茨城県科学技術振興財団は9月3日、「第15回 江崎玲於奈賞」の受賞者として、東京大学生産技術研究所(東大生研) 光物質ナノ科学研究センターの平川一彦 教授を選出したことを発表した。

同賞は、ナノテクノロジー分野において顕著な研究業績を挙げた研究者を讃えることを目的に設立されたもので、日本国内の研究機関においてナノサイエンスあるいはナノテクノロジーに関する研究に携わり、世界的に評価を受ける顕著な研究業績を挙げた研究者1名(原則)に与えられるもの。

選考方法は、江崎玲於奈氏や白川英樹氏、野依良治氏、小林誠氏、天野浩氏らノーベル賞受賞者などで構成される江崎玲於奈賞委員会による審査を経て決定され、平川教授の受賞の対象となった研究主題は「テラヘルツ技術の開拓によるナノ構造の電子物性解明の先導的研究」となっている。

テラヘルツ波は、ほかの電磁波と異なり、その活用がなかなか進まなかったが、近年、さまざまな分野での活用が進むようになってきた分野。半導体ナノ構造内の電子の量子準位のエネルギーや分子振動のそれと重なっているため、分光計測に適しているが、テラヘルツ波と単一のナノ構造との結合が弱いため、分光計測は容易でなく、解決すべき課題とされていたが、平川教授は、その課題を解決する手法を考案するなど、同分野での先導的な役割を果たしてきたことが評価された。

  • 東大生研の平川一彦 教授

    「第15回 江崎玲於奈賞」を受賞した東大生研の平川一彦 教授 (写真は2018年9月3日付けでNature Photonicsに掲載された研究成果の発表時に編集部が撮影したもの)