優れたデザインと使いやすさ、それにiPhone人気に助けられるかたちもあって、学生や開発者の間ではMacの人気が非常に高いが、企業では今もなおWindowsのシェアが高い。「できれば仕事でもMacを使いたいけど、Windowsがなかったら仕事にならないから、Windows PC買うしかないか」と、諦めてしまった人もいるだろう。だが、実はMacでもWindowsが動かせるとしたらどうだろうか。本連載では、MacでWindowsを動かす方法を紹介。その中でもベストな方法について、数回に分けて詳しく紹介していこう。

MacでWindowsは動くの?

いきなりだが、最初に結論から述べておこう。

「MacではWindowsが動作する」。

  • MacBook Air上でWindows 10が動作している、の図。コラではありません。ちゃんと動いてます

もちろん、これだけでは説明が足りなすぎるので「はい解散」、というわけにはいかない。もう少し詳しく解説しよう。

一般に「Mac」とか「Windows」というのは、主に動作するOS(オペレーティングシステム)のことを指している。OSというのは「基本ソフト」ともいうが、コンピュータを動かし、画面を描いたり、マウスやキーボードの操作を受け付けたり、アプリを動作させる方法を提供するもので、Mac(macOS)やWindowsのほかに「Linux」とか「Android」というのもOSに数えられる。

このうち、macOSは市販されておらず、また入手したとしても、その辺のWindowsマシンにインストールすることはできない(手段がないわけではないが、ここでは割愛する)。一方Windowsは、OS自体が単体でも市販されており、自分でパーツを集めて作った「自作PC」にもインストールできる。そして重要なことだが、Macにインストールすることもできるのだ。以前のMacは、CPUがWindows PCと異なる独自ハードだったのだが、現在のMacはほぼWindows PCそのものと言っていい。それゆえにWindowsを動かすのも可能というわけだ。

macOSはAppleが自社製のパソコンを動かすために専用で作ったものであるのに対し、Windowsは様々なメーカー(自作PC含む)の差異を吸収して動作するように作られた汎用性の高いOSなので、このような違いが出てくるわけだ。いずれにしてもMacのハードウェア(MacBookとか、iMacとか)でWindowsのOSが動作するということは間違いない。「Mac on Windows」はできないが、「Windows on Mac」は可能、というわけだ。

  • ハードウェアとしてのMacはほぼWindows PCとは言ったが、厳密には「Windows PCのある特定の構成」と言える。macOSはこの構成に特化しているため、サポートしないハードウェアを含むWindows PCにはインストールできない、ということになる(政治的な問題も含むが)

動くって言っても、何か問題あるんじゃないの?

さてMacでWindowsが動作することはわかったわけだが、世の中そんなにうまい話は転がっていないはず。何か問題あるんじゃないの?とお疑いの方もおられるだろう。特に少し詳しい人は、「Macで使うマウスは1ボタンだし、キーボードもWindowsと少しキー配置が違う。専用の周辺機器もあるし、動かないのでは」と思うだろう。

ところがどっこい、何も問題ありません。

MacでWindowsを動かす手段はいくつかあるのだが、いずれにしてもその手段の側で、MacのハードウェアをWindowsで動かすためのドライバーソフトなどが提供されるので、Magic MouseやMagic Trackpadといった、Mac専用のハードウェアもMacで使い慣れた方法で動作してしまう。これまでMacを使ってきた人は、使い慣れた操作方法をそのままWindowsでも使い続けられるのだ。

逆にWindows用の周辺機器が動くのか、という点については、そもそもWindows自体は何も改変されていないものなので、こちらもばっちり動作する。多ボタンマウスやゲームコントローラー、タブレットなど、一般的なUSBで接続できる機器類であれば、こちらも何ら問題はない。現行のMacにはPCI Expressスロットなどがないため、拡張性は低めだが、これはWindowsであってもノート型/一体型に共通する制限なのでやむを得ないところ。

ソフトウェアの互換性についても、Officeなどはもとより、開発ツール、ゲームのようにハードウェアに近いところで動作するようなものでも、問題なく動作する(もちろん、性能面での制限はあるが)。よほど変な作りのソフトでもない限り、100%の互換性が保証されていると思っていい。

そもそも、最近はMicrosoftの開発者が、自社の開発者向けカンファレンスでMacBookを持って登壇するような時代だ。Macを「ちょっとデザインがかっこいい高級Windows PC」として使っても、何ら問題はないのだ。

結論:Macを買おう!

MacはWindows PCと比べて本体の価格が高めに設定されているが、これはそもそものハードウェアが高性能なパーツ構成で組まれているためだ。Macの場合、MacBookシリーズの最下位モデルを除けばすべて、Core i5シリーズ以上のCPUが搭載されており、格安Windows PCに多いPentiumやCeleron、Core i3シリーズよりも基本性能が高い。グラフィックについてもゲーミングPCほどではないにせよ、MacBook ProシリーズやiMacの27インチモデルにはRADEONシリーズのGPUが搭載されており、最高設定にこだわらなければゲームも快適に遊べる。もちろん、こうしたハードウェア的な特徴は、Windowsにも恩恵を与えるわけだ。

というわけで、「Macじゃ仕事できないかもなあ」などと思っていた人は、安心してMacを買っていただきたい。その上で予算を少しだけ足してWindowsを購入するのが、幸せへの最短コースなのだ。

さて、WindowsがMacでも動作することはご理解いただけたと思うが、「じゃあ具体的にどうするんだよ」という点については、次回以降にご紹介する。