「Apple News+」は、「News」アプリを通じて雑誌・新聞のデジタル版を提供する有料サブスクリプション型サービスだ。300以上の出版物のコンテンツを月額9.99ドルで自由に読める。

  • 2011年に「Newsstand」アプリを提供開始してからデジタル雑誌の普及に努めてきたApple、「Apple News+」で再び大きな開花に挑む

「News」は、ニュースサイト、雑誌サイト、ブログなど信頼おけるソースからの記事を集めて提供するアプリで、2015年にiOS版からスタートして昨年にmacOS版の提供も始まった (日本では未提供)。広告の制限が厳しく、また広告追跡も許さないため、パブリッシャーからの反発も受けたが、米大統領選におけるフェイクニュース拡散が社会問題化する中で、信用できるソースと記事にこだわる「News」アプリの価値がユーザーに認められて急成長。今や「News」アプリを通じて毎月50億以上の記事が読まれている。Appleによると「世界一のニュースアプリ」である。

Apple Newsフォーマットの記事は、デバイスに最適化されたレイアウトで読みやすく、動きのある表紙や写真を楽しめる。最新の「News」アプリにApple News+の専用タブを用意、また「Today」セクションで各ユーザー向けにパーソナライズされた記事を勧めるなど、300以上の雑誌・新聞からユーザーが効率的に記事を読めるようにしている。

米国でスタートしたApple News+を試してみたが、現段階では読書体験のばらつきを感じた。Rolling StoneやThe New Yorkerなど、Apple Newsのフォーマットで作成されたデジタル雑誌は読みやすく、記事ごとにレコメンド機能の対象になるなどとても快適に利用できる。しかし、BillboardやMake:など、雑誌のページをスキャンしただけのような雑誌が半分ぐらいあり、それらはナビゲーションしにくく、読みにくい。全てのパブリケーションがApple Newsフォーマットになったら魅力的なサービスになると思うが、まだ紙の雑誌に軸足を置いたままデジタル版を手がけるパブリッシャーが多い。脱"紙"ではないが、Appleとしては提供地域の拡大までにApple Newsフォーマットへの対応をもっと普及させたいところだろう。

  • Apple Newsフォーマットで作られた「Runner's World」の記事、iPadでも、iPhoneでも見やすく、フォントサイズも調整可能

  • 誌面をスキャンしたような「PC Gamer」の記事、紙の雑誌のままのレイアウトで、Apple Newsフォーマットに比べると読みにくい

デジタル版に力を入れる媒体でも、New York TimesやWashington PostなどはApple News+に参加していない。逆にそれらよりも早くからデジタル版の有料提供を徹底して成功したWall Street Journalが参加している。

Wall Street Journalのデジタル版は月額40ドルである。300以上の新聞や雑誌を月額9.99ドルで読み放題提供するNews+に参加したら、Wall Street Journalの解約者が続出しそうだが、同社によると、News+では同紙の全ての記事を読めるわけではなく、一般的に関心をもたれるニュースを選んで提供している。経済紙を隅々までチェックする人達はwsj.comに、月額40ドルを払うほどではないけど経済ニュースに関心を持つ一般読者はApple News+でサポートする。