ポータルサイト「goo」を運営するNTTレゾナントで広報を担当している成田と申します。弊社では、テクノロジーのトレンドを掴むために、業務時間内にエンジニアが相互に教えあうことで、スキルを高める勉強会を定期的に開催しています。

今回は、この勉強会に参加して、「Alexaスキル」を初めて開発したエンジニア数名に話を聞いてきました。

Alexaスキルとはスマートスピーカーが提供するさまざまな機能のこと。最近ではAmazonがAlexaスキルを推進しはじめた印象もあり、スキル開発を経験するのにいいタイミングだと言えるのではないでしょうか。まずは、初めてAlexaスキルを開発する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

将来を見据えて、今から開発にチャレンジするのがおすすめです

初めてのAlexaスキル開発、まず見るべきは「公式コンテンツ」

初めてスキルを開発する方にまず見てほしいのは、AmazonのAlexaスキル開発トレーニングというコンテンツです。

このコンテンツにはAlexaスキル開発の手順や、仕組み、スキル公開の申請方法などが動画とブログで丁寧にまとめられています。スキルを開発しながら手順を学べるので実践的。より技術的なパートに関しても、GithubのサンプルコードやQiitaの記事などを参考にすれば、すぐに作れるでしょう。

一方で、書籍はあまりおすすめしません。実際にAlexaスキルを開発したエンジニアによると「いくつか書籍を購入したものの、参考になるものはなかった」とのことです (2018年6月時点)。

公式コンテンツは情報が整っているので、これからAlexaスキルの開発を学びたい方は、わざわざ書籍を買う必要はないかもしれません。

Alexaスキルの公開に向けた審査、ポイントは発話しやすさ

Alexaスキルを開発したら、Alexaスキルストアでユーザーに公開します。ただその前に、公開のためにはAmazonの審査を受け、認定をパスする必要があります。

このAlexaスキルの審査で真っ先にポイントとなるのが、ユーザーとの会話インターフェース。いかにユーザーが直感的に操作できるかが、重要視されているようです。例えば、自治体のオープンデータもAlexaスキルに活用されているものもありますが、それらのデータはそのまま使えるものではありません。登録するテキストをきちんとユーザーが発話できるものに変えないといけないのです。

川崎市のゴミの分別を答えてくれるAlexaスキルを開発したエンジニアは、まさにこの部分で指摘を受けました。川崎市がウェブサイトでオープンデータとして公開しているゴミ分別方法を利用したのですが、元データでは「アイスクリームのふた(プラスチック製)」や「アイスクリームのふた(紙製)」となっており、そのまま登録したところ、「ユーザーはそのような発話をしない」と指摘がありました。結局、審査のためにそういったテキストを全て見直し、無事に公開できたそうです。

また、開発中に使うことの多いAlexaスキルのシミュレーターは、実機と異なることを意識しておいたほうがよいそうです。大きな違いは、シミュレーターはタイピングで文字を入力するのに対し、実機では発話による音声で文字が入力されるということです。

これの何が問題かというと、先ほどのゴミ分別スキルを例にすると、シミュレーターで「タバコ」が認識できても、発話時ではカナではなく漢字の「煙草」としてデータベースにリクエストすることがあるためです。データベースに漢字の「煙草」が登録されていない場合、Alexaは「見つかりませんでした」と返答してしまいます。データ入力時の表記にも注意が必要です。

審査ではAlexaスキル以外も指摘される

Alexaスキルの審査において、他にも注意しておくべき点があります。それは、ユーザーの発話を正確に認識するためのサンプル発話。「○○のゴミ分別を調べて」「○○のゴミ分別を知りたい」「○○のゴミ分別を教えて」など、ユーザーのさまざまな発話に対して対応できるように辞書を用意する必要があり、この数が10個以下だと審査で指摘されるようです。

実際に指摘を受けたエンジニアは、Amazonのウェブサイトにあるサンプル発話の転用を試みたそうです。しかし実際には、スキルによってユーザーの発話方法がそれぞれ異なるので、そのまま転用することはほとんどできなかったといいます。初めて申請される方の多くが、ここで指摘されるのではないでしょうか。

また、Alexaスキルの説明欄に書く文章についても指摘を受けやすいそうです。申請時に、このスキルは何ができるのかといった説明を書いたドキュメントを提出するのですが、その体裁が、Alexaの標準機能と誤解させるようなものだと「これがスキルであることを明示的に書いてください」という指摘を受けてしまいます。説明文で「Alexa」という表現をしている部分を、「スキル」と直すだけで、指摘を受けにくくなるので、審査前に説明文を一度読み返してみるのをおすすめします。

Alexaスキルをリリースするなら今がチャンス

ここまでAlexaスキルの審査を通すために押さえておくべきポイントを紹介してきましたが、実際に審査を通ったエンジニア数名に話を聞くと、「審査に通るのはそれほど高いハードルではない」とのことでした。

この記事で取り上げたような指摘や、Amazonが求めるユーザーエクスペリエンスに関する資料、審査のチェック項目は公開されているので、きちんと確認できていれば審査自体は簡単に通るのではないでしょうか。

現在、AmazonはAlexaスキルの拡大に力を入れているようで、キャンペーンなども積極的に実施していますし、なにより審査のスピードにはどのエンジニアも驚いていました。

今年の9月にはディスプレイを搭載した画面付きのスマートスピーカー「Echo Spot」を利用したビデオ、音声通話やメッセージの送受信機能がリリースされました。2018年12月には、より大画面のディスプレイを搭載した「Echo Show」の日本発売が決まっています。Alexaスキルの機能も、よりリッチかつ生活に根付いたものが必要とされてくるでしょう。

Alexaスキルはニーズの多様化に対応しはじめる段階。このタイミングで、Alexaスキルの開発を経験してみてはいかがでしょうか。

(成田直翔)