実際に使っていて気になった点は、キーボードと持ち替える操作だ。一般的に、PCを使用している間は、マウスとキーボードを交互に持ち替える動きが頻繁に発生する。例えばキーボードを打鍵している最中に、ポインタを動かす必要が生じたら、キーボード上の右手を横方向に滑らせ、マウスを握って操作することになる。

この場合、普通ならば右手を真横に動かすだけでよいのだが、本製品は通常のマウスに比べて背が高いため、いったん手を持ち上げて山なりに移動させなければ、手がマウスにぶつかってしまう。マウスとキーボードの持ち替えが頻繁に発生する作業では、これは非常にストレスになる。

  • 前回紹介した日本マイクロソフトの「Microsoft Precision Mouse」のような標準的な背丈のマウスであれば、キーボードと比べても背が高くないため、キーボードとマウスの持ち替えも容易だ

  • 本製品はキーボードと比べて圧倒的に背が高いため、キーボードに乗せた手をそのまま横にスライドさせると、手がマウスにぶつかってしまう

長時間マウス操作する人向き。腕の動きも考慮されたらなおよし

前述のように、パームレストがあれば握りやすく感じる点と合わせて考えると、本製品は単純に背が高すぎるように感じる(開発拠点がスイスであることも関係しているのかもしれない)。マウス単体で見た場合、本製品のデザインは人間工学的に正しいのかもしれないが、マウスとキーボードを持ち替える際の腕全体の動きまでは、あまり考慮できていないように感じる。

こうした特徴からして、「MX Vertical」はマウスを長時間握ったまま操作するには向いているが、キーボードとの持ち替えが多い作業環境にはあまり向かないというのが、筆者の結論だ。

今回は短期間での試用であり、何カ月にも渡って本製品を使い続ければ、同社が言うように従来型のマウスに比べて腕の疲れが軽減される可能性はなくはない(本製品を仕事で使っている担当編集は最初こそ持ちにくかったそうだが、1カ月ほどで独特の持ち方に慣れ、楽に握れるようになったと言っていた)。ただ、しばらく使った限りでは、そこまで突き詰めてみようとはとても思えないのが正直なところ。

利用にあたって慣れを必要とする製品では、使い続けようというモチベーションをユーザに与えられるかどうかも重要なポイントで、少なくともその点においては、あまり評価は大きくないというのが、今回試用した率直な感想だ。本製品はユーザを選ぶ製品であることに加えて、作業自体も選ぶ製品であるように感じる。ユーティリティも含め品質そのものは高く、左右クリックなど標準的な操作は問題ないだけに、もったいない印象だ。

  • 本体底面。3台のデバイスとペアリングが可能

  • 今回は試用していないが、1台のマウスで最大3台のマシンを制御できる「Logicool Flow」にも対応している