Appleは「A12 Bionicですごいのは省電力性向上」と説く。性能コアは処理能力を15%向上させながら、40%の省電力性を実現した。また効率コアも50%の省電力性能が向上している。この方向では確かに、ベンチマークには大きくは現れないかもしれない。
ピークパワーを高めることは重要だが、低消費電力で駆動し続ける効率コアの処理性能向上は、低負荷でも十分な高い性能を発揮できるようになることを意味する。これは、高負荷のアプリでも効率コアの適用範囲が増え、バッテリー消費を減らせるようになることを意味している。
そういった方向での機能向上が可能になったのも、Appleが独自のプロセッサとソフトウェアを開発し、もっとも効率的に動作させるための方法論を追究できるからだ。これはiPhone XSの話ではないが、2018年6月のWWDC 2018で発表したiOS 12は、自社開発のチップをより効率的に利用し、5年前のiPhone 5sであっても高速に動作するようになるとしている。
前述の通り、2017年モデルに搭載したA11 Bionicですら、2018年でも追いつかれない、あらゆるアプリを高速に動作させる処理性能のアドバンテージを確保しているのだ。だからこそ、A12 Bionicでは、ベンチマークに現れなくても、日々のスマートフォン利用に直結する効率コアの性能向上と省電力性の追究に舵を切ることができた。
Appleはシリコン開発について、世界最高のチップを開発するのを目指している。しかしその大前提として、世界最高の電話を実現することが念頭に置かれているのだ。
常にiPhoneという完成品と、それを使う人々の日々の生活を意識しながらシリコンが開発されており、ハードウェアチーム、ソフトウェアチームとの密な連携によってそれが実現されていく。そういったコンセプトの具現化が、2018年モデルのiPhone XSなのだと言えよう。