宇宙航空研究開発機構(JAXA)と鹿島建設は3月28日、芝浦工業大学、電気通信大学、京都大学とともに宇宙での拠点建設と地上での建設技術の革新に向け、2016年より進めてきた「遠隔操作と自動制御の協調による遠隔施工システムの実現」に関する共同研究開発の成果として、月での無人による有人拠点建設をイメージした2種の自動化建設機械による実験を行い、拠点建設の実現可能性を見出すことができたことを明らかにした。

月や火星での長期滞在型の有人拠点建設には、人が現地で作業するのではなく、地球からの遠隔操作で建設機械を操作して行う「無人化施工」が想定されているが、通信に時間がかかるため、その作業効率や精度といった課題の解決が求められていた。

鹿島建設は、建設機械の自律・自動運転を核とした次世代の建設生産システム「A4CSEL」を2015年より建設現場に投入。今回の取り組みは、その開発で得た自動化施工技術を活用することで、課題の解決を図ることを目指して進められてきた。

実際には、建設機械に通信遅延に対応した操作支援機能や地形変化に対応した動作判断機能、複数建機の協調作業機能などを搭載することで、月での無人による有人拠点建設の実現可能性を見出すことができたとしている。

なお研究チームでは、今回の成果をもとに、システムの機能・性能の向上を図ることでより現実的な技術を確立し、地上における革新的な建設作業を目指すとともに、宇宙での拠点建設の実現に向け、GNSS(衛星測位システム)が使えない月や火星での高精度な位置推定技術、正確な地形認識技術、不安定な通信環境下におけるシステムの安定性確保など、さらなる研究開発を進めていく予定としている。

  • 月での無人による有人拠点建設のイメージ
  • 月での無人による有人拠点建設のイメージ
  • 月での無人による有人拠点建設のイメージ (C)JAXA