中国DJIが発売した小型ジンバル(制震装置)搭載の新しい動画カメラ「Osmo Pocket」、歩きながらでもぶれのない安定した動画に仕上がることが幅広い層に注目されています。Osmo Pocketと同様のジンバルを搭載し、高品質な動画撮影を可能にしたのが、同社の高性能ドローン「Mavic 2 Pro」「Mavic 2 Zoom」兄弟です。

  • ぶれのない動画が撮影できることで注目されている、DJIの小型ジンバル搭載カメラ「Osmo Pocket」

  • 先端部にジンバル付きのカメラを搭載した、DJIの高性能ドローン「Mavic 2」シリーズ。カメラの違いで2機種をラインアップする

前回の記事「DJI『Mavic 2』レビュー、画質と撮影機能、安定性が大幅向上」に続き、今回は実際に撮影できる動画のクオリティーをチェックするとともに、ドローンならではのユニークな撮影機能の魅力を見ていくことにしましょう。

高画質な「Pro」、付加機能が売りの「Zoom」

Mavic 2 ProとMavic 2 Zoomは、コンパクトなボディーにもかかわらず、ほかのDJI製ドローンと同様に安全で安定したフライトと空撮が初心者でも存分に楽しめるドローンです。両機種はカメラやレンズの性能が異なり、それぞれ得意とする撮影分野があります。

  • スリムで精かんなデザインのMavic 2シリーズ。Mavic 2 ProとMavic 2 Zoomでボディーは共通で、カメラ部のみ異なる

  • アームは折りたたみできる構造となっており、折りたたむとこれほどコンパクトになる

画質重視モデルとなるMavic 2 Pro(実売価格は税込み194,000円前後)は、上位の「Phantom 4 Pro」シリーズと同じ1インチの大型CMOSセンサー(2000万画素)を搭載するのが特徴。高画質コンパクトデジカメで人気のソニー「Cyber-shot DSC-RX100」シリーズなどと同じサイズの大型センサーで、35mm判換算で28mm相当となる単焦点レンズを組み合わせ、高精細な描写や豊かな階調再現性を誇ります。動画は4K30pでの高画質撮影に対応し、まさに“フライングカメラ”の名に恥じない内容となっています。

  • 1インチの大型CMOSセンサーを搭載するMavic 2 Pro。カメラ部には、老舗カメラメーカーのハッセルブラッドのブランドをおごっている。実売価格は税込み194,000円前後

撮影の楽しさを重視したMavic 2 Zoom(実売価格は税込み162,000円前後)は、1/2.3インチのCMOSセンサー(1200万画素)を採用しています。Mavic 2 Proの大型1インチセンサーと比べると面積は1/4ほどにとどまりますが、特徴的なのがレンズ。民生用ドローンとしては初めて、35mm判換算で24~48mm相当の光学2倍ズームレンズを装備しています。少しでも被写体に寄って撮りたいときに心強いだけでなく、ユニークな表現で撮影できる「ドリーズーム」(Dolly Zoom)機能に対応しているのがポイントです。

  • 1/2.3インチセンサーと光学2倍ズームレンズを組み合わせたMavic 2 Zoom。実売価格は税込み162,000円前後

ドローンならではの多彩な撮影が楽しめる

両機種には、操縦アプリ「DJI GO 4」任せでドローンならではのユニークな動画が撮影できる機能がいくつか搭載されています。高度な操縦テクニックを必要とせずに撮影が楽しめるのが大きな魅力といえます。

まず、誰に見せても驚くのが「アステロイド」(Asteroid)。ドローンが被写体から徐々に離れていく「ドロニー」(Dronie)の派生的な機能で、最後にリトルプラネットのような全天球写真になる短編動画を撮影します。ユニークな表現で、印象に残ること間違いなしです。

被写体から斜め上方向に向かって飛びながら撮影する「ドロニー」。被写体の周りの様子がだんだん広く写り込んでいくため、状況説明的な動画となる。ProとZoomの両方に搭載されている機能だ

ProとZoomの両方に搭載されている「アステロイド」。最初はドロニーのように斜め上方向に向かって飛び、その後上空でパノラマの静止画を撮影。最終的には、被写体からドローンが次第に離れていき、丸い地球のような表現となる

「ポイント・オブ・インタレスト」(Point of Interest)は、カメラが常に被写体の方向を向きながら、ドローンが被写体の周囲を回って撮影する機能です。一般には「ノーズインサークル」と呼ばれる撮影技術で、通常はプロポのコントロールスティックで飛行方向やドローンの向きを細かく操作する必要がありますが、この機能を使えばすべてお任せで精度の高い円を描きながら撮影できます。速度や高度などもフライト中に調整でき、プロのドローングラファーも真っ青な美しいノーズインサークル撮影が簡単にできます。

カメラは被写体のほうを向きながら、周囲をぐるぐると回って動画を撮影する「ポイント・オブ・インタレスト」。一般的には「ノーズインサークル」と呼ばれる撮影手法で、プロポだけでの操作は難しいテクニックだが、この機能を使えば精度の高い撮影が手軽にできる。ProとZoomの両方に搭載されている

常に一定の距離を保ちつつ、捕捉した被写体を追いかけて撮影する機能が「アクティブトラック」(Active Track)です。これは以前から搭載されている機能ですが、Mavic 2シリーズでは捕捉精度が向上し、被写体を見失うことが少なくなりました。

ドローンが被写体を追いかけていく「アクティブトラック」。Mavic 2シリーズは、被写体の動き予測など捕捉の性能が向上し、一時的に被写体が見えなくなっても捕捉し続ける。ProとZoomの両方に搭載されている

これら3つはMavic 2 ProとMavic 2 Zoomの両方に搭載される機能ですが、Mavic 2 Zoomは面白い表現の「ドリーズーム」(Dolly Zoom)撮影が可能なのがポイントです。これは、光学ズームとデジタルズームを併用した動画撮影機能で、ドローンが被写体から遠ざかりつつズームアップしていくため、被写体の大きさは変わらないのに背景が迫ってくる表現の短編動画に仕上がります。ヒッチコックの映画で有名になった撮影方法で、これもドローン任せで手軽に撮影できます。

Zoomのみに搭載されている注目の撮影機能「ドリーズーム」。ドローンは被写体から離れていくが同時にズームアップしていくため、被写体の大きさは変わらず、画角の変化によって背景のみが迫ってくるような独特な描写が得られる