は新規の事業者(楽天)も参入し、市場環境の変化が予測される。それに先んじて競争力を強化するのが狙い。マーケットリーダーとして、早めに(携帯料金の値下げを)実行に移した」と説明した。

NTTドコモが他社に先駆けて新プランを発表したことで、今後他社はこのプランを意識した新たな料金体系を検討することになるだろう。また、今年の10月にサービスを開始する予定の楽天の動きも未知数だ。

2018年8月、菅官房長官の「携帯電話料金はあと4割値下げできる余地がある」という発言から始まったキャリア各社の奔走は、ここにきてさらに熱を帯びることとなる。ひとまずは、NTTドコモのプランを踏まえてのソフトバンク、KDDI(au)のの料金プランがどう変化するかが見どころだ。

(田中省伍)