オーディオテクニカから、ノイズリダクション機能を搭載するBluetoothワイヤレスヘッドホン「ATH-SR50BT」(以下、SR50BT)が登場します。有線での接続時にはピュアなハイレゾリスニングも可能。想定売価は23,000円前後という手ごろな価格も魅力的。この新製品を一足先にレポートします。

  • オーディオテクニカ「ATH-SR50BT」レビュー

    オーディオテクニカ、2018年秋冬の新製品「ATH-SR50BT」はノイズリダクション機能を搭載するBluetoothワイヤレスヘッドホンです

SR50BTは、オーディオテクニカの多彩なヘッドホン製品の中でも、特に質の高いサウンドとポータビリティが両立する「Sound Reality」シリーズに新しく加わります。密閉型のイヤーカップには、SR50BT専用に設計された45mm口径のドライバーを搭載。密着性の高いイヤーパッドによるパッシブな遮音効果を備えながら、リスニング環境周囲の不要なノイズを本体に内蔵するマイクを使って収音して、逆位相の音をぶつけてノイズだけを打ち消す「ノイズリダクション」機能も搭載しています。

オーディオテクニカのラインナップには、2017年秋に発売されたSOLID BASSシリーズ「ATH-WS990BT」のように「ノイズキャンセリング」機能を搭載したヘッドホンもあります。今回のSR50BTであえてノイズリダクションと呼んでいる理由は、高品位なサウンドを心地よく楽しむためのサポート機能として位置付けて、よりナチュラルな騒音低減の効果を持たせているからです。マイクはハウジングの外側だけに設けたフィードフォワード方式をベースにしています。

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    柔らかなイヤーパッド。イヤーカップもゆったりとしているので着け心地はとても快適です

イヤーカップはゆったりめに設計されていますが、ヘッドホン本体のサイズは無駄を絞ったスリムな仕上げ。重さも約262gと軽量なうえ、本体をコンパクトに折り畳むと、パッケージに付属するポーチに入れて旅先にも軽快に持ち運べます。

実際に装着してみると、側圧がとてもマイルドなので、長い時間身に着けていても負担を感じることが少なく、音楽リスニングに集中できました。内蔵バッテリーは、ノイズリダクション機能とBluetoothによるワイヤレスリスニングの両方をオンにした状態で、フル充電から約28時間の連続再生に対応するスタミナ設計です。

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    左ハウジングの側面にタッチセンサーリモコンを搭載。全体を覆うようなジェスチャーでノイズリダクションのON/OFFとヒアスルーモードの切り替えが操作できます

音楽再生やハンズフリー通話は、左ハウジングの表側に搭載されているタッチセンサーとボタンリモコンで操作します。電源ボタンや、一時的に外の音が取り込めるヒアスルー機能をオンにするためのボタンも、すべて本体の左側にまとめています。筆者はタッチセンサーを右側に搭載するヘッドホンを長く使っていたので、最初は少し戸惑ったものの、「リモコン系はとにかく左側」と覚えてしまえば、簡単に使えるようになりました。

また、Android・iOS対応のスマホ専用アプリ「Connect」を使えば、ペアリング設定やノイズリダクション、ヒアスルー機能の切り替えなどを操作できるようです。試用したサンプル機では残念ながらアプリを試せなかったので、発売後にまたチャレンジしてみたいと思います。

音楽に集中できる「効き具合」のノイズリダクション

まずは音楽を鳴らさずに、ノイズリダクションの効果から試してみます。ノイズリダクションはオン・オフの切り替えと、マイクを使って周囲の環境を取り込める「ヒアスルー」の機能があります。左ハウジングの表側を、手のひら全体で約2秒間覆うようなジェスチャー操作で切り替えます。

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    ハウジングの外側側面に電源ボタンやヘッドホンケーブルを接続するためのコネクタを搭載しています

