北海道大学は、ウマが、ヒトの表情と声を関連づけて感情を読み取れることが明らかになったと発表した。

この成果は、同大学学大学院文学研究科の瀧本彩加准教授、東京大学大学院総合文化研究科修士課程2年の中村航介氏、長谷川寿一 元東京大学教授(現・独立行政法人大学改革支援・学位授与機構理事)の研究グループによるもの。詳細は、科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

ウマは本来、仲間同士で群れを形成して暮らしている。近年の研究では、形成した群れの仲間の表情や声から感情を読み取るなど、高いコミュニケーション能力を持つことがわかってきている。

また、ウマは、約5500年前に家畜化されて以降、ヒトにとって、移動や輸送といった使役家畜としての役割だけでなく、スポーツやレジャーにおける伴侶動物としての役割も担ってきた。近年、ヒトの身ぶり手ぶりや表情に敏感であることがわかってきているというが、表情と声を関連づけて感情を読み取ることができるかは検証されていなかった。

これを受け研究グループは、期待違反法という手段を用いて調査した。まず、ヒトの「笑顔」または「怒り顔」をスクリーンに映し出し、その人が「褒めるトーン」または「叱るトーン」でウマの名前を呼ぶ声を、スクリーンの裏に設置したスピーカーから再生することで、表情と声の感情が一致している場合(感情一致条件)と一致していない場合(感情不一致条件)で、ウマの反応がどう変化するかを調べた。

また、ウマに見せる表情や聞かせる声は、そのウマと親しい人のものと知らない人のものを準備して、それぞれに対する反応も確認したという。

  • 調査の概要。感情不一致条件の場合、ウマはヒトの声に素早く反応した。(出所・北海道大学Webサイト)

    調査の概要。感情不一致条件の場合、ウマはヒトの声に素早く反応した。(出所・北海道大学Webサイト)

この結果、自身と親しい人かどうかに関わらず、ヒトの表情と声の感情が一致しているときよりも、一致していないときの方が、声に約1.6~2.0倍素早く反応することが判明。また、自身と親しい人については、表情と声の感情が一致していないときに、声が聞こえてきた方を約1.4倍長く見続けることも確認できた。このことから、ウマは、ヒトの表情と声の感情が一致していないことに違和感をもったといえるという。

今回の研究により、ウマは、自身と親しい人だけに限らず、ヒトの表情と声を関連づけて感情を読みとることが明らかになったことから、研究グループは今後、伴侶動物とヒトの絆形成を支えるコミュニケーションが解明されることで、伴侶動物のコミュニケーション能力について正しい知識を持ち、より適切に接することが可能となるとしている。また、これにより、伴侶動物の福祉にも配慮した、真の意味での伴侶動物との共生への貢献が期待できるとしている。