• 富士通の電子ペーパー「QUADERNO」

    富士通の電子ペーパー「QUADERNO」(FMV-DPP02:A5モデル)と、普段使っている紙のメモ帳

富士通クライアントコンピューティングが2018年12月に発表した電子ペーパーは、E Ink採用の手書きデジタル文具です。発表当初は「電子ペーパー」という名称でしたが、2019年に入り、改めて正式名称が「QUADERNO」(クアデルノ)になったとのことで、今回、A5モデルの実機を1週間ほど使ってみました(製品自体は発売時から変わりません)。なお、製品の仕様やファーストインプレッションは発表時の記事「手書き感を再現! 富士通の“超軽い”「電子ペーパー」を体験した」に詳しいので、こちらもぜひどうぞ。

ラインナップは13.3型/A4サイズの「FMV-DPP01(P01)」と、10.3型/A5サイズの「FMV-DPP02(P02)」の2種類。直販価格はA5モデルが税込75,500円、A4モデルが税込86,200円とお高めですが、3月27日14時までキャンペーンを展開。A5モデルで49,800円、A4モデルで74,800円と、多少手が届きやすい価格になっています。

  • 富士通の電子ペーパー「QUADERNO」

    A5モデルの本体と、FMV-DPP02

とにかく「書きやすい」。メモ書きで本領発揮

1週間ざっと使ってみた結論からいうと、良かった点は大きく3つ。「書きやすい」こと、「軽い」こと、「バッテリが持つ」ことです。

筆者は手書き対応の電子ペーパーを使うことが初めてですが、QUADERNOで最も印象的だったのは、本領である「書き心地」。視差もほとんど気にならず、思った通りにメモが取れました。普段の仕事では紙の手帳を多用していますが、電子ペーパーでのメモ書きが意外と紙に近い書き心地であることに驚きました。

QUADERNOには、使う前に自分の手書きのクセを登録して書き味をカスタマイズできる機能があります。この調整を行うと描画位置がかなり正確になり、仕事で急ぎメモを取る場面でも問題なく書くことができ、実用的なメモ帳として十分使えました。

  • 3月18日に発表された新しいiPad miniと、「QUADERNO」A5モデル。用途が異なるので一概には言えませんが、新しいiPad miniはペン先の反応が良すぎるきらいがあり(連続して文字を書いているとペン先を移動するときでも線が引かれてしまう場合がある)、純粋に文字を書く用途であれば、QUADERNOの方が書きやすいと感じたほどです。ただしQUADERNOは筆圧検知に対応していないので、イラストを書くならもちろんiPad miniの方がおすすめ

  • 最初に手書きのカスタマイズ。見本の「□」と「×」をなぞり、ずれていたら縦方向・横方向を調整して見本に合わせます。これをしないと、描画位置が狙いからズレてしまいます

  • 描画に関するメニューは、画面をタッチすると出現。表示はモノクロですが、ペン色を「青」か「赤」か選択でき、保存されるPDFデータに反映されます。ペンの太さは5段階、消しゴムの大きさは3段階で設定可能

A5サイズで約251gという軽さも良い点のひとつでした。液晶を持つタブレット製品(例えば10.5インチの新しいiPad Airで約456g)に比べると、やはり軽さが引き立ちます。気兼ねなく持ち歩け、スリープからの立ち上がりも速い。ページめくり速度が意外と速かったのも好印象でした。

  • 本体は約251gと軽く、薄さは5.9mm。左手でホールドして右手で書くといった作業も問題なし

「QUADERNO」のページめくり速度を、「絵しりとり」しながらチェックしました

バッテリ駆動時間は「最長約3週間」ですが、一週間の間、頻繁にメモ書きした今回は、QUADERNO本体・充電式のスタイラスペンともに一度バッテリ切れになりました。とはいえ、一週間バッテリ残量を気にせずに過ごせるというのは、タブレットやPCと比べると圧倒的に長い駆動時間。長時間の打ち合わせでも、安心して企画用のアイデアを書き留めることができました。

