京都大学(京大)は7月5日、瞑想実践者の脳活動をMRI装置で測定した結果、洞察瞑想時に腹側線条体と脳梁膨大後部皮質の結合性が低下することを発見したと発表した。

同成果は、京都大学教育学研究科の藤野正寛 氏と野村理朗同 准教授、こころの未来研究センターの上田祥行 特定講師、情報学研究科の水原啓暁 講師、人間・環境学研究科の齋木潤 教授の研究グループによるもの。詳細は英国の学術誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

  • 集中瞑想時と比較して、安静時から洞察瞑想時にかけて、左腹側線状態との結合性が低下した脳梁膨大後部皮質を中心とした脳領域を示している

    集中瞑想時と比較して、安静時から洞察瞑想時にかけて、左腹側線状態との結合性が低下した脳梁膨大後部皮質を中心とした脳領域を示している (出所:京都大学Webサイト)

健康や幸福感を高めるマインドフルネス実践法への注目が高まっている。マインドフルネス実践法は、特定の対象に意図的に注意を集中する集中瞑想と、今この瞬間に生じている経験にありのままに気づく洞察瞑想から構成されている。そして、何かに囚われて心がさまよう状態(マインドワンダリング)を低下させたり、日々の健康や幸福感を高めることに貢献することが示されている。

しかし、集中瞑想や洞察瞑想の心理メカニズムや神経基盤はまだ明らかになっていない点が多くある。従来、「意図的に注意を集中する」ことの心理メカニズムや神経基盤の解明は進んでいたが、「ありのままに気づく」ことの心理メカニズムや神経基盤は解明されていなかった。

そこで今回の研究では、集中瞑想との比較を通じて、洞察瞑想の神経基盤とその背後にある心理メカニズムの解明を試みた。まず、集中瞑想と洞察瞑想を区別して実施できる瞑想実践者の洞察瞑想時の脳活動をMRI装置で測定。その後、線条体と他の脳領域間の関係を調べる手法である機能的結合性解析を実施した。

その結果、洞察瞑想時に、自分の過去の経験に関する記憶に囚われる程度と関係していると考えられる、腹側線条体と脳梁膨大後部皮質の結合性が低下することを発見した。 この結果は、今この瞬間に生じている経験に「ありのままに気づく」際に、自分の過去の経験に関する記憶に囚われる程度が低下していることを示唆するとしている。

今回の成果を受けて研究グループは、今後、洞察瞑想によって自分の過去の経験から自由になれるという観点から、マインドフルネス実践法が日々の健康や幸福感を高めるメカニズムを解明することが期待されるとしている。