ノイズリダクションをオンにすると、周囲の騒音がどの帯域もバランス良く低減されます。SOLID BASSシリーズの「ATH-WS990BT」など、いわゆるノイズキャンセリング機能付のヘッドホンに比べると確かに消音効果は穏やかですが、音楽を再生すれば電車やバスの中、人混みの中でも騒音を気にせず音楽に集中できるバランスだと思います。このナチュラルな消音感は、ノイズキャンセリング機能を搭載するヘッドホンにはない持ち味かもしれません。

外の環境音を取り込めるヒアスルー機能の効果も試してみましょう。音声ガイドによって、ノイズリダクション、ヒアスルー、ノイズリダクション・オフと、それぞれのモードに切り替わった状態を知らせてくれます。ヒアスルーモードの間は外の音と、再生中の音楽が同時に聞こえてきます。街を歩きながら音楽を楽しみたいときになどに、スイッチするとよいでしょう。

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    専用のキャリングポーチが付属します

  • オーディオテクニカ「ATH-SR50BT」レビュー

    本体はコンパクトに折り畳めるので可搬性も抜群

もうひとつ「クイックヒアスルー」という別の機能もあります。こちらは本体の電源をオンにした状態で左側ハウジング側面のボタンを押すと起動して、周囲の音がクリアに聞き取れるようになります。ただしプレーヤーで再生中の音は聞こえなくなって、さらに再生も一時停止されません。あくまで一時的に外音をチェックするための機能でしょう。本体パッケージに付属するケーブルを使った有線リスニングの場合、本体の電源をオフにしても音楽が聴けるので、バッテリーが切れてしまっても安心です。

ニュートラルでバランスの良いサウンド

Bluetoothのオーディオコーデックは、音質と接続性に優れるaptXとAACもサポートしています。まずはソニーのスマホ「Xperia XZ2」とaptXコーデックでつないで、Spotifyの音源を試聴しました。

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    ソニーのXperia XZ2につないでaptX接続のワイヤレスサウンドをチェック

特定の音域をむやみに誇張しないニュートラルでバランスの良いサウンドです。解像度も高く、鮮明なステレオイメージが広がります。ノイズリダクション効果とあいまって、ボーカルや低音のリズムは彫りが深く立体的な音像が浮かび上がってきます。

大江千里のジャズピアノアルバム「Boys&Girls」のタイトル曲を聴くと、ピアノの音は粒立ちキリッとしていて、長音のビブラートも細かな輪郭線のニュアンスにまで迫れます。余韻の消え入り際まで、きめ細かい階調表現力も備えています。少し騒がしい屋外で聴いてみても、ピアノのペダルを踏む音が聞き取れるほどの遮音性にも満足です。

続いて有線接続に変えて、Astell&Kernのプレーヤー「A&norma SR15」でマイケル・ジャクソンのハイレゾアルバム「Off The Wall」からタイトル曲を再生してみます。

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    Astell&Kernの「A&norma SR15」をケーブルで接続してハイレゾ音源を試聴しました

低音のビートがシャープで切れ味するどく、どっしりとした柔らかな余韻に包み込まれるような感覚を味わいました。アップビートな楽曲の熱量を伝えてくるヘッドホンです。金管楽器の音色が勢いよく突きぬける晴れやかさや、ボーカルのハイトーンをしっとりと聴かせる中高域のリッチな表現力も兼ね備えています。

ただ、もしかするとシャープで精悍なイメージの低音が、少し細身に感じられて物足りないという方もいるかもしれません。その場合はタイトで力強い低音が鳴らせるSOLID BASSシリーズの「ATH-WS990BT」のサウンドも選択肢として比べてみてはいかがでしょうか。

ATH-SR50BTは、ワイヤレス音楽再生に必要十分な機能が使いやすくまとめられていて、装着感や携帯性も抜群な完成度の高いヘッドホンです。男女ともに大人の音楽ファンが日常の装いに合わせやすいブラックと明るいブラウンのカラバリ展開。様々なジャンルの音楽再生から、スマホで楽しむVODやゲームにも快適なリスニング環境を実現してくれるポータブルヘッドホンの決定版といってもよいでしょう。