ECサイト大手のAmazonが展開するオンライン決済サービス「Amazon Pay」が、実店舗でのスマホ決済サービスを29日にスタート。既存の「Amazonショッピングアプリ」のAmazon Payメニューから、QRコード決済で実店舗に支払いができるようになりました。

  • 店舗側のタブレット画面(右)と、ユーザーのスマホ決済画面(左)。QRコードが傾いているのはデザインとのこと

  • AmazonショッピングアプリのAmazon PayメニューからQRコードを表示させる

Amazonアカウントと連携する決済サービス

そもそもAmazon Payは、Amazon以外のサイトでも簡単に決済できるAmazonアカウントを使ったサービスとして、2015年5月よりスタート。開始当初は出前館と劇団四季の2サイトでしたが、約3年が過ぎた今では、導入ECサイトが数千社を超えるサービスに成長。2018年7月にはAmazon Payを利用することで、スマートスピーカーの「Amazon Echo(エコー)」や音声サービスの「Amazon Alexa(アレクサ)」で、日本赤十字への寄付ができる音声サービスも始まっています。

  • 3年間でAmazon Payを導入する事業者数や決済金額が大きく成長

Amazon Payが目指すところは”コネクテッド・コマース”。「オンラインやオフラインの垣根を越え、PCやスマホ、スマートスピーカーなどのデバイスの違いも越えて、利便性の高いショッピング体験を提供したい」と、記者説明会に登壇したアマゾンジャパン Amazon Pay事業本部 本部長の井野川拓也氏は語りました。

  • Amazon Payが目指す〝コネクテッド・コマース〟のイメージ図

  • アマゾンジャパン Amazon Pay事業本部 本部長の井野川拓也氏

狙う市場は現金決済の個人・中小店舗

Amazon Payでは、Amazon IDを使ってわずか2クリックでスピーディーにショッピングできます。しかもAmazonマーケットプレイスの出品者から安心して購入できるよう、保証プログラムも用意。このメリットはQRコード決済においても同様で、すでにAmazonショッピングアプリを利用しているユーザーなら、アプリをインストールすることなく、配送先やクレジットカード情報などを登録する手間もなく、すぐに利用できます。

支払い方法は、アプリからAmazon Payメニューを選択。ユーザー側のスマホに表示されたQRコードを、店舗側がタブレット端末で読み取るだけ。このQRコードは30秒ごとに変化する動的QRコードなので、撮影して悪用される心配が少ないところもメリット。

そんなAmazon Payの実店舗での決済を担うのが、様々なキャッシュレスソリューションを提供する「NIPPON PAY」の100%子会社「NIPPON Tablet」。狙う市場は、現金決済しか取り扱っていない個人店舗や中小店舗で、これまで開拓されなかったこの市場には、120万以上の店舗があるそうです。

  • Amazon Payの実店舗でのスマホ決済が狙う市場

これらの店舗がキャッシュレス化しなかった理由は、システムを導入する初期費用の高さ、売上金回収の遅さ、手数料の高さ。この3要素を踏まえ、同社では通信SIMカード付きのタブレットを加盟店に無料レンタル。加えて「Amazon Pay実店舗向けサービス開始キャンペーン※」により、2020年末までの加盟店の決済手数料を0%に。そして売上金の入金を最短翌日にするなど、サービスの拡充を行います。
※2018年12月末までにAmazon PayとNIPPON Tabletの無料レンタル申し込みを同時に行った店舗が対象

  • 未開拓市場の店舗がキャッシュレス化しない3つの理由

  • キャッシュレス化しない3つの理由を解決するサービスを展開

手数料0%キャンペーンの競争が激化。一歩抜きん出たAmazon Pay

決済手数料0%キャンペーンは、すでに「LINE Pay」やソフトバンクとヤフーが2018年秋に提供を開始する「PayPay(ペイペイ)」が発表しています。

ただ、両サービスが手数料だけなのに対して、Amazon Payではタブレットのレンタル料も期間中無料になるので、加盟店の負担が純粋にゼロ円になるところが異なります。「タブレットには遠隔操作するためのソフトウェアと通信SIMカードがインストールされているので、アップデートする手間なく利用できます」と、NIPPON PAY代表取締役の高木 純氏。加盟店サイドのタブレット操作の手軽さについても言及しました。

  • NIPPON PAYの創業者で代表取締役の高木純氏

Amazon Payの実店舗での決済サービスは、東京の早稲田エリアからスタート。実証実験を行う福岡県福岡市を始め、全国の16自治体と共同でタブレットを配布する商店街活性化プロジェクトも展開します。全国141社のタブレット設置推進パートナーがコミットするタブレットの台数は67,000台を突破。8月29日のサービス開始当初は利用できる店舗が少ないものの、商店街や街単位で急速にサービスが広がっていくことが予想されます。

  • 141社のタブレット設置推進パートナーと共に加盟店拡大を狙う

Amazonサイトのスマホ利用者数は約3,700万人(アプリとWebサイト含む)とも言われているので、すでに多くのアプリ利用ユーザーを抱えた状態からのスタートとなって有利。とはいえ、一気に利用店舗を増やせる大手チェーンではなく、個人店や中小店舗を狙うだけに、加盟店をいかに増やせるかが課題となります。

Amazon Payのライバルは、LINE PayでもPayPayでもなく”現金”。2020年末のキャンペーン期間中に、決済の早さやレジ締めの手軽さなど、いかにキャッシュレス化の魅力を加盟店に感じさせられるかがポイントです。

同時に利用者を拡大する施策も必要となるので、現在、様々なサービス会社が行っているユーザー向けのお得なキャンペーンを、Amazon Payでも行うことが考えられます。いかに加盟店が広がっていくのか、ユーザー向けキャンペーンは実施されるのかなど、今後の動向に注目しておきましょう。