カイロ(懐炉)とは、懐(ふところ)に収まる炉という意味の和製漢語で、江戸時代に使われはじめたそうです。戦後しばらくはベンジンの酸化による発熱を利用した白金触媒式が一般的でしたが、昭和後期には鉄粉の酸化作用を応用した使い捨てカイロ(化学カイロ)が普及しました。現在では電池/バッテリー式の製品もありますが、手軽さから化学カイロが圧倒的です。

iPhoneをカイロ代わりに使えるかとのご質問ですが、ゲームなど高負荷のアプリを使用しているときに思い付いたのでしょうか? 確かに、アプリによっては心配になるほど背面付近が熱を帯びますから、これからの季節かじかんだ手を暖めたいときに役立ちそうです。ただし、カイロとしての機能を発揮するにはそれなりの準備が必要です。

まず、アプリ探しから始めなければなりません。iPhoneを"カイロ化"することが主目的のアプリは2018年11月現在見つかりませんが、CPUやGPUに高負荷をかけ続けるアプリであれば代用できます。

アプリが見つからなくても、システムに高い負荷をかけ続けることができればOKです。たとえば、ベンチマークソフトはiPhoneの性能限界を測るべくシステムをフル回転させますから、"カイロ化"の目的は果たせます。WEBブラウザ/JavaScriptの処理性能を測定する「JetStream」は、まさに適役でしょう。

このJetStreamを実行すると、iPhone Xでいえば背面Appleロゴ左横/カメラ下のあたりが間もなく暖まってきます。2分ほど経つと表面温度は40度近くにまで達しますから、まがりなりにもiPhoneで暖を取ることは可能です。

しかし、暖かくなるのは下部にCPU/GPUが配置されている部分だけ。指2本暖められるかどうかの面積です。iPhoneは放熱設計がしっかりしているため、ベンチマークソフトを止めるやいなや表面温度は下がりはじめます。システムをフル回転させれば電力消費量が増えるので、バッテリーはかなり減ります。カイロ代わりに使えないことはないけれど効率悪すぎ、というのが実際のところです。

  • システムをフル回転させても、待てばカイロの日和あり、というわけにはいきません