2019年2月10日、世界最大級のガレージキットイベント「ワンダーフェスティバル2019[冬]」が千葉県・幕張メッセで開催された。

「ワンダーフェスティバル」(通称:ワンフェス)は、フィギュアなどを含む造形物「ガレージキット」を展示・販売するイベント。アマチュアの人でも当日版権システムにより、既存のキャラクターを題材とした作品を出展できるほか、企業ブースでも会場限定品などを発売している。

4K・大画面の「Wacom Cintiq Pro 32」がワンフェス初展示

造形物の祭典ということで出展者、参加者(来場者)ともに造形ツールへの造詣が深いためか、原型製作向け3Dモデリングツール「ZBrush」(ズィーブラシ)のブースやペンタブレットの老舗「ワコム」のブースが、通りがかりに立ち寄る参加者で賑わっていた。

  • 2019年冬の「ワンフェス」のワコムブース

「ワコム」ブースではZBrushと連携し、液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro」を体験できるコーナーを展開。展示機には全てZBrushがインストールされ自由に試すことができ、参加者はイラストを試し描きしたり、ZBrushの操作法をスタッフに聞いたりしていた。

中でも注目されていたのが、2018年11月2日に発売され、ワンフェスでの展示は初となる31.5型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 32」だ。4K(3,840×2,160)解像度の大型ペンタブレットで、付属ペンの筆圧レベルは8,192レベルと高い。細長い机の上に置かれた「Wacom Cintiq Pro 32」の存在感は大きく、立ち止まって実機を体験した参加者からも「これは大きい」「ペンの精度がすごい」といった声が上がっていた。

  • 個人用というよりプロクリエイター向けとなる「Wacom Cintiq Pro」(PCと接続した状態。製品は写真右)

  • 多くの参加者が興味深そうに試していた。ブーススタッフは「プロの方向けの製品。イラストレーターやゲームクリエイターの方が使うのに適しています。個人で使うなら13型や16型の小型モデルのほうが使い勝手がいいでしょう」とコメント

  • 2019年1月11日に登場したばかりの、エントリー向け15.6型液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq 16」も体験ブースにずらり。こちらも多くの参加者が描き心地を確かめていた

もはや塗装は不要? 3Dプリンタで陰影をそのまま出力

同ブースでペンタブレットと並び注目を集めていたのが、ミマキエンジニアリングのUV硬化インクジェット方式3Dプリンタ「3DUJ-553」で出力されたフィギュア群だ。3DUJ-553は1,000万色以上のフルカラー造形が可能な業務用3Dプリンタで、元の3Dデータさえ作られていれば、造形物の影やグラデーションなど繊細な色合いをそのまま出力することができる。

ブースでは、人型アバター(キャラクター)の3Dモデルを作成できるアプリケーション「VRoid Studio」のメイン作例キャラクター、「千駄ヶ谷 渋」ちゃんを、3DUJ-553でフルカラー出力したフィギュアも展示。このフィギュアの服や肌の陰影は光によるものだけではなく、濃い色・薄い色という実際の色の違いで表現されており、ブーススタッフによると「ほぼ(3Dプリンタから)出したまま」という。

  • ワコムブースに並ぶフィギュア群。上段に並ぶのが3DUJ-553で出力されたフィギュア

  • VRoid Studioのメイン作例キャラクター、千駄ヶ谷 渋ちゃんのフィギュア(写真右)

  • スカートの影になっている脚の上部は濃い肌色になっているが、光で作られた影だけでなく、実際に濃い肌色で出力されているという。このフィギュアは塗装されておらず、このままの色で出力されたとのこと

デジタルの3D造形ツールを使って作品を出す人は、年々増加しているという。ここ数年、ZBrushとワコム製液晶タブレットを展示しているワコムブーススタッフは「これまでは3D造形ツールに触れて『これで何ができるのか』といった質問が多かったが、最近は『こういうことをしたい』と、使う目的を明確に持つ参加者が増えてきた印象がある。高精細な造形データをそのまま出力できる3Dプリンタの登場もあり、個人が自分のアイデアを手軽に商品化できるようになってきた。造形ツールの間口はさらに広がるのでは」と語っていた。

  • こちらは葛飾北斎の天井絵「大鳳凰図」(岩松院、1848年)をデータ化し、出力したもの。ものづくりコミュニティ「ウルトラモデラーズ」のクリエイター、吉本大輝氏が3Dデータを手掛け、3DUJ-553で約30時間かけて出力された

  • 大鳳凰図フィギュアの裏側。天井絵は2Dだが、3D出力するには当然、本来見えない絵の裏側までデータ化する必要がある。ちなみに3DUJ-553の本体価格は1,500万円ほどと個人では手を出しにくいが、ミマキエンジニアリングの関連会社、グラフィッククリエーションで、3Dデータを送ると3DUJ-553で出力してくれるサービスを展開している。価格は税別12,900円~