NHK放送技術研究所(以下、NHK技研)が最先端技術を一般公開する催し「技研公開2018」が、5月24日から27日まで、同社ビル内で行われます。若年層を中心にインターネットによる動画視聴が人気を集め、「テレビ離れ」なんてこともいわれる昨今ですが、技研と(民放など)関係各社では「テレビとスマホをつなぐ新たな取り組み」を進めているようです。

  • NHK放送技術研究所「技研公開2018」

    NHK放送技術研究所(東京都世田谷区砧1-10-11)で行われる「技研公開2018」

テレビをネットにつなぐ試みなら、これまでも様々な形で行われてきました。いまでは当たり前の機能です。そのひとつが「ハイブリッドキャスト」で、すでに対応テレビが多数そろい、リモコンのdボタンを押してサービスを利用している人も多いことでしょう。

しかし、テレビ受信機の仕様がメーカーごとに異なるなどの諸問題から、いまだ業界として柔軟なサービスが提供できていないのが現状です。そこで新たに標準化が検討されているのが、ハイブリッドキャスト対応テレビとスマホなどを連携させる「ハイコネ・ライブラリ」と呼ばれるソフトウェアです。ハイコネは「Hybridcast Connect」の略称で、端末連携機能を組み込んだ共通アプリケーションとなっています。NHK技研がIPTVフォーラムで提案した技術をもとに開発されました。

テレビ朝日、フジテレビ・仙台放送の試み

実際には、どんなサービスが実現するのでしょう。たとえば、テレビを見ていなくてもスマホに送られた通知をタップするだけで、テレビの電源がオンになり番組を視聴することができます。見逃した番組も、ネット連携で補完できます。これはもっともスタンダードな使い方。各企業は、もっと知恵を絞ったユニークなサービスを考えています。ここで4つほど、実例を紹介していきましょう。

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    ハイコネ・ライブラリでは、ハイブリッドキャスト対応テレビとスマホが双方向につながります。「番組を見逃しても、ネットからフォローすることができます」と説明員

新技術の大きなメリットとなるのが、民放各社の提供するコンテンツと直接つながる点です。テレビ朝日のブースでは、テレビ、スマホ、スマートスピーカーを連携。

タレントの高田純次さんが街を散歩する番組『じゅん散歩』の視聴中に、「この場所をクリップして」や「このお店を予約して」と、スマートスピーカーに話しかけます。すると、番組で紹介された飲食店の場所がスマホにクリップされ、またランチの予約までできてしまうデモが紹介されていました。同様に「この商品が欲しい」というだけで注文ができるため、通販番組などとも相性が良いことが予想されます。

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    テレビ朝日のブース。テレビを見ながら、スマートスピーカーに話しかけるだけで視聴中の番組の情報を取得するという、テレビとの新しい連携方法を紹介していました

フジテレビ・仙台放送では、音声入力でクイズ番組に参加できる試みを紹介。自分が回答した「答え」が画面の外枠に表示され、正解・不正解もしっかり表示される仕組みです。これまで筆者は、テレビの前で独り言のように回答を叫ぶことでクイズ番組に参加している気になっていましたが、このサービスが実用化されれば、テレビ番組がもっともっと楽しくなりそうです。

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    フジテレビ・仙台放送では、音声入力でクイズ番組に参加できる試みを紹介