ファーウェイ・ジャパンが発表した新しいAndroid搭載スマートフォン「HUAWEI P20」と「HUAWEI P20 lite」。NTTドコモが独占販売する最上位モデル「HUAWEI P20 Pro」も合わせて、6月15日に一斉に発売されます。

P20シリーズ発売の経緯や今後の戦略などについて、ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏に話を聞きました。

―― P20 Proがドコモ独占になったのはどういう背景なのでしょうか。

日本におけるスマートフォンの販売は、80%が3大キャリア経由です。キャリア経由ですと端末に購入補助が出ます(編注:NTTドコモの月々サポートなど)。ドコモさんからの販売は、かなり長い期間、協議を重ねてきました。秘密保持契約を結んでいるので、どちらから持ちかけたかといった詳しい話はできませんが、キャリアからの販売があっても、SIMフリーも同様に重要視して取り組んでいきます。

  • ファーウェイの呉波氏

―― P20 ProをSIMフリーとして販売して欲しいという要望も聞かれます。

SNSなどでは、P20 ProのSIMフリー版を望む声が多かったのは把握しています。ただ、P20は、カメラ機能はP20 Proに遜色ありません。ライカレンズ、AI機能も同様に取り入れており、機能面では同等です。P20を体験してもらえれば、満足していただけると思います。

―― キャリアの取り扱いが増えたことで、販売台数はどの程度増えるとみていますか。

ファーウェイは2014年にSIMフリー市場に参入して、MM総研の調査による出荷台数は100万台です。P20 ProやP20 lite、Mate 10 Proはキャリアからも販売されるので、出荷台数は大きく飛躍するとみています。

P20 liteはSIMフリーとキャリアの双方から販売されます。キャリアの販路は広く、ショップの数、ユーザーの“がっちり度”など、SIMフリー市場に比べて大きくなります。SIMフリーは販路が異なるため、比較は難しいと思います。どちらも売れることが一番いいですね。

BCNの直近データでは、すべての販路で見た場合、売り上げの1位はドコモさんのiPhoneでしたが、P10 liteが第2位に付けていました。P liteシリーズは、消費者の中で大きな存在になっています。

世界では、P liteという名前の製品も出ているぐらいですし、日本市場でも販売開始から1年以上安定して売れている製品です。P20 liteは販路も拡大しましたし、より消費者にリーチできるため、P10 liteよりも期待できると信じています。

  • HUAWEI P20(右)とHUAWEI P20 lite

―― 今回発表されたサポート拠点の拡大ですが、SIMフリーのみということで、キャリア端末の購入者が混乱するのでは。

サポート拠点は、SIMフリーのみの対象です。確かに消費者にとっても混乱しやすい状態です。次に解決していきたい課題として認識しています。良い製品、良い価格であっても、サービスが悪くてはユーザーが離れていってしまいます。

今回、SIMフリーのみが対象なのは、基本的にキャリアを通して買った製品は、キャリアのアフターサービス拠点だけが受け付けてきたからです。キャリア経由で販売された端末は、所有権がメーカーではなくキャリアに移っています。キャリアの色々なサービスを搭載しているからです。

今のところ、サービス拠点がSIMフリーのみなのは、所有権が100%ファーウェイ(メーカー)にあるからです。我々が取り組まなければならないのは、技術面のイノベーションだけでなく、サービス面でのイノベーションなのです。

  • ファーウェイのサポート拠点(SIMフリー端末向け)が大きく拡大

―― ドコモ版P20 ProとP20などのSIMフリー端末で、UIが異なっている部分があり、従来のユーザーが悩みそうですが……。

キャリア向けに出している端末には大幅なカスタマイズがされています。そのため、所有権はキャリアのもので、購入補助がつきます。中国のことわざに「魚と熊の手は同時に持てない(魚和熊掌不可兼得)」というものがあります。二兎を追う者は一兎をも得ずという意味です。キャリア市場とSIMフリー市場は状況が大きく違います。どちらも兼ね備えることは難しくなります。

