さて、今回は2014年に発表されて以来、「痒いところに手が届く」アップグレードを続け進化を遂げたLogic Pro Xとの対面だ。
深くその内容を探りたい衝動をグッと抑えて、まずはデモセッションを起ち上げ、再生。
……iMac Proから放たれるこのサウンドはどうだ……! iMac Proのために強化されたスピーカーは、従来のPCスピーカーの概念を粉々に打ち砕く、これ以上ないリッチなサウンドを提供してくれた。最大ボリュームにするのが憚られるほどの大出力は、本体後ろにニアフィールドモニタを設置しているのかと勘違いするほどである。リアルな中高域・体感できるほど豊かな低域。外部スピーカー無しに本体のみでサウンドを楽しめる……このiMac Pro。やはりただ者ではなかった。
4つ搭載されたビームフォーミングマイクは我々の声をしっかりと認識。音声を扱う者にとってこの「インプット&アウトプット」の充実はこれ以上なくありがたい。
また、本体の音が極めて静かなことにも言及しておきたい。スリムなオールインワンボディにここまで突き詰めた高性能、といえば気になるのは放熱性能と、その静粛性だろう。 しかし、そこは安心してほしい。このiMac proは熱アーキテクチャが再設計されており、デュアルブロワー・大容量の放熱板・追加の通気構造を取り入れていて、これ以上ない静かさを実現したのだ。宅録レコーディングに置けるルームノイズ低減に一役も二役も買ってくれていて、自宅録音派の諸氏にも嬉しい設計となっている。
そして気になるLogic Pro X 10.4の機能について。
まず今回の目玉新機能はズバリ、「スマートテンポ機能」だ。この機能を簡単に説明しよう。
・クリックを聴かずに録音したパートを元にして、テンポマップを作成
・すでに録音されたテンポが決まっているパートにあわせて、追加したファイルを自動的にテンポ調整
文字にすると実にシンプルだが、私は……ついにここまできたか! と、思わず驚きの声を上げてしまった。
かつては、フリーテンポの素材はその管理に多大なる苦労をしたものだ。違うテンポ同士の扱いも然り。しかしどうだろう、このLogic Pro Xでは今までの労苦が一掃、リミックスやマッシュアップ制作にこれ以上はないという存在になってくれるはずだ。
今まで一つ一つのオーディオファイルを解析し、時間と手間暇かけてテンポ管理をしてきた過去に決別できるとは……。
以前より、そのサウンド&操作性に定評のあったプラグイン周りも今回強化されている。簡単にそれらを紹介しよう。
•ChromaVerb …… インタラクティブなインターフェイスで豊かなアコースティック空間を作り出す、新しいアルゴリズムを持つリバーブ・プラグイン
•Space Designer …… デザインを一新。スケーラブルな Retinaインターフェイスに
•Step FX …… 3系統のステップシーケンサーと X/Y パッドで、リズミカルなマルチエフェクト処理を可能に
•Phat FX …… サウンドに豊かさとパンチを加える9個のエフェクトで、トラックを太く・力強く
•Vintage EQ Collection …… 1950年代から1970年代の「あの」ビンテージアナログEQを正確に再現
•Studio Strings & Studio Horns …… 精密にサンプリングされた音源は、アーティキュレーションをカスタムコントロールで指定可能
•Mellotron …… スタンドアロンの音源プラグインとして利用可能に
•Retro Synth …… 18個に及ぶさまざまなフィルタモデルがサウンドメイクをサポート
サウンドに彩りを添えてくれるコンテンツもさらに充実。
•ルーツおよびジャズ風のブラシスタイルを追加した新しい「Drummer」
•「Drum Kit Designer」用に 2つのビンテージブラシキットを追加
•さまざまな楽器とジャンルの800を超える新しいループを追加
•150の壮大なシネマティックな「Alchemy」用の新しい「Visions ライブラリプリセット」を追加
このような追加機能のみならず、バグフィックスも含むその他の機能も大幅強化……! 自分の脳と手先が一つになったかのような錯覚を覚えるほどのLogic Pro X、贅沢すぎる程のスペックを持つiMac Proとの相性は抜群だった。
最もベーシックな構成でも558,000円(税別)と価格も実にパワフルながら、この青天井のiMac proのパワーは生まれて初めて「時間を金で買う」そんな感覚すら覚えてしまった。
日々創造力を要求される、あらゆる世界の"プロ"のみなさんにとって、このiMac pro、実に頼れる相棒となってくれるに違いないだろう。
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白石元久(しらいし もとひさ)
1996年に 森岡賢(ex.-SOFT BALLET)のアシスタントとしてキャリアをスタート。 遠藤遼一のソロプロジェクト、「ENDS」や岡村靖幸のライブサポートをはじめ、 プレイヤー、マニピュレーター、エンジニア、マスタリングエンジニアとして活躍。