日々、時計精度への挑戦を続けるシチズン。創業100周年という節目にあたり、長きにわたって蓄積された技術の集大成として、現時点での究極精度「年差±1.0秒」を誇る究極のクォーツムーブメントを開発。そのプロトタイプを公開しました。

  • BASELWORLD 2018 - シチズン

    Cal.0100搭載コンセプトモデル

プロトタイプのモチーフは、シチズンが1924年に初めて「CITIZEN」の名を冠して発売した懐中時計。クォーツムーブメントのキーテクノロジーである「水晶」をテーマにすえます。「Crystalized」というキーワードのもと、ケースと風防を一体化したサファイアガラス製のケースで水晶の結晶化と透明を表し、インデックスや秒針のテールにも水晶を象(かたど)った6角形のパーツを使用しています。なお、ケース外径は33.3mm、厚さは2.92mmです。

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    水晶をイメージした意匠。マーカーの細さも、一秒を大切にする繊細さを思わせる

クォーツムーブメントの水晶振動子は、温度や重力などの外的要因によって誤差が生じます。この誤差を最小限に抑えるため、シチズンは、一般の時計に用いられる「音叉型水晶振動子」ではなく、温度安定性と姿勢差による影響が少ない「ATカット型水晶振動子」を採用しました。

この振動子は通常、PCなど大型精密機器で使用されており、周波数は音叉型(32.768Hz)の100倍以上。これは、消費電力の高さにつながってしまいます。

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    クォーツでありながらシースルーバック。ブース担当者いわく「見せることを意識して、美しく仕上げた」とのこと。この仕様は実売モデルでも継承されるでしょうか

そこでシチズンは、素材の選定から設計、試験、調整を繰り返し、エコ・ドライブで駆動する8.4MzのATカット型水晶振動子を独自開発しました。加えて、ムーブメント各所も徹底的な省電力化を図っています。

結果、標準電波やGPS電波、スマートフォンリンクなどに一切頼ることなく、独立した機構だけで極めて正確な時間を刻み続けるクォーツムーブメント「Cal.0100」が誕生したのです。これは、マニュファクチュール(ムーブメントを自社開発できるメーカー)であるシチズンだからこそ、実現できたプロジェクトといえるでしょう。

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    エコ・ドライブで駆動する、8.4Mzの「ATカット型水晶振動子」

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    ブースに展示されていた、リアルタイムで時計の誤差を計測する機器。こういったものは世に存在しなかったので、シチズン社内で自作したという。写真では、+0.0004秒と表示されています

シチズンは、このムーブメントを搭載した時計を2019年内に発売すると宣言しました。それがどのような形で私たちの目の前に現れるか、まだ誰にもわかりません。が、「時計の精度確保は外部からの補正要素を利用するのが最善」とも思わせる、ここ数年の時計業界の潮流に一石を投じるシチズンの矜持と挑戦。それは、必ずや時計の新しい可能性を切り拓いてくれるはずです。