  • 充電式のスタイラスペンは通常のボールペンぐらいの太さで軽め。本体左側に、ペン上部にある突起をマグネットでくっつけられます

  • ペンの充電は、ペン上を外すと現れるmicroUSBポートから

  • 企画用のアイデアをまとめる用途にも。標準でインストールされているテンプレートは「大学ノート」「ToDoリスト」「デイリースケジュール」「ミーティングシート」「リーガルパッド」「方眼罫」「無地_横」「無地_縦」の8種類で、ほとんどが縦書き用となっています。縦書き用テンプレートで横書き(もしくはその逆)を選択してしまうと、描画位置が大きくズレるので注意

  • 同じくE-Inkを採用したソニーの電子ペーパー「デジタルペーパー」(DPT-CP1)とほぼ同じの製品ですが、富士通独自の特徴のひとつがピンチイン・アウトによる「拡大・縮小」操作。写真は左上が100%、右上が200%、左下が約1,000%、右下が2,000%(最大拡大率)の状態です。拡大・縮小画面の表示にはやや時間を要するものの、細かいスケジュールを確認したい場合などに便利

データ保存はPCで。今後のスマホ対応に期待!

一方、細かいながら気になる点も3つありました。これも先に言ってしまうと、「手書きファイルが探しにくい」「ファイル転送にPCソフトが必須」「“戻る”ボタンがない」の3つです。

QUADERNOはPDFファイルに対応します。書き込んだ手書きメモはPDFファイルとして保存されるほか、Windows専用のユーティリティソフト「Digital Paper PC App」を使うことで、PCでファイルの出し入れも行えます。

PCで作成されたPDFファイルであれば、文字検索や、☆マークなどの「マーク検索」も行えるのですが、手書きファイルの検索は、一覧表示のサムネイルから目的のファイルを探すことになります。1週間前に書いたメモを確認したいときなどは、サムネイルから探し出すか、当たりをつけてページ指定するか、地道に遡ってページをめくることになり、筆者の場合、手書きメモはファイル名を付け、PCへ取り入れて検索するのが一番良い解決法となりました。

ユーティリティは、富士通クライアントコンピューティングの公式サイトからダウンロードできます。スマートフォンと連携すれば非常に便利なのですが、現状の対応ハードはWindows 10搭載PCだけなのが残念なところ。ただし近々、Mac版のユーティリティソフトや、スマートフォンアプリの提供も検討しているとのことで、特にスマホ版は登場を切に期待します。

  • 充電式のスタイラスペンには、親指が当たる部分にボタンが2つ付いています。ペン先側のボタンは消しゴム、ペン上側のボタンはマーカー(手書きでは使えず、PCで作成された文書向けの機能)です。機能割当はできません。現状、メモ書き中にメニューを表示したとき、手書き中のファイルに戻るには、メニューから「戻る」を選択しなければならず、「戻る」がボタン操作でできれば……と歯噛みしました

  • 本体背面。マットなホワイトでシンプルなつくりです

仕事で大量にメモ書きする人におすすめ

若干の気になる点はありますが、本来の目的である文字・図画の書き心地は文句なしの抜群に良い製品。スケジュールを手帳で管理している人や、仕事で大量にメモを取る習慣のある人、書いたメモの保存方法に困っている人にはかなりおすすめしたい電子ペーパーです。

■製品の主な仕様 [製品名] 富士通 QUADERNO FMV-DPP02 [CPU] Marvell IAP140 64-bit Quad-core IoT Applications Processor [ストレージ] 16GB [保存可能なPDFファイル] 約10,000ファイル(1ファイルあたり約1MBのPDFファイル) [ディスプレイ] 10.3型フレキシブル電子ペーパー(1,404×1,872ドット)、タッチ対応 [充電インターフェイス] micro USB [インターフェイス] USBケーブル/Wi-Fi/Bluetooth/NFC [バッテリー駆動時間] 最長約3週間(満充電まで約5.5時間) [本体サイズ/重量] 174.2×243.5×5.9mm / 約251g [実勢価格(税込、2019年3月下旬)] 75,500円(3月27日14時までキャンペーン価格:49,800円)