オープンテキスト ソリューション部シニアソリューションコンサルタントの小口貴史氏

消費者の情報入手先が増える中、カスタマーエクスピリエンスを向上する上で、デジタルアセット管理(Digital Asset Management:DAM)の重要性が高まっている。DAMを導入することで、どのような効果を得ることができるのだろうか。

オープンテキスト ソリューション部シニアソリューションコンサルタントの小口貴史氏は、消費者のオムニチャネル化が進んで、タッチポイント、情報の見せ方と見せる頻度が増えることで、消費者はタイムリーに必要な情報を探すことができなくなっていると指摘する。

また、情報を構成するアセットを提供する企業においても「アセットの使用権違反」「アセットを収集する時間の浪費」「アセットの紛失、検索の難易度」「ブランドの損失」「再利用しないことによる時間とコストの無駄が発生」「共通のメタデータとタクソノミの欠如」といった課題が生じているという。

これらの課題のうち、「共通のメタデータとタクソノミの欠如」が特に重要であるとして、小口氏はその理由を次のように説明した。

「アセットを部門で管理していると、そのフローもカテゴリーもバラバラになってしまう。全社でメタデータをそろえることで、データの重複をなくし、必要なデータを必要な人が使うことが可能になる。これを実現するのが、デジタルアセット管理だ」

デジタルアセットを運用する現場が抱える課題

小口氏によると、「デジタルアセットを運用している現場では、コスト削減、労働環境改善、本来の業務の充実、部門間コミュニケーションの改善といった課題を抱えている」という。

「アセットに使われるメディアがすべて紙からWebに移行しておらず、紙とWebの重複構造になった現場では、重複した個別作業が存在する上、紙とWebを同期させるための追加作業が発生している。アセットの運用には、商品情報、企画、Web運用といったさまざまな部門や担当者が介在している。その結果、『とりあえず解決』といった場当たり的な対応がそのまま恒久化して、劣悪な労働環境を生んでしまう」

小口氏は、こうした課題は、デジタルアセット管理システムを導入することで解決できると話す。デジタルアセット管理システムでは、「コンテンツをデジタル化し、履歴管理ができるリポジトリに格納」「レビュープロセスのシステム化と業務に密着したUIの改善」「レビュープロセスの進捗状況をモニタリング」「変更管理のシステム化」といったことが行える。

デジタルメディアのサプライチェーンを自動化するDAM製品

小口氏は、これからのデジタルアセット管理においては、デジタルメディアのサプライチェーンを自動化することが求められており、それを実現する製品として、同社の「OpenText Media Management」を紹介した。

  • 「OpenText Media Management」の画面

同製品は、デジタルアセットの収集、オーガナイズ、検索、活用、配信のための機能を提供する。検索については、キーワード検索が可能であり、絞り込みキーワードも表示される。

バージョン管理においては、複数のバージョンを並べて比較でき、その際に重ねて差分を色で表示することも可能。

レビューでは、チームによる校正管理、アノテーション(付箋)、進捗管理などが行える。ドキュメントに加えてビデオにも対応しているが、ビデオに対応している製品は少ないという。

小口氏は、そのほかの同製品の強みとして、「標準機能で大部分の要件を満たす」「大容量コンテンツの転送」「柔軟な権限管理」などを挙げた。

国内卸売商社と20th Century Foxの導入事例

小口氏は、同社のDAM製品の導入事例として、国内卸売商社と20th Century Foxの2件を紹介した。

国内卸売商社では、Product Content Management(PIM)製品である「SAP Hybris」と連動することで、ECサイトの効率化を実現した。PIM製品との連動は多いケースだという。

この商社では、「製品画像やカタログが社内散在しており、最新のデータがわからず、欲しいデータを検索できない」「製品点数が多く、カタログ製作に時間がかかっている」「ECサイトや販売店への情報提供に時間がかかっている」という課題を抱えていた。

そこで、「OpenText DAM for SAP」と「SAP Hybris」を連動させることで、データをまとめて管理して、SAP Hybrisから取得したメタデータを利用して検索可能にした。また、カタログ組版の半自動生成とバージョン管理なども実現した。その結果、社内だけでなく、仕入れ先や取引先も検索が可能になったほか、カタログ製作の効率が上がり、輸送コストが下がったという。

  • 国内卸売商社の導入事例

一方、20th Century Foxでは、DAMによって、メディアポータルの改善を図った。同社は、「映画フィルムとマーケティング資産を集中管理したい」「著作権を管理しつつ、フィルムやデジタル化された映像をグローバルかつ円滑に配信したい」という課題を抱えていた。

オープンテキストの製品で、データをグローバルでバージョン管理も含めて、一元管理を行うようにしたことで、複数の国で一斉に宣伝を開始できるようになり、生産性の向上とコストの抑制を実現したという。

20th Century Foxでは、メディアポータルを使ってもらうため、キャラクターを採用したプロモーションビデオを作成している。

  • 20th Century Foxの導入事例

小口氏によると、DAMを導入するのは製造業が特に多いという。その理由については「製造業は製品数が多く、カタログに利用する画像も多いので、管理が煩雑。マーケティングに使っている画像をスピーディーに見つけることが求められている」と話す。