この4月、富士フイルムが発表したニュースが写真愛好家に大きな衝撃を与えました。Webサイトに掲載された「黒白フィルムおよび黒白印画紙 販売終了のご案内」と題したお知らせで、モノクロームフィルム「ネオパン 100 ACROS」や黒白印画紙「フジブロWP」の出荷を今年の10月で終了することが告知されたのです。

  • 富士フイルムが10月での出荷終了を発表したモノクロームフィルム「ネオパン 100 ACROS」

富士フイルムのネオパン 100 ACROSの紹介サイトには、「ISO100としては世界最高水準の粒状性と豊かな階調、優れたシャープネスを備えていますので、ポートレート、風景写真、建築写真、商品写真から顕微鏡写真や複写用途に至るまで幅広い分野の撮影に適しています」という説明があります。私もフィルムカメラに詰めて撮影したことがありましたが、まさにその説明通りの内容で、根強い銀塩フィルムファンに支持されていました。その銘フィルムが買えなくなることが発表されたので、大きな騒ぎとなったわけです。

フィルム市場が急速に縮小していたのは事実ですし、時代の流れに合った判断といえるでしょう。

しかし、この描写がもう味わえなくなるわけではありません。富士フイルムのミラーレス一眼「FUJIFILM X」シリーズの一部機種は、フィルムシミュレーションに「ACROSモード」が追加されており、最新のカメラとレンズを使ってネオパン 100 ACROSの描写が楽しめるのです。

  • 最新モデル「FUJIFILM X-H1」をはじめとするXシリーズの一部機種は、フィルムシミュレーションに「ACROSモード」が追加されており、最新カメラと最新レンズの組み合わせでACROSの表現が楽しめる

そこで今回は、最新ミラーレス一眼「FUJIFILM X-H1」を使い、惜しまれながらフェードアウトしてしまうACROSの味をX-H1で楽しんでみることにしましょう。

  • 著名アーティストによる意匠が施されたトンネルをACROSモードで。白い部分から黒い部分まで豊かな階調は、まさに銘フィルム「ACROS」の味わいです(XF10-24mmF4 R OIS使用、ISO200、1/6秒、F4.0、-1.33補正)

  • 静かな公園を流れる水路のカーブを写してみました。湿気を帯びた草の様子がACROSモードならではの描写です。水面の雰囲気もいい感じですね(XF10-24mmF4 R OIS使用、ISO200、1/5秒、F7.2、-1補正)

  • 古民家カフェでアンティークの時計を撮りました。シャープさの中にどことなく柔らかさが同居して、心地よい絵作りになっています。白と黒の調子もいい塩梅です(XF56mmF1.2 R使用、ISO200、1/500秒、F1.2)