簡単な業務から始めるのがカギ、一部でもRPAを適用してみよう
RPAの導入を円滑に進めるには、研修会などによって適切な教育を行って現場の積極性を生かせる環境を作るとともに、早い段階でメリットを感じてもらうことが重要だという。
「わかりやすく、かつ、手っ取り早くできる業務からRPAを導入して、そのメリットを実感してもらうのが重要だと思っています。頭で考えているだけでなく、動かしてみるとインパクトが違うのです。ある部署では、ロボットが動いているのを見たことによりRPAでやれそうなことを思いつくという流れもありました。なにより、手間の削減、業務の改善ができるという感覚が持てたことは大きな効果だと思っています」と井筒氏は語る。
RPAによって大きな効果を得ようとすると、業務全体を見渡して一気に自動化できるものを探してしまいがちだが、実際には業務の一部だけでもRPAを適用する意義はある。
「業務のどこかをロボットに任せられないかと考えることで、業務可視化のきっかけになります。大きな業務の一部はもちろん、ある業務の中の一定の割合だけでもいいのです。例えば、これまでFAXで受け取っていた書類のうち、相手に頼んでデータファイルをメールで受け取る形式に変更できた書類の処理のみをロボットに任せるというのでもいいでしょう。仕事のやり方や手続きは変えていい、処理の順番も変えていいからゼロベースで考えてみてほしいと伝えています」と潮見氏。
井筒氏も「エラーが出るというのならば、エラーが出た部分は人が対応してもいいのです。7割くらい自動化できるだけで変わります。人とロボットがやることを切り分けるやり方です」と語った。
みずほフィナンシャルグループでは、現場の職員が身の回りの業務を改善するためにRPAを自由に活用できるシステムを採用したため、「できそうだという気持ちにさせる」「手の届く範囲での活用を推奨する」というやり方は特に効果的なのだろう。
課題に対応しつつ、外部へのノウハウ提供も推進
みずほ情報総研はこれまでRPA導入サポートや、RPAに関するセミナー開催を行う中で、多くの企業が持っている疑問や不安も見えてきている。
「実のところ、これまでの経験を振り返ると、地味な課題が非常に多かった印象です。ロボットに任せて自動化というとスマートな印象がありますが、現実は泥臭いもの。準備や心構えによってトラブルを事前に減らし、スムーズな導入も可能になりますが、苦労はあります。RPA導入に際して、『どんな苦労があるのか』『苦労をどう乗り越えるのか』というノウハウをわれわれは持っていますので、よりよい導入をお手伝いできます」と、井筒氏は話す。
潮見氏も「きちんと動いていたロボットが突然止まるということは、珍しくありません。調査するとセキュリティパッチの適用が原因といったこともあり、現場での簡単な修正で対応できることが多いですが、ロボットを作成して1度稼動したら終わりではなく、稼働後もチューニングが必要だ、ということを常に意識しておくべきです。また、RPAを導入する場合は、必ずトライアル版での実地テストをしておくべきです」と、導入にあたっての注意点を語ってくれた。
現在、みずほ情報総研では10名ほどのRPA専任チームを設け、グループ企業向けの対応をするとともに、一般事業法人や自治体などの受託開発や研修の実施を通じたRPA導入サポートを行っている。
「グループ内ではセルフ型が2018年4月から本格稼働し始めたところなので、さらに拡大していきたいと考えています。現場担当が疑問点を確認できる相談窓口を設け、窓口に寄せられた疑問をQ&Aとして誰でも見られるようにしています。こうして蓄積したノウハウを外部にも展開していきたいですね」と、潮見氏はRPAビジネスの展望を語る。