昭和電工と日本アイ・ビー・エムは、AIを用いた特許情報の効率的なスクリーニングを行える「特許読解支援システム」を共同構築、7月から昭和電工全社での運用を開始することを10日発表した。
どんなに映像が進化してもソースとなる重要な資料は文書になる。法律や契約の世界は文字や文章で構築されている。2011年に米国テレビのクイズ番組でその力を示した"コグニティブ・コンピューティング"の様子はIBMのYouTubeの公式動画でも垣間見ることができる。
コグニティブ(cognitive)とは"認知"や"思考"を意味する英語で同社Webサイト"THINK Business"では、ワトソンは人を支援することを旨としたコグニティブ・コンピューティング・システムであることが掲載してあるが、認知や思考は、翻訳や読解など文書と大きく関わる分野でもある。
昭和電工と日本IBMが構築した「特許読解支援システム」は文書情報を横断的に集め、高度な分類や分析が可能なコグニティブ・テクノロジー「IBM Watson Explorer」をシステムのコアに採用。テキスト解析・探索機能、文書関連付け機能、特許に特化したアイデア抽出機能などを搭載、効率的な特許文書読解支援を提供する。
昭和電工は昨年12月に2019年からスタートさせる新中期経営計画「The TOP 2021」を発表。石油、化学、無機セグメントやアルミニウムにエレクトロニクスと広範な分野の事業を展開する同社は2019年に創立80周年の節目を迎えている。コーポレート・メッセージに"動かす"を掲げ、映画で使われるカチンコをシンボルのモチーフに選び、現行事業の飛躍と個性派事業となる新規事業創出を目指している。これらを支える事業基盤の強化にAI/IoTもひとつの項目に上がっている。
今回のシステムには昭和電工の技術領域である化学分野の特許文書特徴に合わせた関連付けを機能として付与し、特許の"請求項情報"を構造化。視覚的にも捉えやすい形で提供される情報は、技術者に効率的な読解をもたらすという。昭和電工社内で実施したトライアルでは、特許1件あたり約45%の短縮を実現している。
両者は、"知的財産を企業競争力として最大限活用するには、創出された知的財産を権利化するだけではなく、テーマ探索から事業化までのすべての段階において、知的財産の状況を正しく把握することが重要です"とシステム構築と導入の背景を述べている。