我が社としてできることは、ファーウェイの端末でより良いユーザーエクスペリエンスを実現することです。

ただ、SIMフリーは決してやめません。グローバルでのファーウェイの事業展開も、他国はすべてオープンマーケット(SIMフリー市場)がメインです。今後も継続的にSIMフリー市場に取り組んでいくスタンスは揺るぎません。もちろん、キャリアを通してもふさわしい製品を提供していきます。

ただ、どういった端末がキャリア製品になるかは、メーカーではなくキャリアに決定権があります。メーカー側としてできるのは、常にしっかりと用意して、準備万端で備えることだけです。

―― 高額な製品はキャリア経由、安価な端末はSIMフリー向けになるのですか。

一部は正しいと思いますが、戦略をすべて反映しているわけではありません。SIMフリー向けのP20もフラッグシップモデルです。今後も継続的にこうしたハイエンド端末をSIMフリーとして提供していきます。

キャリア市場でも変化が見られ、これまではフラッグシップがメインだったのですが、近年はミドルクラスの扱いも増えてきました。そのため、製品戦略は市場変化に応じてダイナミックに行っていきます。常に市場の変化を敏感にとらえて見極めないと、生き残れないのです。

―― XperiaやGalaxyのように、ほかのキャリアからP20 Proがでたり、P20 liteがドコモからでたりといったことはあるのでしょうか。

確かに、そういうことがあれば販売台数もさらに増えるでしょう。今回、ドコモさんからP20 Pro、auさんからP20 lite、ソフトバンクさんからnova lite 2とMate 10 Proというのは、協議した結果です。

XperiaとGalaxyは成功していますが、市場のシェアが大きく変わったかというとそうでもないので、ものすごく成功したともいえないと思います。Android陣営でいうと、今はまだiPhoneのようにひとつのモデルで3大キャリアに採用され、しかも3社とも非常に売れたというレベルには達していません。

Android陣営の一員としても、ファーウェイ単独で見ても、Android陣営の各社にとって台数、シェアの増加は過大ではないかと思います。

―― ひとつのモデルでキャリアに提供した方が効率はよさそうだが。

グローバル戦略で見た場合、ひとつのモデルが広くグローバルで販売されることは、端末メーカーとしても部品サプライヤーとしても理想的な結果です。どんなに細かい変更点でも、ライン上では大きな変更になってしまいます。

実際は、グローバル市場では地域、国、通信事業者によってニーズが違うので、ひとつのモデルですべてに対応させるのは難しいのです。これまで経験した50以上の国では、事業者はみな「独占でやりたい」といいます。メーカーとしては避けて通れないので、どこでバランスを取るかということになります。

―― 日本市場とグローバル市場での一番の違いはなんですか。

グローバル市場ではスマートフォンは正三角形で、値段の安いスマートフォンが一番多く販売され、高い端末になるほど台数は減ります。4年前の日本は逆三角形でした(編注:高価なハイエンドモデルが売れていた)。

しかし、SIMフリー市場がスタートして、徐々に逆三角形が砂時計のような形になっています。日本の要求基準は世界的に見ても最大限に厳しく、製品へのニーズも、価格やブランドが(グローバルと)大きく違います。

例えば、他国では大画面ではあるほど販売台数は増えますが、日本市場ではそうではありません。電車で通勤する文化があるので、片手操作が重要な要素として考えられています。単に大画面なら売れるというものではありません。これが他国との違いです。

―― App Gallery(海外で提供されているWebサービス)についての話がありました。

今日お伝えできるのは、1~2カ月以内に、メディアの皆さんにApp Galleryのことをお話ししたいということです。日本の消費者に対して、より多彩な、無料のリソースを提供できるというものです。

アプリに限らず、ほかも含めてです。無料の選択肢が増えるということです。アプリやゲームの開発者にとって、ファーウェイが無料のプラットフォームを提供しますので、世界に向けて自分たちの開発したものを発信できるようになります。

App Galleryは、100以上の国で展開しています。日本の皆さんもこのプラットフォームを通して、100カ国以上の消費者にリーチできます。今日お話しできるのはここまでですが、これも日本市場に対するコミットメントのひとつです。

―― ありがとうございました。