すでにリファラル採用を成功させている企業として登壇したのは、freeeのリクルーティンググループマネージャーである栗林由季氏だ。

  • freee リクルーティンググループマネージャー 栗林由季氏

「強制は一切考えていない。知人を紹介したくなる組織を作ることが、リファラルの一番の近道ではないかと考えてやっている」と結論から語った栗林氏は、freeeの具体的な取り組みを紹介した。

ベンチャー企業であることから知名度等が重要となる一般の転職市場での採用が難しかった創業期のfreeeでは、元々従業員の紹介で採用することが多かったという。結果的に企業規模が成長しても、採用の大半がリファラルやダイレクトリクルーティングといった自社採用である状態だった。

「一時期は半分くらいがリファラル採用、社員の友達という状態。当時もダイレクトリクルーティングはしていたが、応募がない、来ても欲しい経歴の人材ではないという状態だった。その後、特に施策を行わずにいたところ、リファラルの比率が大きく下がってしまった。そこで改めて採用について分析したところ、リファラルで採用した人は活躍がすごい、採用決定率が高いということに気づき、昨年はじめくらいから注力しはじめた」と、栗林氏はリフカムのサービスを導入するに至った経緯を語った。

そんなfreeeでリファラル採用を促進するために意識している点として挙げられたのが、3つの項目だ。1つ目は、オフィスに友達を呼ぶことのハードルを下げ、欲しい人材をしっかり伝えること。2つ目は採用の重要性や必要性をしっかり伝えること。3つ目が、協力者に感謝の気持ちと賞賛を伝えることだ。

  • リファラル採用を促進するための3つのポイント

「まず、入社時のオンボーディングの中で時間をもらい、社員紹介をやっている会社であることを伝えている。存在を知らない人が多いので、それを知ってもらうこと、友達はラフに呼んでいいということを知らせて抵抗をなくしている。転職してきた人の周りには転職を検討している人が多いので、入ってきたタイミングで伝えている」と栗林氏。

さらに、社員向けに夕食の弁当を無料支給するシステムが存在することを利用し、当日夕方までに注文すれば友人分も支給されるようにし、オフィスで一緒に夕食をとるという機会を創出している。社員と1対1の外食ではなく、オフィスに呼び込むことで職場の雰囲気を掴んでもらえるほか、社員同士のコミュニケーションに巻き込む形で紹介者以外との会話も促進できるという。

「誰が誰を呼んだというような履歴は追いかけていない。たまに人事が同席することを求められることもあるが、基本的には軽い気持ちでオフィスに来てもらうための施策」という栗林氏は、中には採用と全く関係なく単純に遊びに来る人もいると笑った。

また、必要としている人材についても、漠然としたエンジニアや営業といった職種ではなく、具体的なスキルや経歴について社内メディアで掲示。頻繁に社内SNSで人材紹介を求めていることを発信するなど、従業員側が動きやすい環境を整えている。

  • 入社時に社員紹介制度を解説する時間を持つ

リフカムのシステムを利用するためのリンクは各種発信時に添えているが、さらにアナログなカードも作成している。名刺大のカードを用意し、従業員に配布。freeeではエンジニアが勉強会に参加することを推奨している。そこで出会ったエンジニアに、自分の名刺と共に手渡すことを勧めているという。

  • リフカムのリンクの入ったカードを作成、社外の人へ渡しやすいようにしている

さらに公募だとなかなか手を挙げてはくれない人向けに、1on1のミーティングの機会を持つ、社内を回っていろいろな人と話すといった取り組みをしているという。

「採用時には社外に目を向けがちだが、私たちが採用したい人のモデルは社内にいる。そういう人と話すことでいろいろな気づきがあるので、社内のコミュニケーションをとても大事にしている」と栗林氏は語った。

感謝の気持ちや賞賛の表し方としては、年に1度行う周年パーティにおいて、リクルーティングアワードという項目を設けて紹介者を表彰するほか、紹介された人材にインタビューを行い社内記事化するなどしているという。また、決定時に社内発表することに加えて、紹介した人とされた人にだけ配布するスペシャルTシャツも作成している。

  • 紹介者と被紹介者にだけ配布されるスペシャルTシャツ

「私たちが意識しているのは、誰かに強制してやることではなく、組織全体から人を紹介したくなることが大事だと思っている。自分の大事な同僚や先輩、後輩を呼ぶとなると、自信を持って呼べる組織でないといけない。あくまでも、みんなが連れてきたい組織づくりに取り組んでいる」と栗林氏は講演を結んだ。

講演後は質疑応答の時間がもうけられたが、会場では熱心な質問が相次いだ。すでに紹介制度を持ってはいるがうまく活用できていないという立場や、具体的な導入を考えているという立場からの具体的な質問が多く、栗林氏は先行企業の担当者として裏技的な取り組みも交えて事例を語っていた。