「IoT」という言葉が浸透し、さまざまなモノがインターネットと接続され、利便性や効率化のために活用されている。こうしたIoTの広がりを受けて、いま、必要とされるスキルを持つ人材が不足しているという。

そんな中、組込みシステム技術協会は、IoT時代に対応可能な人材の発掘・育成をねらいとした新コンテスト「IoTイノベーションチャレンジ」を発表。5月31日、その開催意図などを記者説明会で明かした。

IoT時代に求められる次世代エンジニアとは?

組込みシステム技術協会は、組み込みシステムのソフトウェアエンジニア育成を目的とした「ETロボコン」を14年以上にわたり行ってきた。

「IoTイノベーションチャレンジ」はETロボコンとは別枠のコンテスト。前身の「組込みIoTハッカソン」を、目標設定などの見直しを経てリニューアルしたものとなっている。

  • ETロボコン(2部門制)と、IoTイノベーションチャレンジは、異なる狙いを持つコンテスト

    運営主体は同じだが、ETロボコン(2部門制)と、IoTイノベーションチャレンジは、異なる狙いを持つコンテスト

同協会の渡辺博之理事は、このたびの新コンテスト発表の背景には、「日本が今後、グローバル視点で見た際に、産業のリーダーになるか、ジリ貧になるかという分岐点」が現在であるという危機感があるという。日本全体として、日々の納期などに追われ、周囲を見渡すことができないムードに陥っていると指摘。現在進行している第4次産業革命の核となる技術に、コンテストを通してテーマとしてきた「IoT」がある。

  • 日本の立ち位置が「産業のリーダー」になるか、「ジリ貧」になるかの瀬戸際が今だと、経済産業省は警笛を鳴らしている

    日本の立ち位置が「産業のリーダー」になるか、「ジリ貧」になるかの瀬戸際が今だと、経済産業省は警笛を鳴らしている

組込みシステム技術協会の渡辺博之理事

組込みシステム技術協会の渡辺博之理事

第4次産業革命によって実現される未来社会の構想として、日本では「Society5.0」、ドイツでは「Industrie 4.0」、米国では「Industrial Internet」といったものが掲げられている。中でも、製造業の進化に焦点を絞った「Industrie 4.0」は、成果を上げている成功例として注目されている向きがある。

  • 各国でなされている第4産業革命への取り組み。

    各国でなされている第4産業革命への取り組み。日本としては、Googleなど第3次産業のメインプレイヤーを欧米に先取された「失敗」を取り戻したいというもくろみもある

  • 「Society5.0」コンセプトの整理図

    「Society5.0」コンセプトの整理図

一方、日本では近年、「Society5.0」の実現に向け、製造からインフラ、医療まで産業間をつなぐ構想「Connected Industries」を推進している。自動運転、ロボット、バイオテクノロジーなど、産業間の垣根を越えたデータ活用により、課題を解決していくというもので、渡辺理事は先述のように注目されている「Industrie 4.0」と比較し、「日本の勝ち筋は、産業だけに留まらない範囲を包含する『Connected Industries』にある」とした。

そして、これまでセグメント化していた産業同士をつなぎ、データ取得から活用までを実現するために、システム全体を俯瞰して見られる人材、つまり「ビジネスのデザインができる人」が足りていないと言及。こうした

技術を学ぶための教育的コンテスト

IoTイノベーションチャレンジ運営委員の小林靖英氏

IoTイノベーションチャレンジ運営委員の小林靖英氏

続いて、IoTイノベーションチャレンジ運営委員の小林靖英氏が、コンテストの概要について紹介した。コンテストと言うと作品の優劣を競わせるイメージが先行するが、同コンテストに関しては技術を実際に使って学ぶことに主眼をおいているとのこと。「考え方や世の中の流れを含め、活動する中で学んでいく教育的側面が強い」と語った。

参加者は、慶應義塾大学、名古屋大学、経済産業省などから招聘された講師より、ビジネスイノベーション、デザイン思考、ビジネスモデル、モデルベース開発などの各ジャンルの先駆者による教育を受け、テクノロジーをビジネスとして形作るための知識を学ぶことができるとしている。

実施スケジュールとしては、まず7月下旬~9月初旬にかけて行われるセミナー、講義、ワークショップなどの学びの機会に参加。課題はその後、9月下旬に発表(予定)。およそ1か月の準備期間中にサービス/プロダクトのビジネスモデルを作り上げ、11月14日~16日にかけて実施される展示会「ET2018/IoT2018」内にて、作り上げたサービス/プロダクトの構想を発表を行う。発表の実施は11月16日。

必須事項は、「センサー、ネットワークの試用によるIoT実現」、「課題ペルソナの詳細化(ストーリー)」、「アーキテクチャ設計モデル(記述)」。審査対象はユーザー視点、ビジネス視点、新規性、独創性となっており、動作は必須ではない。これはビジネスモデルの作り込みを優先したためで、設計を行うことを禁止するものではないという。

参加費は一般企業が10万8,000円、JASA会員企業あるいはET/IoT出展社が5万4,000円、高専、専門学校、大学、大学院などは4万3,200円(代表者となる教職員の参加必須)。

参加にあたっては3~5名のチームを構成(教職員は除く)する必要があり、参加者全員が18歳以上で、開催期間中にチームの最低1名が必ず教育機会(平日日中の開催、1日あたり3~4回の講義を想定)、課題発表、プレゼンテーションなどに出席することが条件となる。PCやソフトは参加チームが用意する想定だが、希望に応じて、スポンサー企業から提供を受けた製品・サービスを利用することも可能となるよう調整中で、スポンサーは目下募集中とのことだった。

  • 参加資格

    参加資格

  • スポンサーシップの内容

    スポンサーシップの内容

なお、6月20日 10:30~11:45に参加者・協賛検討者の双方を対象とした説明会の開催が決定した。詳細は同コンテストWebサイトにて参照のこと。

IoTをビジネス視点で包括的に把握できる人材育成の場として、同コンテストは果たしてどのようなかたちで社会に波及していくのか。「Connected Industries」の実現に欠くべからざる新たなビジネスモデル創出への動きに、引き続き注目していきたい。