現在のiMacのラインアップは、前述の通りアルミニウムとガラスで構成された本体を持つ製品で、21.5インチのフルHD解像度、同じく21.5インチの4K解像度、そして27インチの5K解像度の3種類が用意されている。昨年のWWDC 2017で発表されたが、処理性能をさらに高めたiMac Proが27インチモデルに加わった。

  • おなじみの現行iMac

現在、21.5インチのフルHDモデルは米国では1099ドルで用意され(日本での実売価格は税別120,800円)、2.3GHz Intel Core i5、8GBメモリ、Intel Iris Plus Graphics 640、500GBハードディスクというスペックを実現している。ノートパソコンより十分に大画面で、電源を差し込むだけで使い始められるコンピュータとして、いまだに十分魅力的といえる。

Macは、PC市場全体の成長の停滞、あるいは市場の縮小に対して、販売台数の面で引き続き成長を維持している数少ないブランドだ。Apple全体の戦略から超廉価版の用意こそないものの、ミドルレンジとモバイルノートの充実で販売台数を伸ばしている。

MacはiPhoneアプリを開発するためには必ず必要で、iPhoneの販売台数が伸び、特に新興国での需要が高まれば高まるほど、新規ユーザーに対する販売が伸びていくという「仕組み」を手に入れた。

だが、2016年の春ごろまでは、Macのラインアップ全体に対して「開発を軽視している」との批判がユーザーから上がっていた。特に、プロユーザーからは選択肢の少なさや最上位機種のMac Proの停滞などから、パフォーマンス面でこのままMacプラットホームにいることがリスクになるとさえ感じさせたのだ。

そこでAppleは、2017年6月にMacBook Proの1年未満での刷新と、iMacのグラフィックスや処理性能を中心とした性能向上で、VR編集にも対応できる処理能力を手にした。また、iMac Proを登場させ、より処理性能が高いMacを求めるユーザーの期待に応えようと努めている。ただし、2017年6月に発表されたiMac Proが発売されたのは、12月に入ってからだった。

おりしもWindows PCは、Microsoft主導によりタブレットとPCを融合させた2-in-1のコンセプトや、処理性能とグラフィックス能力を高めたゲーミングPCが市場をけん引している。いずれも、一般的なコンピュータよりも高い付加価値を持つ製品であり、利益率を高めることができる。ゲーミングPCは、より高い性能を求めるクリエイティブプロが比較的安価に高性能マシンを手に入れられるとして、一躍注目のカテゴリとなった。

Appleは、iMacを含むMacのラインアップで、これらのトレンドに一切関わることができていない。iPadを擁するAppleは、タッチディスプレイやペン対応をMacに持ち込まないことを明言し続けているし、母数の少なさからゲーム開発者やタイトルが伸びないMacがゲーミングPCとしての側面を追いかけることもできないからだ。

ユーザーへの期待には少しずつ応えているものの、沈みゆくPC市場における数少ない活況のカテゴリを見過ごしているのが、現在のiMacといえる。

主導権を取っていくには

iMacを含むMacの性能を高められるかどうかはIntelチップ次第であり、それがAppleのアキレス腱になっている。これが遅れたり、最適なものがリリースされてこなければ、Appleは新しいMacを出せない状態だ。もちろん、競争の条件は他のWindows PCメーカーと同じだが、より高い付加価値と価格を保ちたいAppleからすれば、思うように勝負できない状態が続いている。

そのため、MacにはApple製チップの搭載がたびたび噂されている。iMac Proには、Appleが開発するT2チップが搭載され、システムやディスクセキュリティ、オーディオ、FaceTimeカメラなどの統合コントローラーとして活用されている。2016年発売のMacBook Proにも、Touch IDやTouch Barを実現するT1チップが入っている。今後のMacには、Intel製ではないApple独自のチップが持ち込まれ、その役割はさらに拡大していくことになるだろう。

iMacを取り巻く環境は、今後もさほど大きな変化は訪れないだろう。それは、決して良いことばかりではない。ユーザーのニーズやコンピューティングの変化に対応した最良のポジションを追求しなければ、いつか他社の製品によってその役割を奪われてしまうことを意味している。