時代に即したあらたなコミュニケーション手段として、注目を集めるブランデッドムービーだが、企業はどのように活用すればいいのだろうか。

高岡氏「ひとことにブランドと言っても、生まれたばかりのブランドから大企業が持っている知名度の高いブランドまでさまざま。人間でいうライフステージのようなものがあり、ステージに応じてコミュニケーション戦略は変わってきます。ECのなかった時代では小さなブランドはお店に並びませんでしたが、今はECでいくらでも注文が取れる時代。テレビでCMを流さなくても、コストの安いショートフィルムで話題性を喚起して、ネットで注文してもらうことができるのです」

  • ネスレ日本 代表取締役社長 兼 CEOの高岡浩三氏

ブランデッドムービーの場合、テレビCMのように大きなコストはかからない。ブランドや商品によってはマスで情報を流す必要がない場合もあるのだ。ただし、大きなブランドだからといってテレビCMを利用すればいいとは限らない。

高岡氏「たとえば、ネスカフェは皆さんすでにご存知ですし、今さらテレビCMをやってもこれ以上の売上には結びつきません。それよりも、人生を振り返り“こんなとき、ネスカフェの世話になっていたんだな”と、思ってもらえることがブランドの大きな財産になります。そう感じていただければ、お客さまは離れないのです。そこで、ネスカフェではそのブランド体験を伝えるために、黒木瞳さんに『わかれうた』というブランデッドムービーを手がけていただきました」

『わかれうた』前編

『わかれうた』後編

では、CMを使うのはどのようなシーンなのだろうか。

高岡氏「もちろん、大きな企業でも知名度が大事であればCMをやるべきです。たとえば、ネスレのネスカフェ アンバサダーとウェルネス アンバサダー。すべて注文はネットなのですが、最初に『ネスカフェ アンバサダーってなんだ?』というアウトラインを伝えるために、テレビCMが必要でした。このように現在では、知名度の有無やブランド規模の大小によって、コミュニケーションの手法を選択できるようになったので、それらをいかに効果的に使うかが、企業やマーケターの腕の見せどころですね」

別所氏「選択肢が増えてきたという印象は私もありますね。現在、ブランデッドムービーはクリエイターや広告代理店、クライアント企業など、みんなで知恵を絞って答えを出していこうとしていて、一番おもしろいフェーズにあると思います。さまざまな作品が発生していく状態が続くと思いますが、早く乗ったもの勝ちでしょう」

  • ショートショートフィルムフェスティバル & アジア代表の別所哲也氏