回数をこなすごとに、不明点があれば質問票を作って再度ヒアリングするなどすることで、業務担当とRPAエンジニア両方の負担が軽減した。また、ロボット化の可否を判断できるようにもなった。副産物として小山善直氏が挙げたのが、「あとで作らなければならない仕様書が同時にできる」点だ。

ロボット開発は、RPAセンタが行うほか、自部門で行う形態もある。

RPAを先行導入した人事総務部では、RPA化の対象として65の業務を抽出した。賞与査定のデータ作成、健康管理・長時間残業のデータ作成、出金伝票システムへの転記などだ。当初、ロボットの開発はRPAセンタに依頼していたが、業務上、個人情報を取り扱うため、自分たちで行うようになった。ロボットの作り方は勉強会で学ぶ。小山真一氏自身も約40のロボットを作成したが、ロボット開発については、思ったほど困らなかったという声が上がっているそうだ。「業務を知っている人がロボットを作るのが最善の方法」と小山氏は語る。

月434.7時間の削減 - 最大の効果はモチベーションのアップ

では、RPAの導入効果はどんなものだろうか?

査定調書作成は、これまで担当者が約2週間かけて作成していたが、RPAを導入したことで、担当者はチェックのみで約4日間で作業が終わるようになった。この結果、毎年この時期に残業していた担当者の作業時間を30時間が削減できたという。

一方で、学びもあった。社内ルールでパスワードが定期的に更新されるシステムがあったり、同じようなロボットを作ってしまったり、開発を依頼していた担当者が途中で退職になったりしたことで、運用や開発においてルールを作る必要があることがわかった。

しかしながら、前述したように効果はすぐに出ている。全社展開を始めた初年で、適用業務の数は人事総務本部の26を含む45件。月間434.7時間の削減に相当するという。

作業が効率化されたことで、労働時間の時短に加え、別な効果も出ているようだ。担当者は 毎月月初に必ず出社して、データの集計作業をしなければいけなかったが、RPAで業務を自動化することで、年休が取得できるなど、精神的にゆとりを持って、より柔軟に勤務できるようになった。「働き方が少しずつ変わっているようだ」と小山真一氏は語る。

加えて、「モチベーションの向上」も見られている。「誰しも自分じゃなくてもできる仕事をやっている時は、モチベーションが下がる。RPAを導入することで、そうした無駄なことをやらなくてもよくなり、自分がやるべき仕事に集中できる」(小山善直氏)

社内のノウハウの共有は専用ポータルサイトで

日立ソリューションズのRPA導入は、ロボット開発にとどまらない。社内に もっとRPAの良さを周知するため、「RPAスクエア」としてRPAに関連した情報を集めたポータルサイトを作成している。

RPAとは何かの説明に始まり、FAQ、ロボット開発の依頼、仕様書のテンプレートなどがある中、ロボットの一覧、部品ロボットの検索など共有の機能も備える。RPAはロボットを作れば作るほどメリットを得られるだけに、同社では、全社に浸透させる仕組みとしてこのようなポータルは重要と見ている。実際、同社がAutomation Anywhereを提供した顧客からこのようなポータルが欲しいという声も多く聞かれており、事業化も検討しているという。

同社は現在、システム開発におけるAIの取り組みである人間関係の分析において、半年分のメールデータを追跡している。データの抽出だけで半年がかかる作業だが、RPAは24時間働いてくれるので2~3週間でデータの抽出ができたという。「これまで、時間の制約などから諦めていたことが、RPAによってできるようになった」と小山善直氏はいう。

小山真一氏も、人事でもAI分析においてRPAの力を借りてやってみたいことがあるという。人間を補いながら、業務の効率を上げ、コストを下げてくれるRPAのユースケースは、今後、さらに増えていきそうだ。