2019年3月26、27日の2日間、シンガポールのマリーナベイサンズ コンベンションセンターで開催された「Oracle Open World Asia 2019」の会場において、米オラクル オラクルアプリケーション製品開発担当EVPのスティーブ・ミランダ氏が、日本のメディアのインタビューに応じた。

  • 米オラクル オラクルアプリケーション製品開発担当EVP スティーブ・ミランダ氏

ミランダ氏は、「オラクルは、ビジネスアプリケーションのすべてがクラウド化することが最適であると考えている」などとした。ミランダ氏が、アジアのメディアの共同インタビューに応じるのは今回が初めてだ。

オラクルは、2018年3月から、自律型データベース(Oracle Autonomous Database)を投入し、これを重要な「マイルストーン」に位置づけた。一方、2019年3月19日(現地時間)に、米ラスベガスで開催した「MODERN BUSINESS EXPERIENCE」では、アプリケーションの強化を発表し、AIやブロックチェーンといった最新技術の実装を行った。これは、アプリケーションの進化という意味で、昨年の自律型データベースの「マイルストーン」に匹敵するものになるのか?

ミランダ:先週の発表は、ERPやCRM、HCMといったビジネスアプリケーションに対して、AIがパーペイシブに実装されているという点が重要であることに着目してほしい。そして、これからのビジネスアプリケーションは、機械学習によって変化していくことを示したものでもある。従来のアプリケーションは、データ入力をして、それを検証するといった使い方が中心であった。もちろん、こうした使い方はこれからも続くだろう。だが、機械学習を活用することで、アプリケーションからデータをプッシュして、そこから知見を得られるようになる。昨年から投入している自律型データベースは、データベースの進化という意味で、まさに、大きなマイルストーンになったのは確かだ。一方で、今回のビジネスアプリケーションへのAIの実装などは、アプリケーションの進化という点では、「マイルストーン」とまでは言えるものではないが、単なるアップグレードというには大きな進化である。その中間的な位置づけだろう。しかも、今後は、四半期ごとに機械学習が進化し、アップデートすることになる。そうした新たな動きがはじまることになる。機械学習が応用されるユースケースは幅広い、顧客も機械学習から学び、それによって、ビジネスプロセスを改善していくことになる。たとえば、人材採用の業務に関しては、AIを活用して最高の候補者をマッチングできるようにしている。バックオフィスでは、機械学習を活用して、監査をしたり、支払いの最適化ができるようになる。また、マーケティングにおいては、次の新たな行動に対する最適な提案を行うことができる。また、デジタルアシスタントやボットを活用することで、ユーザーインタフェースも大きく変化させることができる。対話型のユーザーインターフェースを活用して、CRM、HCM、ERPといったビジネスアプリケーションを利用できるようになる。

AIによる判断や、AIによって推奨される結論は、正しいといえるものなのか?

ミランダ:AIは、自ら判断した結果や推奨した結論を出すが、これが成功したか、失敗したかを、常に学習している。過去のデータや過去のリコメンデーションが正しかったかどうかを把握し、もし、過去のリコメンデーションが間違っていたら修正し、正しかったら、それを続ける。自ら修正することができ、それによって、進化をしていくことになる。

オラクルとしては、ビジネスアプリケーションのすべてをクラウド化することが理想だと考えているのか?

ミランダ:そう考えている。現在は、ほとんどのユーザーがハイブリッドクラウドを活用している。しかし、私たちは、多くの人が思っているよりも早く、100%クラウド化された世界が訪れると考えている。

日本の企業では、ERPをSaaS化するよりも、IaaSの上にERPを乗せるという傾向が強い。オラクルは、その状況をどう見ているのか?

ミランダ:ERPは、SaaSに移行すべきだというのが我々の基本的なメッセージである。私たちが、SaaSに投資しているのは、オンプレミスでは、顧客自らが競争力を発揮できないと考えているからである。SaaSは、オンプレミスよりも、アプリケーションを改善する速度が速く、導入効果の測定に対してもスピードも速い。オンプレミスは5年に一度のアップグレードであるが、それに対して、SaaSは四半期に1回のアップデートが行われている。企業の体質が保守的であれ、アグレッシブであれ、どんな企業でも、どんな国においても、スピードに対するプレッシャーは大きく、それが成長のドライバーになっている。しかし、スピードのプレッシャーに対応するにはSaaSしか選択肢がないのが実態である。そして、ERPは、破壊をするためには不可欠なツールになっている。すでに多くの企業が、SaaSを利用している。すでに、SaaSのメリットはこれらの企業によって実証されており、SaaSの導入を恐れる必要はない。それを理解し、俊敏に動かなくてはならない。

Oracle Open World Asia 2019の基調講演で、ミランダEVPは、「なぜ、クラウドか」、「なぜ、オラクルか」、「なぜ、いまか」という点について説明し、ユーザーの成功事例についても紹介した。だが、アプリにAIが実装されても、データベースの自律化が進んでも、企業の姿勢によって成功することもあり、失敗することもあるはずだ。なぜ、成功する企業があり、なぜ、失敗する企業があるのか?

ミランダ:環境の変化に迅速に対応するためには、オンプレミスでは限界がある。選択肢はクラウドしかない。また、オラクルは、機械学習やブロッックチェーン、IoTといった最新の技術を活用し、革新的なクラウドとアプリケーションスイートを提供することができる。幅広い業種に対応する広さと、業界特有の要件や世界各国の規制に準拠した深さを兼ね備えている。そして、オラクルは、製品の会社からサーヒスの会社へと移行しており、それによって、迅速に最新の機能を提供できる。また、いまクラウドに移行すれば、企業は最後のアップグレードを完了することができ、あとは、オラクルが四半期ごとにアップデートを提供する環境へと移行できる。だからこそ、選択肢は、クラウドであり、オラクルであり、いまということになる。

会社の成功や失敗については様々な理由がある。オラクルは、これまでの経験を通じて、新たな技術や製品、サービスを、いち早く採用する文化を持った企業ほど成功していると考えている。そこに対して、オラクルが果たせる役割は、完全で、セキュアで、革新のスピードがあるSaaSアプリケーションを提供することであり、企業がいち早く革新的なことに取り組める土壌を作っている。企業は、オラクルをパートナーに選べば、どのシステムを選択すべきか、ということを考えたり、心配したりすることなく、イノベーションに取り組むことができる。

日本では、アプリケーションをカスタマイズすることが一般化しており、それがベンダーやシステムインテグレータの収益源になっている。日本のこうした環境に変化が起こると考えているか?

ミランダ:カスタマイズすることは、ベンダーやシステムインテグレータにとっては成功するモデルかもしれないが、顧客企業にとっては、成功するモデルではないと考えている。例外的にメリットがある場合があるかもしれない。だが、それは極めて稀である。スタンダードのソフトウェアでビジネスはうまく行くと考えている。